46.マリーの本気
マリーはランドレットを追いかけている。結構年を取っているはずなのにマリーが追い付けないほどランドレットは早かった。それでも肩で息をしているのがわかるため、何かを狙っているのではないかとマリーも必要以上に近づけないでいた。
「こ、この辺なら大丈夫か…ぜぇぜぇ…」
突然ランドレットが立ち止まる。
「こ、この…ぜぇ…小娘が…俺を追いかけたことを後悔するがいい…」
ランドレットは息も絶え絶え言う。
「後悔って…」
マリーは周囲の空気の変化を感じた。自分たちの周りに魔物が集結している。
「こんなところに魔物?しかもこの数は…」
「あはは!ルナテル様の加護で魔物寄せを与えてもらった!俺が攻撃されることは無いがお前はどうかな!?」
マリーが見渡すと何十もの魔物が自分たちを取り囲んでいた。
「ふ~ん。これは手間取りそう。」
「何が手間取りそうだ!魔物どもにズタズタに引き裂かれてしまえ!!」
そう言ってランドレットは魔物たちの間を走り抜ける。魔物はランドレットの事を見向きもせずマリーに向かっていった。マリーは口角を上げ、亜空間より魔剣メテオを取り出す。
「このあたりじゃ住民もいないし全力出せそうね。」
そう言ってメテオを振り下ろし、その衝撃で魔物が吹き飛んでいく。小さい魔物はその衝撃だけで絶命したが、多くの魔物は再び立ち上がりマリーに向かっていく。
マリーは向かってきた魔物に対しメテオを振り下ろし、拳を打ち付け、蹴り上げ、高笑いをしながら滅していく。普段は周りに被害を及ば差ないように発する魔力にかなりの制限をかけているが、あたりを気にすることなく魔力を解放し、赤目を輝かせ、赤髪を振り乱し、大槌を振り回すさまはまさに鬼人と彼女に二つ名を送った人物は語った。ゆえに赫鎚鬼と。
「なぁ!?」
ランドレットは目を見開き目の前の惨劇に腰を抜かす。。瞳にも髪にも色が出ているためかなりの魔力持ちなのは見てわかる。しかしなぜあの女はあんなに楽しそうに戦っているのかわからない。いくら何でも規格外すぎる。
「あら。最後の一匹だったのにもう死んじゃった。」
マリーは元は何の魔物かわからなくなった肉塊を投げ捨てる。
「さて、さすがに人殺しはしたくないからおとなしくついてきてもらおうかな?」
マリーは腰を抜かして倒れてしまったランドレットに手を伸ばす。
「た、助けてくれ~!!」
ランドレットは恐怖におののき叫んだ。そしてその叫びに呼応したのか、地中から3階建ての建物ほどもある一つ目の魔物、サイクロプスが現れた。
「サイクロプスって地中で生活してるんだっけ?」
マリーはサイクロプスを見上げながら言う。サイクロプスはマリーに掴みかかろうと腕を伸ばす。マリーはその腕を蹴り上げ距離をとる。
「この巨体なら魔力を完全に吸わせても大丈夫そうね。」
そう言ってメテオを高く掲げる。メテオはマリーから供給される魔力を吸い、炎の形を模したヘッドがどんどん大きくなっていく。
「あ…ああ…」
ランドレットは高まっていく魔力に恐怖を感じ、穴という穴から出るものが出てくる。
サイクロプスは再びマリーに掴みかかろうとする。マリーはメテオで軽くたたきサイクロプスを空中に飛びあげさせる。そして落ちてきたところでもう一度軽くたたき空中に飛ばす。再度落ちてきたところでメテオを大きく振りサイクロプスを空高く吹き飛ばす。飛ばされたサイクロプスは天高く飛び落ちてきた。落ちてくる時体から火を噴き、その炎が地上に着く前に全身を燃え尽きさせた。
「はぁ~。さんざんためてた魔力を全部吐き出したからすっきりした。やっぱり定期的に出さないとダメね。」
もう魔物が現れないのを確認してメテオを亜空間にしまう。そしてランドレットのところに行くと表情をゆがませた。
「うわ…出るもの全部出して気絶してる…これ持って帰るの?」
マリーは汚物にまみれたランドレットを見ながらどうやって連れて帰ろうか苦悩した。




