164.新たな魔王と古の四天王
アレアミアの放った突きが魔族に向かうが魔族は後ろに下がってそれを避ける。
「何だ女神。せっかく面白いおもちゃで遊べると思ったのに邪魔をするな。」
アレアミアは怯むことなく連続で突きを繰り出す。
「邪魔をするなと言ってるだろうが!!」
魔族が腕を振ると突風が起こりアレアミアを吹き飛ばす。エルドとマリーもその余波を受けて少し後ずさる。
「今のは魔法?なんて威力だ。」
エルドがつぶやく。
「誰も魔法なんか使ってはない。今のは腕を降っただけだ。」
魔族が面相くさそうに言う。エルドとマリーの表情が強張った。腕の一振りでアレアミアを吹き飛ばし自分らのところにまで届かせるというのはどこまで力が強いのかと。
「はぁ…興がそがれた。」
魔族はため息をつく。アレアミアは体制を立て直して鑓を突くが魔族はやりを手で抑える。
「しつこいぞ女神。安心しろお前の相手は…」
魔族がアレアミアの顔をマジマジと見る。
「見覚えがあるなお前。」
「それはこっちも同じよ。もしかして四天王クリエイトかしら。」
魔族が鑓を離すとアレアミアは距離を取る。
「四天王と呼ばれるのは久しいな。…そうかお前、先代魔王を討ち取った幼子か。そういえば何度か戦った事もあるな。」
魔族は懐かしそうに遠くを見ている。
「しかしあの爆発で生き残った者がいたのは驚きだ。それに…あれから1万年は経っているのにあまり年を取ってないな。女神族はそんなものなのか?」
「御託はいいから答えなさい。あなたはクリエイトなの?それともその子孫?」
アレアミアは鑓を構え直し先端を魔族に向ける。
「我は魔王クリエイト。お主の言う四天王クリエイトそのものだ。」
それを聞いてアレアミアは安堵の息を吐く。
「よかった…あなたが魔王なら私にも勝機があるわね。」
「何を勘違いしているのか。昔と今の我を同列のものと思うなよ。
…しかし今日はもうやる気が起きんな。お前のせいで面白いおもちゃとの遊びを邪魔された。」
魔王クリエイトは浮かび上がる。
「逃げる気!?」
「まあ待て、代わりにお前の相手をするやつがいる。」
魔王は人族には聞き取れない呪文を叫んだ。魔王の体が光りエルドのテンペラ、マリーのメテオ、そして少し離れたところでアルを治療中のモイラの持つヒーリングに飛んでいく。3本の魔剣が光りクリエイトの元まで飛んでいった。モイラはヒーリングをしっかり持っていたために引っ張られてクリエイトの近くで落ちた。
3本の魔剣は強い光を放ちそれも落ち着くと3人の魔族へと変貌していた。元魔剣の魔族はゆっくりと地上に降り目を開ける。
「さあ古の四天王たちよ!当代の魔王の命に従いそこの女神と人族共を抹殺しろ!!」
クリエイトが地上の3人に言うが3人ともクリエイトを見上げるだけで動こうとする気配がない。
「どうしたお前ら!?行け!行くのだ!!」
「ああ、お前クリエイトか。随分年食ったな。」
赤い鎧の魔族、メテオが白く尖った歯を見せ笑いながら言う。兜はないのか何もかぶってないため表情がよくわかる。
「ワタクシ達は魔剣にされていたから年を取ることがなかったのでしょう。」
白い法衣のような布をまとった魔族、ヒーリングが言う。表情は顔全面を覆う仮面で分からないが立ち姿や声から女性のように感じる。
「…」
残った青白い鉱物のような体の魔族、テンペラは黙ってクリエイトを見据えている。顔を見ると目はあるが口が無さそうだから喋れないのかもしれないとエルドは思った。
「貴様らには隷従の魔法をかけたはずだ!なのになぜ…」
それを聞いてメテオとヒーリングは口からテンペラは手を開いてそれぞれ紫色の塊を出す。
「コレのことかしら?この程度の呪文でワタクシ達を従属させようとは片腹痛いわね。」
ヒーリングは塊を地面に叩きつけて踏みつけ、メテオは燃やし、テンペラは握りつぶした。
「クリエイト、勝手に魔王を名乗っているようだがあまり調子に乗っていると同胞とはいえ殺すぞ。」
今まで喋らなかったテンペラがクリエイトを見据えて言う。エルドは喋れるんだと一人納得していた。
「ちっ…まあいい。どうせお前達が元の姿でいられるのは明日の朝までだ。それまでせいぜい最後の自由を味わうんだな。」
そう言って魔王クリエイトは北の方へ飛んでいってしまう。アレアミアは追いかけたいが古の四天王を放っておくわけにもいかないと追いかけられずにいた。