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43.ランドレットと呪いの女神

 ランドレットは自室で勝利の美酒に酔っていた。


「まさかここまでうまくいくとはな。」


 そしてランドレットの体面に座っている人物は全身をマントで覆っていた。


「くくくく…新しい領主が血縁者じゃないから新しい呪いをかけられたし、その旦那もちょっとお金をちらつかせれば何の疑いもなくついてくるし面白かった~。」


「呪いの女神ルナテル様には本当にお世話になりましたよ。前にかけた呪いの方がかなり強かったようですけど、今回はなぜ死を引き寄せるものじゃなかったのですか?」


 ランドレットがグラスに酒を注ぎなおしながら言う。


「ひひひ、そもそも私は死の呪いなんかかけたことない。あれはあのエルドとかいう男の実の両親が子供に呪いがかからないように自分たちに呪いを引き寄せたに過ぎない。」


 呪いの女神ルナテルは酒をあおりながら言う。


「本当だったら前の前の領主の時に領主を追い出されるように呪いをかけたのに、まずは母親が先が短いのを感じて呪いを引き寄せた。でも一族を呪う呪いはそう簡単に薄まらない。


 だから前の前の領主もあの事故の時、子供に負担を駆けたくないと呪いを引き寄せた。そこまでだったらその時に領主の座はあなたの物になっていただろうけど、後妻まで一緒に呪いを引き寄せたからかなり薄まった。」


 ルナテルはランドレットの手にあった酒瓶を奪い取り直接飲む。


「しかもそのせいで現領主にはかなり弱い呪いしかかけられなかった。女神の呪いも契約の一種。契約を結んだ人間の子孫には何かしらの制限をかけて契約しないといけない。結果的に後妻のやった行為は実の娘を守った。


 人間ってよくわからない。助けられなかったら女神を罵倒する奴もいるのに、ああやって子供のために女神に頼んで自分に呪いを引き寄せる奴もいるんだから。」


「他の女神さまに頼んでも呪いは消し去れないのですか?」


 ランドレットは新たな酒瓶を取り出しながら言う。


「うん、無理。できても呪いを防ぐだけ。でも私の呪いを防ぐにはかなりの力がある女神じゃないとだめ。それこそ魔族と戦っていた戦の女神たちレベルじゃないと。けけけけけ。今の守護の女神にそんな力のあるやつはいないはず。守っても守り切れない。何かしら弱い呪いはかかっていることになる。」


 普段はあまりしゃべらないのに、今日はかなり饒舌だなとランドレットは思った。まあそれでもこの女神のおかげで父親の屈辱を晴らすことが出来たというものだ。酒をあおりながら父親を思い返す。


 ランドレットの先祖はファニアール家の執事であった。リュトデリーン王国建国の後、領地運営の一環で執事から商人に転職し、店を広げたのがリンジャッパ商会の始まりだ。そしてその時にファニアール家と一つの約束をしていた。それは癒着を生まないためにファニアール家とリンジャッパ商会は婚姻を結ばないというものだ。これは契約ではなくただの約束であったが破られることは無かった。もともと王家が五大家と結んでいた契約を参考にしたものでこれを破ることは王家に対する反乱となると考えられてためだ。


 しかしランドレットの父親はその禁を破ろうとした。そのためエルドの祖父の反感を買い、その時一度ファニアール家に縁を切られた。ランドレットの父親の怒りはすさまじかったが、ランドレット自身は自業自得だと思っていた。しかし自分の一族が領主になることもできないかと考えていた。そして出会ったのが呪いの女神ルナテルだった。


 その時ルナテルは地上に降りて来たばかりで、現在と同じマントで全身を覆っていた。マントをとるのを嫌がるためにこれまでルナテルの素顔を見たことは無かった。


 最初は女神だと思わずただの浮浪者だと思い、気まぐれでその時持っていた食料を恵んだ。ルナテルは女神であるため特に食事の必要はないがそれを大層気に入りランドレットに自身が地上に降りた女神であると打ち明けた。そして女神の呪いを使えばほしいものは何でも手に入れることが出来ると彼に話した。


 ランドレットは半信半疑であったがとりあえずその時一番欲しいものとして同年代で一番人気だった少女を求めた。ルナテルは承諾し少女に呪いをかけた。呪いの内容は至極単純。ランドレットの近くに行かなければ激痛を受ける呪い。少女はわけもわからず安らぎを求めランドレットの元に来た。ランドレットの近くになければ死んだほうがましだと思える激痛に悶える苦しむのだから無理もない。


 思っていたものとは少し違ったが、出会った不審者が女神であることは確信できると思ったランドレットは早速ファニアール家の没落を願った。しかし突然の没落だと代償が大きすぎるためにやることが出来なかった。仕方がないので自分が大人になり、それなりの権力を持った時に領主になれるように願った。ルナテルはそれを承諾し、ファニアール家に呪いをかけた。ランドレットが10歳になる年の話だった。


「ねえ、このお酒もっとないの?」


 ルナテルの問いかけで我に返るランドレット。ルナテル御所望の酒を棚へ取りに向かう。


「まあ、多少予定より遅れたが結果的に領主の座もこの手に入りそうだからいいというものだ。」


 ランドレットはルナテルのグラスに酒を注ぎながら今後の動きを考えていた。


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