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28.君とずっと一緒にいたい

 エルドは自室のベッドに寝転がり、しまっておいた指輪を手に取り眺めていた。


 この指輪はマリーに渡すはずだった婚約指輪だ。エルドの瞳の色と同じ青と緑の小さい石がはめ込まれてる。


 3年前、エルドとマリーは依頼の関係で1か月別行動するときがあった。別れる時にエルドはマリーにプロポーズをした。そして答えは次に会った時に聞きたいと。


 しかし1か月後、エルドの下に両親の訃報が先に届いた。エルドはマリーと再会せずに実家に戻り、そのまま領主を引き継がなければならなかった。


 マリーと再会したのは両親の葬儀から1週間たってからだ。マリーもエルドの両親の訃報を聞き、葬儀が終わり落ち着く頃を見計らって会いに来た。


 その時マリーはプロポーズの答えを伝えなかった。今答えてしまえばエルドは余計なものを背負い込むと思ったからだ。そして、それでもエルドのそばにいられるように彼の専属メイドとして雇うように交渉した。


 最初エルドはそれを拒んだが、マリーの固い意志に折れ彼女をメイドとして雇い入れた。トーライトにはマリーとの関係をすべて話し、その時に彼も専属執事として契約しなおすことになった。


 それから3年。とっくに喪は明けていたがアルの指摘通り忙しさにかまけマリーの事をほったらかしてしまっていた。トーライトには何度か結婚を勧められていた。しかし、マリーは特に何も言わず、ずっと側にいてくれたため甘えてしまっていた。 


「改めて考えると…クズだよね…」


 エルドは自身に問いかける。その時、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。エルドは指輪をポケットにしまう。


「エルド、トーライトさm…トーライトさんも帰ったよ。また来週来るって。」


 マリーが顔を覗かせながら言う。


「あ、うん…」


 エルドは立ち上がるがマリーの顔を直視できない。


「あ、あのさ…エルド…」


「ど、どうした?」


 マリーは部屋の中に入ってくる。


「アルの言ったこと、気にしなくていいよ。私は別に結婚なんかしなくても、こうやって一緒にいられれば…」


 マリーが俯く。確かにマリーは昔から結婚とかは面倒だから、ただ一緒にいられるだけでいいと言っていた。エルドはポケットに入れた指輪に触れる。


 今再びプロポーズするべきでないと声が聞こえた。しかし、エルドは後でトーライトやアルに他人に言われてするようなことではないと言われようとも、今言わなければ自分は一生このままだろうと思い指輪を握り、取り出す。


「マリー…」


 エルドはマリーの手を取る。


「僕は君に今までも、これからも甘え続けると思う。だけど僕は君とずっと一緒にいたい。君を守りたい。だから…僕と結婚してほしい。」


 エルドの真剣な表情を見てマリーは笑う。


「アルに言われたからってなに焦ってプロポーズしてるの、バーカ。」


 マリーはエルドを抱きしめる。


「ずっと言いたかった。私でいいなら…ずっと側にいさせてほしい。」


 エルドもマリーを抱き返す。


「ごめん…本当に…ごめん…」


「なんで謝るの。私だって何も言わなかったんだから同じだよ。」


 エルドはマリーの右手を取り、指輪をつける。


「わぁ…」


 自分の右手につけられた指輪を見てマリーは目を見張る。


「装飾店にこそこそ入り浸ってることがあったけど、これのために。」


「まあね。本当は赤いリングにしたかったけど、作るのが難しいって断られたから普通のだけど。」


「どんなの作る気だったの。」


 マリーは指輪を触りながら笑う。そして再びエルドに抱き着いた。エルドも抱きしめようとしたがマリーに持ち上げられベッドに投げ飛ばされる。


「おっと…なに?」


 ベッドに着地し体を起こそうとしたがマリーに馬乗りにされてしまう。


「アルにあんなこと言われて落ち込んでるだろうからベッドで慰めてあげようと思って来たんだけど、こんな嬉しいことされちゃったら頑張らないとね。」


 そう言って服を脱ぎ始める。


「依頼中何もしてこないから性欲落ち着いたのかと思ってたらそうでもなさそうですね。」


 エルドは苦笑する。


「依頼中はあのハゲがいたからできなかっただけ。いなかったら昔と変わらずだよ。」


 マリーの顔が近づいてくる。


「人にゴブリンみたいにとか言いながら、僕以上にゴブリンなんだから。」


 エルドはマリーの頭に手をまわし引き寄せた。


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