165.魔剣の魔族達 1
「やっぱり向かってこねえか。」
メテオはつまらなそうに言う。
「わかってたことじゃない。ワタクシとしても向かってこなくてありがたかったけど。」
ヒーリングは座り込んで呆然と状況を見ていたモイラに近づく。
「大丈夫モイラ?まだアレの治療が済んでないのだから放心している時間はないわよ。」
アルをアレ呼ばわりするヒーリング。
「あ、は、はい…ヒーリング…さん…」
モイラは思考が定まらずに呆然としてヒーリングを見る。そんなモイラをヒーリングは抱きしめた。
「もう、可愛いんだから。今まで通りヒーリングでいいわよ。最初の聖女も素直で可愛かったけどあなたもとっても可愛いわ。」
「え、あの…」
ヒーリングに抱きしめられてモイラは布に埋まっていく。ちょうど胸元だったため大きいけどちょっと硬いなと思いつつモイラはされるがままだった。
「お〜い、治療するんじゃなかったのか〜。」
二人のやり取りを見ていたメテオが飽きれた口調で言う。
「そう言えばそうだったわね。モイラ行きましょう。」
モイラとヒーリングはまだ治療中のアルの元へ向かった。
「あ〜あ。全く相変わらずだな。」
メテオはその場にドカリと座る。
「お前らも座れ座れ。立ってたら疲れるだろ。」
割と呆けているエルドとマリーに言う。
「テンペラ、お前も座れよ。いつも無愛想なんだから。」
メテオを睨みつけるように見ていたテンペラの視線が動きアレアミアを見る。
「女神、私達は別に人族に手は出さん。その鑓を降ろせ。あいつの言葉通りなら明日には元に戻ってしまうしな。」
アレアミアはいつでも動けるように鑓を構えていたがその言葉で降ろす。
「本当に何もしないの?」
「そもそも人族には興味はない。それに私達が何かをするメリットもない。」
アレアミアの問にテンペラが答える。
「それなら私はクリエイトを追うわ。ただまだ信用できないから結界を張らせてもらうけど。」
そう言ってアレアミアは浮き上がる。
「エルド、あなたもおとなしくしているのよ。」
エルドはアレアミアを見て苦笑で答える。アレアミアはため息をついて結界を張り、北の方へ向かっていった。
アレアミアが飛んでいったのを見てテンペラも座る。しばらく様子を見てエルドとマリーも座った。
「しっかし、やることねぇのも暇だな〜。」
メテオは寝転がりながら言う。
「どうせ1日も無いんだ。そのまま寝てればいい。」
テンペラは腕を組み座っている。
「なんか岩みたい…」
テンペラの姿を見てエルドは不意につぶやいた。それを聞いたマリーは吹き出す。
「あ…ごめん…なさい…」
「気にするな。私は鉱物の魔族。座れば岩のように見えることなど百も承知だ。」
「あっはっは。そーそー。こいつが瞑想して洞窟なんかで座ってると周りと同化して見つけらんなくなるんだよ。」
メテオは起き上がりテンペラの肩をたたきながら言う。
「うるさいメテオ。少し黙れ。」
「はーい。」
テンペラとメテオのやり取りを見てエルドは笑
う。そんなエルドをテンペラは見据えた。
「あ、いや、なんか魔族ってもっと凶暴なイメージあったから。人族とあまり変わりなくて少しホッとしたというのか…」
「私達も別に無意味な争いが好きなわけではない。」
「へぇ、魔族の事質問していっていい?」
「好きにしろ。どうせ暇なんだ。」
テンペラは無愛想に言った。




