74.帰還そして驚愕
一行はイバート山脈を下山しふもとの村へ向かう。一晩宿に泊まり、エルド、マリー、モイラとオルファ、ヤロルクと残りの修道士で別れた。ヤロルクたちは中央都の大教会へ向かうらしい。エルド達は支部ギルドへ報告に向かう予定だが、一度領主に会いに行き頼みごとをする。
そして支部ギルドに戻り依頼完了の報告をして家に戻った。家の前ではトーライトが雪かきをしている。
「おや、ぼっちゃま。お久しぶりですね。誰もいなかったので勝手に雪かきさせてもらいましたよ。」
「ありがとうトーライト。一人で大変だったでしょう。」
エルドはトーライトの側に駆け寄った。マリーはモイラにトーライトの事を説明している。
「いえいえ。手伝ってくれる方がいたので。」
エルドの言葉にトーライトは後ろを指しながら言う。エルドがそちらを見るとそりを引いているジェイロットが見えた。
「トーライト〜…雪捨て場に置いてきたよ。はぁ…雪の上って結構歩きにくいんだね…」
額に浮いた汗をぬぐいながらジェイロットが言う。そしてエルドがいるのに気が付いた。
「エルド兄さま!おかえりなさい!!」
ジェイロットはエルドに駆け寄り満面の笑みを見せる。
「ジェイロット。どうした?何かあったのか?それにミレニアは?」
エルドがジェイロットを抱きかかえて言う。
「随分と冷えてるな。そんなに長い時間外にいたのか?」
「やめてください。エルド兄さま。さっき雪を置いたときに転んで雪に突っ込んだだけですから。エルド兄さまに教えてもらった熱魔法で少しの寒さなら…」
そう言いながらジェイロットはくしゃみをする。
「あらあら。熱魔法を使っても体は冷えてしまうから気を付けてくださいね。」
モイラが近づき回復魔法をかけてくる。ジェイロットの冷えた身体が少し暖かくなる。
「えっと…あなたは…」
エルドに抱きかかえられたままジェイロットがモイラを見て聞く。トーライトも後ろから興味ありげに見ていた。
「はじめまして。エルドの第二夫人になりますモイラと申します。先日聖女の二つ名を襲名させていただきました。」
モイラは2人に丁寧にお辞儀をする。
「え?」
「は?」
ジェイロットもトーライトも目を見開きモイラを見てマリー、エルドを見る。
「あ~、詳細は中で話すよ。明かりがついてるけどミレニアは中か?ジェイロットは風呂に入った方がいいな。」
エルドはジェイロットを抱いたまま玄関に進む。
「エルド兄さま、ミレニア姉さまは来てません。中にいるのは…」
エルドは扉を開け、いい匂いに誘われて台所を目指して進む。そしてそこで料理をしていたのは義妹サンドレアの夫、ルーファスだった。
「あ、義兄さん!おかえりなさいませ!!」
エルドが入って来たのを見てルーファスは土下座せんばかりに頭を下げて出迎えた。
「は?ルーファス?なんでここに??」
意外過ぎる人物にエルドは困惑する。
「エルド兄さま、こっちもいろいろありまして…」
ジェイロットはエルドに降ろしてもらいながら苦笑しつつ言う。そしてくしゃみを出す。
「まあとりあえず、風呂に入っておいで。話はそれからにしよう。」
エルドはジェイロットの頭を撫でながら言う。
あとから入って来たマリーもルーファスがそこにいて驚いていた。
トーライトはモイラとルーファスを見てため息をついている。




