57.王家との対談
会場内にダンスの時間を告げるアナウンスが流れた。
「ダンスだって。どうするの?」
会場の隅で料理に舌鼓を打っていたエルドを見ながらマリーが聞く。
「僕は別に興味ない。マリーが踊りたいっていうなら付き合うよ。」
「いや私も踊りたいってわけじゃない。踊ったのも学院が最後だし。」
「じゃあここで見てればいいんじゃない。本当はもう帰りたいけどアルが最後まで残ってろって言うし。」
エルドは空になった皿をテーブルに置く。
「ほんと旨いなこの料理。」
「そう?じゃあ味を覚えて帰ったら再現してあげるよ。」
マリーはエルドが置いたさらに残ったソースを小指ですくいなめとる。
「ふん…南の方の食材が使われてそう。何か代用できるものあるかな。」
「家事全般において君は何でもできるよね。レシピもなく味の再現なんて正直怖いくらいなんだけど…」
「おばあちゃんにいろいろ仕込まれたからね。」
マリーは微笑みながら言う。祖母の話をするときのマリーは本当にうれしそうに話す。
「エルド殿はダンスはされないのかな?」
突然声をかけられエルドは振り向く。そして驚愕し急いで頭を下げた。マリーもその様子を見て誰に頭を下げたのかと見て同じように驚愕して頭を下げる。
「ほ、本日は招待いただきありがとうございます。バルザ陛下。」
エルドに声をかけたのはリュトデリーン王国現国王、バルザ・リュトバルクであった。後ろに第一王子イニシア、第三王子ライオス、第四王子フォニアスが付いていた。
「頭を上げなさい。別にここはそういう場ではないのだから。気負うことは無い。」
バルザの言葉にエルドとマリーは頭を上げる。
「ははは。久しぶりだねエルド殿。いろいろと大変だったようだが落ち着いたかな?」
「え、ええ。いろいろ助力していただいてありがとうございます。こちらの要望も受け入れてもらえて助かりました。」
エルドは笑顔で答える。アルを通じてバルザに調査をお願いしていた。ちょうどサンドレアの記憶が消えていた期間で調査を終えることが出来たのは幸いだった。その調査結果はサンドレアとの面談で使われたようだが、サンドレアとどんな話をしたのかはエルドは知らない。
「なになに。時代は移り変わる。人も移り変わる。五大家をすべて解体するいい機会かもしれない。」
それを聞いてもエルドの表情は変わらない。
「さて、本日は君達に打診したくて声をかけた。フォニアス、説明を。」
「はい陛下。」
第四皇子フォニアスが前に出る。作ったような笑顔を浮かべている。
「前に一度お会いしましたね。私はフォニアス。本部ギルドのギルド長を任されています。」
フォニアスが丁寧にお辞儀をする。
「エルド、そしてマリー。あなた方を冒険者Sランクに認定をさせていただきたい。」
マリーは驚くがエルドは表情を変えない。
「お断りさせていただきます。Sランクになると必然的に本部ギルドの所属だ。いろいろと面倒になるので僕らはCのままで…」
「その件に関しても問題ありません。実はあまり知られていないのですがSランクは本部ギルドではなく国の所属になります。本部でも支部でもどちらでも依頼を受けることが出来ます。ですので現在拠点としているライナス領でこれまで通り冒険者として働いていけると思います。」
エルドの眉が動く。
「へぇ。それは知らなかった。アルは…いえ、アルデリック殿下からはそんな話聞いたことなかったので。」
「そう言えば弟のアルデリックとは同級生でしたね。彼が知らないのも無理有りません。この制度はここ数年で追加された新しい制度ですから。アルデリックは北の前線にこもりっぱなしの上、母親の違う私たちとあまり会話をしたがりませんので。」
それを聞いてエルドは少し考える。
「だとしても、魅力を感じませんね。別に拠点が同じならCランクのままでも問題ない。むしろSランクになったことで有事の際に強制的に徴収されるデメリットが大きすぎます。」
「Sランクになってもらえる支援金も魅力がないと。なるほどなるほど。さすがは五大家筆頭ファニアール家元領主。金くらいでは首を縦には振りませんか…」
フォニアスが面白そうに顎に手を当て考える。
「マリー、あなたの考えはどうです?エルドがSランクにならなくても、あなただけでもなりませんか?」
少し後ろで話を聞いているマリーに声をかけてきた。
「い、いえ。私はエルドと一緒で大丈夫です。」
それを聞いてなぜかイニシアが鼻で笑った。
「兄上?どうなさいました?」
フォニアスが笑顔を消し、訝しげにイニシアを見る。




