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90.閑話 女神の愚痴

 女神が住まう天界にあるとある酒場で女神アレアミアはあれていた。


「まったく…なんで私が人間の偽装に巻き込まれなきゃいけないのよ…」


「あはははは、あなたも災難ね。まあ女神の前での契約だから偽装でも何でもないわよ。」


 アレアミアの隣で酒の入った杯をあおるのは金髪に桃色の瞳をした女神だ。


「何よアフテディ。そもそもその要因にわずかにあなたもかかわっているんだから責任取ってよね。」


 アレアミアも杯をあおりテーブルにたたきつける。


「え~。私、特に何もしてないよ~。新しい聖女が私を信仰している教会に所属していただけでしょ?」


 それを聞いてアレアミアは手を振り2人の目の前にスクリーンを出す。そしてそこにエルド達がマリーの眼鏡をかけてお互いを見合っているところが映し出された。


「あら。あの眼鏡懐かしい。200年くらい前に魔力が高いもの同士でひかれあう魔道具を作りたいって祈ってきた人族がいたから授けたものだ。」


「ほら~!やっぱりかかわってる!あの眼鏡のせいであの聖女があのエルドを見初めちゃったんだからね!」


 それを聞いてアフテディは笑ってしまう。


「そういうことね~。確かにあの眼鏡は魔力の相性が良かったら見た人族を引き付けるように見せることが出来るからね~。まあ、愛の女神がなせる技よ。」


 それを聞いて自分の杯に酒を注ぎ一気に呷るアレアミア。


「だからってこんな事ってある!?片や長年思い続けて側にいてやっと婚約しました。片や他の男の元に行きたくないから偽装婚約して引くに引けないからそのままで行きます。あの男はクズ過ぎる!!」


「なんだ。何に怒ってるのかよくわからなかったけどこのエルドって人族に対して怒ってたのね。」


「そうよ!それに私を呼び出すとき『居眠り女神アレアミア』って何十回も連呼してたんだからね!」


「あはははははは。居眠り女神。あなたにはいい呼び名じゃない。」


 アフテディは腹を抱えて笑いだす。


「よくないわよ。確かに初めて会った時は寝てたけどあとは普通に起きてるからね!なのになんで居眠り女神なんて呼ばれないといけないのよ!!」


 アレアミアは自分で言っていて苛立ち何杯も酒をあおるが怒りは収まらない。


「も~、あなたが1人の人族に興味持つなんて初めてじゃない?そんなに気になるの?」


 アフテディの言葉にアレアミアは固まる。


「べ、別に…ただエルドの母親が守護の女神として初めての契約者だし、そのせいでちょっと気合入れすぎて彼が他の女神に祈りが届きにくい状況になっちゃったから…」


 アフテディはクスクス笑っている。


「女神と人族の恋愛なんて何百年ぶりかな?」


「違うから!そんなんじゃないから!!」


「あら、気にしてないなら婚約の事でクズだとか言わないじゃない。気になってるから怒ってるんでしょ?」


 アレアミアは黙り込んでしまう。


「あの人族のところに行くと女神をやめないといけないからやらないでしょうね。それにもう2人も相手がいるんだからこれ以上は肉体的な負担が大きいでしょうね。」


「ンン…」


「まあ、これからもおとなしく女神らしく見守っていくのがいいんじゃない。これから産まれるかもしれない子供にこっそり女神の加護を与えるとか。ああ、その前にあの3人に子供が出来やすくする契約をするのもいいかもね。あの魔力差じゃ難しいでしょうから。」


「それやるとエルドと同じで女神を毛嫌いすることになりそう…」


 アレアミアはテーブルに突っ伏してしまう。


「あらあら。冗談なのに。」


 アフテディの言葉はアレアミアの耳には届かなかった。



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