48.断罪の女神
「結構派手にやったね。」
マリーがランドレットを連れて2階に上がってくるなり口にする。
「6割女神だけどね。」
「4割あんたじゃない。それより女神は殺せたの?」
マリーは倒れているルナテルを見て言う。
「どうだろ。手ごたえはあったけど。」
エルドはその辺に落ちていた燭台で女神をつつく。
「本当にそうやって不用意につつくのやめてよね。何が起こるかわかったものじゃない。」
マリーが呆れて言う。何度かつついて反応がないため絶命しているとエルドは判断し燭台を捨てる。
「ランドレットは…まだ気絶してるか。まあ、女神の呪いが無くなればこの人も何もできなくなるだろうから目が覚めたら一発殴って終わりにすればいいか。」
「これだけの事をされて一発で済ませるあなたは寛大すぎでは?」
「そうかな?呪いが無くなったならもうどうでもいいかな。」
そう二人が会話をしているとルナテルは音を立てずに体を起こした。エルドの斬撃では気を失わせることしかできていなかった。エルドにつつかれ目を覚まし、油断するタイミングを見計らっていたようだ。
「女神が人間に殺せるものか!!死ねーーー!!」
ルナテルは大鎌を振り、エルドの首を狙った。エルドの首に刃がかかる直前、空から盾が降ってきて大鎌の柄に当たり軌道をそらせた。
盾が落ちた音を聞いてエルドとマリーは振り返る。
「え?何…」
「ほら、やっぱり不用意につつくからこんなことになる。」
エルドとマリーはルナテルから距離を開ける。ルナテルは落ちてきた盾を見て怯え始めた。
「こ、この盾は…戦の女神の…」
エルド達が盾を見るとその盾に天から光が降り注ぎ始めた。そしてそこに降り立つ鎧を着た女性が一人。
「ルナテル久しぶり。あなたが守護の女神をやめるって相談されて以来だね。」
エルド達からは背中しか見えないが、その声には聞き覚えがあった。
「お、お前…戦の女神アレアミア!!」
「あ、アレアミアってこの前の?確か守護の女神じゃなかった?」
マリーが聞く。
「そうそう。前役職は守護の女神。その前は戦の女神。そして今は…断罪の女神アレアミア。守護の女神のお勤めでおいたをしちゃったからね。しばらく反省もかねて役職変更になっちゃった。」
「女神って役職制なんだ。」
エルドが苦笑を浮かべながら言う。
「ルナテル。女神の法に基づきあなたを断罪します。」
アレアミアは落ちている盾を拾いルナテルに向ける。
「あなたは今回人間に手をかけるだけでなく、これまで多くの人に呪いをふりまきました。その上あなたを捕えに来た他の女神も手にかけ自身の力とした。以上の事から弁明の余地なくあなたの存在を無に帰します。最後に言い残すことはありますか?」
アレアミアの持つ盾が光り始める。
「ふざけないで!!なんで人間を守らないといけないの!?あいつらは自分勝手!魔族ともまともに戦えない!感謝も出来ない!!弱いくせに歯向かう!そんな生物この地上に必要ない!!殺す!殺す!殺す殺す殺す!!」
ルナテルが叫ぶ。
「他の女神もそう!邪魔しないで!親友だったあなたも邪魔しないで!!殺す殺す殺す殺す!!!」
ルナテルはアレアミアに襲い掛かる。
「ルナテル。信じられないかもしれないけどあなたの力になれなかったことずっと後悔してた。だからあなたが抜けた後に守護の女神になったの。」
アレアミアは悲しそうな表情をする。
「だからごめんね。こうやってあなたを消すことしかできない。」
アレアミアの盾が強く光り輝き、周囲を囲む。強い光に目をつぶったエルドとマリー。次に目を開けた時、ルナテルの姿はどこにもなくなっていた。
「あ、あの女神は…」
エルドは周囲を見回しながら言う。
「女神ルナテルは消えました。これで彼女がかけた呪いもきれいになくなります。」
「黒い靄もなくなってる。」
マリーが街を見ながら言う。
「黒い靄は呪いのしるし。魔力の高いものや呪いをかけられたものに近しい人には見えていたみたいね。」
アレアミアは盾を置きながら言う。
「女神アレアミア、ありがとう。結局助けてもらったみたいで。」
エルドが礼を言うとアレアミアは振り返り首を振る。その顔には涙の跡がついていた。
「ううん。これが女神の仕事。それに私もあなたにいくつも言っていないこともあるから。ごめんなさい。」
「言ってないことって…」
マリーが口を開いたとき、ミレニアとジェイロットがやってくるのが見えた。二人は誰かの手を引いているのが見える。




