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170.別れと残された物

 翌朝、エルドが目を覚ますと他のメンバーはもう起きて朝食の準備をしていた。


「一晩寝てたのか。」


 凝り固まった体をほぐしながら立ち上がり水魔法で全身を洗う。使い終わった水をそのへんの木々にまいて処分すると朝食ができたとマリーの声が響く。


「おはよ。なんか体が凄い体が凝ってたんだけど何か知らない?」


「さあ?特に何もなかったように思うけど。昨日夜食べてないけどどうする?鍋皿にする?」


「いや、深皿でいい…流石にそれで食べる勇気はない。足りなきゃおかわりするし。」


 マリーは頷いて深皿にスープをよそう。少し離れた所にアルと魔族達が座っていた。


「おはよ。アルも目を覚したんだね。そしてまだいる魔剣三人組。」


「心配かけたようだな。」


 アルが苦笑しながら言う。


「変な呼び方で私達を括るな。」


 テンペラが飽きれたように言う。


「あはは。どう呼んでいいかわからなかったからわかりやすい呼び方がこれしかなくて。」


 話をしているとモイラとレイラが配膳してくれた。マリーが火を落として合流したところで朝食を食べたじめた。


「ところで、三人組はいつまで元の姿?」


「さあな〜。朝って言ってたから案外もうすぐなんじゃねえか?」


 メテオはそんな事を言ったが朝食を終え片付けをしてエルドとテンペラが軽い運動がてら組手をしてもまだ姿は変わってなかった。


 モイラが時計を取り出して時間を確認する。


「えっと、昨日の今ぐらいが2万匹の魔物を制圧してアレアミア様とここに向かい始める時間だね。」


 それから20分ほどして魔族の3人の体が光り始めた。


「時間的にまる一日か。何が朝には…だよ。」


 メテオが不機嫌に言う。その横でヒーリングがモイラを抱きしめていた。


「もうこうやって抱きしめることができないのね。」


「ヒーリング、魔剣に戻ってもずっと一緒だからね。私達は会話できるから寂しく思わないでね。」


 ヒーリングは強くモイラを抱きしめモイラが埋まっていく。


「まあなんだ。飯うまかったぞマリー。」


「言うことはそれしか無いの?」


 メテオは気まずそうに顔をかく。


「俺はこういうのは苦手なんだよ。どうせ魔剣に戻っても俺を使うんだろ?」


「それはそうね。でもこうやって喋るのはもう出来ないから最後ぐらい何か言ってくれてもいいんじゃない。」


「あ〜じゃあ…頼みというかなんというか、俺が魔剣に戻ってもなるべく俺を使うようにしてくれよ。会話できなくても意識はなんとなくあるからよ。」


「う〜ん…それは難しいかな〜。あなたを使っていると自分の二つ名を思い出しちゃうから。」


 マリーは笑顔で答えた。メテオはその言葉に反応せずただ笑うだけだった。


「こいつを渡しておく。」


 エルドはテンペラから渡されたものを見る。


「なにこれ、石?」


「私の体の一部だ。もしかすると共に魔剣になってしまうかもしれないがならなかったらそれで剣身を作れ。」


「なるほどね。それはいいかも。これは光ってないし残る可能性のほうが高そうだ。」


 エルドは渡された石をポケットにしまう。そのまま二人は黙ってしまった。


「エルド、何か言うことないの?もう話せなくなるんだよ。」


 マリーは小突きながら小声で言ってくる。


「普通の別れとかなら言えることはあるけど、側にいるのに話せなくなるパターンは経験がないからちょっと困る。」


「私も特に言うことはないな。」


 マリーが呆れていると魔族の3人の光が強くなった。


「そろそろ時間のようね。」


 ヒーリングはモイラを放した。


「じゃあなマリー。」


 メテオは大声で笑う。


「…エルド…1日だが…楽しかった…」


 テンペラがそう言うと魔族3人は光となり魔剣に戻った。エルドは空中に浮いたテンペラを掴む。


「全く素直じゃないんだから。」


 そう言ってポケットを探り石が残っているのを確認した。


「それはあなたもじゃないの?本当は言いたい事とか…」


「別に。これからも一緒にいるんだから気持ちは伝わるよ。」


 エルドはテンペラと石を亜空間にしまった。離れたところで見ていたアルとレイラが近づいてくる。


「無事終わったようだな。それじゃあ一度砦に戻るか。魔王のことはそれから…」


「多分戻れないよ。」


 アルの帰る宣言にエルドが口を挟む。


「ほら、アレアミアが張った結界がまだ残ってる。このままじゃあ動けないよ。」


 アルは結界の側まで行き、外に出られないのを確認して戻ってきた。


「ね?駄目でしょ。」


 エルドは苦笑しながら言う。



 昼食を済ませてまったりとお茶を飲みつつエルドはテンペラの石を熱魔法で柔らかくして形を整える。剣身の形になったところで風魔法で研磨しているとアルが作業の様子を覗いてきた。


「意外と器用だよな。」


「意外とは心外だな。」


 研磨した部分が曲がったり欠けたりしてないか確認するエルド。


「エルドは氷像の制作とか暇なときよく作ってるものね。」


 マリーも会話に加わる。


「まあね。魔力操作の練習になるからって母さんに教えてもらったんだ。」


 エルドは再び研磨を始める。


「しかし女神様はいつ戻ってくるかね。」


 アルは寝転がり空を見る。


「まあ気長に待とうよ。アレアミアだって相手が相手だから苦戦してるんでしょ。」


 刃の研磨が終わってテンペラを出し二つをくっつける。もともとそれが正しい姿であったかのようにしっくりくる。


「もう抜けないの?」


 マリーが剣身を掴んで引っ張るがテンペラから抜けない。


「いや、抜くことはできるよ。でもあまり必要ないよね。」


 エルドは剣身を一度引っこ抜きまた刺す。


「それよりも鞘がほしいな。でもやっぱ戻らないとだめか。革細工はやったことないからな〜…」


「鞘?亜空間に仕舞っているのに鞘がいるの?」


「うん…今度からなるべく持ち歩こうと思って…もう一つの剣と共にね。」


 マリーはしばし考える。


「なんなら私が作ろうか?その鞘。革加工なら多少は心得あるし。」


「え、本当?」


「作り方はよく知らないから一度教えてもらいに行かないといけないけど、革製でいいなら作るよ。」


 エルドはマリーの手を取る。マリーの顔が赤くなっていく。


「なあ、人が横で寝ているときにいちゃつくのやめてくれない?」


 アルの声でエルドはマリーの手を放した。


「そういえばいたねぇ、アル。」


「お前、昔から俺を邪険に扱うよな。」


「学院入学時に対等に接してくれって言ったのアルじゃん。」


 いつものようにエルドとアルが口喧嘩を始めるとモイラとレイラが離れて作っていたお茶請けを持ってやってきた。5人はそれを楽しみつつくつろぐ。

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