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51.エルドの部屋で

「さあ。今日はもう遅いしそろそろ休もうか。」


 アルが帰ったのち、ランドレットの処分も中央都にお願いしようという事になり一時的に町の留置場に送ると深夜にかかろうとしていた。屋敷に戻ればサンドレア、ミレニア、ジェイロットはとっくに自室に戻り眠っているらしく、待っていたマリーも椅子に座り腕を組みながら眠っていた。


「はは、珍しい。さすがに魔力を放出して疲れたのかもね。アルが来てからうつらうつらしてて会話に加わらなかったし。」


 エルドはマリーを起こさないように抱きかかえる。


「おや、意外と上手に抱けるんですね。」


「言い方。なんだよ上手に抱けるって。」


 エルドが慌てたように言うがトーライトはいたって冷静に、


「他意はありませんよ。眠っている大人を抱きかかえるなんてなかなかしないですから。」


 と少しにやけている。


「とりあえずマリーが前に使っていた部屋に…」


「すいませんエルド様。その部屋は現在別の者が使っております。」


 いつの間にかジャスティパールがそこにいた。


「それじゃあ客間…」


「開いている客間が一つしかなくて、そこにはトーライト様が…」


「それじゃあ空いてる部屋は無いの?」


「そうなんです。サンドレア様の指示もあり、使用人が半分もいなかったりで使用する部屋を制限してたらこんな有様に…」


 何があって使用人が辞め続けたのか気になるが、とりあえず空いている部屋がないのは問題だ。


「それならぼっちゃまの部屋でいいじゃないですか。」


 トーライトが提案する。


「ぼっちゃまの部屋は片づけてないのでしょう?」


「え、ええもちろん。エルド様のお部屋はそのままにしております。掃除もジェイロット様の言いつけで定期的に行っていました。」


 それを聞いてトーライトは満面の笑みをする。


「ほら、何も問題がない。ぼっちゃまのベッドは3人は寝られるほど大きなものですからね。」


 昔両親に送られたベッドだが、なぜかデカいものを好んで送ってくる人たちだったのを思い出す。


「いや、だけど…」


「別に婚約されているのですし何も問題はないじゃないですか。」


 トーライトの表情を崩さないにやけ顔を殴りつけてやりたいとエルドは思う。


「わかったよ。連れてけばいいんでしょ連れてけば。別に僕は部屋のソファで寝ればいいんだから問題ないし。」


 そう言って懐かしの自室へと向かっていった。マリーは相変わらず眠っている。


 部屋に入りマリーをベッドに寝かせる。そしてマリーの顔を覗く。マリーの顔が赤らんでる。


「やっぱり起きてたか。抱き上げてから寝息が変わったと思ってたら。」


 マリーはゆっくり目を開ける。


「だ、だって…抱き上げられてから目を覚ましたらなんか恥ずかしいし…」


 エルドは上着を脱ぎ近くのソファに寝転がる。


「そ、そっちで寝ちゃうの?」


「トーライトの思惑通りになるのが嫌だから。」


 エルドは大きなあくびをする。


「エルドだって疲れてるんだからベッドの方が…」


「一日くらいなら別に。明日には部屋を用意してもらうから。」


「わ、私と一緒に寝るのは…イヤ…?」


 エルドは体を起こしマリーを見る。マリーも体を起こしていた。


「別にそんなことは無いよ。ただ…」


「ミレニアやジェイロットが来てから二人っきりになることもなかったし…こういう時くらい…」


 マリーは俯きながら言う。エルドはマリーの隣に座る。


「いつも魔力を放出するとこうなるよね。普段からこれくらい素直だとかわいいのに。」


 マリーの頭をなでる。


「だ、だって…」


「ごめん…トーライトのにやけ面見てやけになってた。今日は隣で寝てもいいかな。」


「うん。」


 マリーは頷く。


「でも…寝るだけだよ。今日はさすがに…疲れた…」


 そう言うとマリーは倒れこむ。エルドは彼女を支え。ベッドに横にならせる。そして自身も横になり泥のように眠った。



 次の日、エルドが目を覚ますとマリーはもう起きていたがソファーに座り膝を抱えていた。


「おはよ…どうした?」


「おはよう…私いつもこんなだなって思って…」


 エルドは言いたいことがわからず首を傾げる。


「普段から素直に言えればいいのに、酒に酔ったり、魔力を放出したときくらいしか積極的にできなくて…」


「いや、普段も割と積極的な方だと思うよ。毎夜求める人が何を言ってるの。」


 エルドが苦笑しながら言う。


「そ、そういうんじゃなくて…」


 マリーは赤面する。


「ただ側にいたいって、ただ隣にいられるだけでもいいのに、どうやっていえばいいかわからないからいつも性欲にまかせて…」


 エルドはマリーの隣に座り頭に手を置く。


「そっか。それじゃあこうやって隣にいればいいかな。」


「…うん。」


 エルドはマリーを胸に抱きよせた。次第にマリーの呼吸が荒くなっていく。


「マリー?大丈夫…」


 マリーはエルドをソファーに押し倒し馬乗りになる。


「ごめんエルド。やっぱり我慢できない。だから…」


「まてまて、さすがにこの時間は駄目。日中は忙しいんだから夜にして!」


「大丈夫。一回だけ、一回だけで我慢するから!」


「そんなこと言って我慢できたためしないだろ。いつもこうなんだから今はこれだけで我慢して。」


 そう言ってエルドは体を起こしマリーの唇に自分のを重ね、深いキスを交わした。

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