7.魔剣 炎
マクラインの両手から一つの火球が放たれた。火球はエルド目掛けて飛んでいく。
エルドはその火球をテンペラで斬り落とす。斬られた火球はカコンという音と共に地面に落ちた。
「ま、まさか…ファイアーボールを…炎を凍らせた…」
エルドの足元に落ちた火球は二つに斬られ、凍っている。
エルドは二つになったうちの一つを軽く蹴り上げ、テンペラで斬る。
すると斬られた半分の火球の氷が無くなり、また炎となってマクラインに飛んでいく。
マクラインは飛んできた火球をよけるが、よけた先にもう一つ火球が飛んできてマクラインの腹部に激突する。
「が…」
ファイアーボールは炎による炎焼効果より、高速で当たることの物理ダメージに重きを置いている魔法だ。そのためマクラインは当たった腹部に黒く焦げ目はつくけど、炎により衣服や装備が燃え上ることはなかった。
もちろん、火球自体を抱きかかえたりすればその限りではないが、ボール形態の魔法は属性効果はついででしかない。
「半分に切ったから威力も半分だろうけど、自分の魔法を喰らった感想はどうかな?」
エルドは不敵に笑いながら言う。
「ちくしょうが~!!」
エルドの挑発にマクラインは地面に手をつき魔法の詠唱を始める。
今度は先ほどのファイアーボールと比にならないほど長い詠唱だ。
(最上級…いや、あいつの魔力量から考えてせいぜい上級かな。さすがにちょっと遊びすぎたか。)
エルドは放たれる魔法にそなえ、構える。
「喰らいやがれ!『フラウクライシス』!!」
マクラインが魔法を発動させると上空から大きなつららが出現し、エルドに向かって飛んでくる。
「なるほど、凍らされると思って氷魔法か。」
エルドはつららに向かって飛び上がる。そしてテンペラを振り、つららを斬る。
「バカめ!もともと氷のつららを凍らしても何の意味も…あぁ!?」
マクラインは確かに魔剣テンペラの能力を聞いたことがあった。だが頭に血が上った状態で聞いていた能力の半分しか思い出せていなかった。
魔法のつららはエルドに斬られ、蒸気を上げて融けていた。エルドが地面に着地するころにはつららは跡形もなく消えている。
エルドの持つテンペラの刀身に炎がともり、燃え上っている。それはとても綺麗な青い炎であった。
「氷と炎を扱う。ゆえに『氷炎』。まあ、この剣の本質をとらえてはいないけど、個人に贈られる二つ名としては気に入ってるから文句は言わないよ。」
エルドはマクラインに近づきテンペラを振り下ろす。
マクラインは斬られたと目をつぶるが、体にダメージはない。ただ少し肌寒さを感じるだけだ。
「な、なんだ…こけおどしかよ!」
そう言ってエルドに殴りかかろうとするがエルドがふいに笑う。
「まだやるのはいいけど、そんな恰好でやるの?」
そう言われてマクラインは自分の体を見る。装備はおろか服が無くなっている。下着すらない。
「な!お前!!」
さらにエルドはテンペラで氷を作り、鏡にしてマクラインに向ける。
そこに映った顔にはふさふさとしていたはずの髪の毛が無くなっていた。数日剃っていなかった無精ひげもない。
「なぁ!!」
「とりあえず手加減したけど、まだやるなら今度は肉体を斬り落とすよ?」
そう言われてマクラインは膝をつき、負けを認めるしかなかった。