149.魔力補給
「生焼けでもいいからどんどん持ってきてくれ。全然足りない。」
「流石に生焼けは僕嫌なんだけど。」
「私にはホールケーキセットお願いしま〜す。」
闘技場で決着の後、エルドとアルはモイラに運び出されて回復してもらった。それから司令官室の隣の部屋に食事を運んでもらって食べ続けている。
魔力切れは危険な状態だ。長い時間放置していると生命の危機すらある。魔力を補充するのに手っ取り早いのは他人の魔力を分けてもらうことだが、相性があるためにあまり推奨されていない。
推奨されているのは食事だ。普段より食物から魔力を得ている事もあり食事での魔力補給が推奨されている。しかし食物に宿る魔力は人族にすれば微々たるもので大量に食べなければならない。それが今の状況だった。
「ミノタウロスの肉焼きあがりました!」
給仕スタッフがワゴンを押して大量の肉を運んできた。
「あ、ミノタウロスのお肉なら私も2皿くらいほしい。ケーキ焼けるまで時間かかるだろうし。」
3人の前に肉が置かれたと同時ぐらいに入り口の扉が開いてマリーとレイラが入ってきた。
「マリー、どこ行ってたの?もう試合終わっちゃったよ。」
モイラが肉をほうばりながら言う。
「こっちも色々あったのよ。食事中だし急ぎじゃないしあとで話すわ。
それよりこの匂い、もしかしてミノタウロスの肉?私にもとりあえず3皿頂戴。」
マリーが席に座りながら言う。
「じゃあ私も3皿ください。」
レイラも席に座りながら言う。
それから給仕スタッフは大忙しだった。もともと大量に食べるマリーとレイラに加えて魔力を切らしてしまい大量に食べなければならないエルドとアル。何故か一人だけ違うものを食べているモイラ。その日は厨房まで何往復したかわからなかった。
「そういえば、どこからどこまでが台本だったの?」
マリーが肉を切りながら聞いてくる。
「やっぱバレてるか。まあ最初から最後まで。と言っても流れだけで内容は本気でやり合ってたけどな。」
アルが答える。
「僕はテンペラ使ってないから本気だったのかと言われると…」
エルドはボソリと言う。
「そう言えば冒険者達から苦情が来てるようですよ。あんな終わり方で納得できるかって。」
レイラが冷静に言う。
「じゃあこう回答しとけ。人の喧嘩に口挟むなって。そもそもあれは決闘じゃなくて喧嘩だ。」
アルが答える。エルドもそれに同意した。
「そういえばアル、ケイラック殿下は?」
「さあ?どこかにはいるだろうけど回復してもらってからは見てないな。」
「そういえばいつの間にかいなくなってた。」
モイラも記憶を探るがいついなくなったのかわからない。
「となるとやっぱり一番怪しいのはあの人か…」
マリーのつぶやきがイヤに部屋に響いた気がする。