143.謎の水の効力
鍛冶工房を後にしたエルドはいないとは思ったが大食堂にむかった。そして2人はまだ食べていた。
「おいおい…」
エルドは2人のいる席に腰掛けた。
「まだ食べてたの?」
「これは昼食よ。」
マリーにそう言われて壁の時計を見ると昼少し前だった。
「あら。結構長居してたんだな。ごめん。」
「判ればよろしい。」
実際はずっと食べ続けててたまたま今昼前なだけだったのだがモイラは苦笑して口を閉ざした。
昼食のあとはマリーが体を動かしたいというのでジムに向かった。レイラがマリーとモイラに謎の水を説明してくれたジムだ。
そこへ行く途中ケイラックと会った。
「ケイラック殿下。またナンパですか?」
「おいおい君はオレをなんだと思ってるんだ。ちょっと体が訛ってきたからジム通いだよ。」
ケイラックは笑いながら行ってしまう。
3人はジムに入り準備をする。腕に魔封じの腕輪をつけ一時的に魔力を放てないようにする。
「そういえばエルドは魔力強化無しでどれくらい持てるの?」
準備をしているとモイラが聞いてきた。
「そうだな…これくらいは簡単に…」
エルドは50kgのバーベルを片手で持ち上げた。それを見て驚く2人。その様子を見て小刻みに震えてから笑い出すエルド。
「実は魔力強化をしてたんだ。チョットしたカラクリがあるんだけど。」
エルドはバーベルを床に置く。
「腕輪が壊れてるとかなじゃなくて?」
エルドは腕輪を外してマリーに渡す。マリーはつけていた魔力封じの腕輪を外してエルドから渡された方をつける。
「壊れてないわね。」
モイラにも確かめてもらう。
「カラクリの答えはこれ。魔力封入の腕輪。」
エルドは左腕の腕輪を指して言う。
「どういう事?」
「最初にアルからあの水の話を聞いて変に思ったのは人族にしか効かないこと。なら魔導具には効くのかって思ったわけ。で、色々調べた結果身につけたり持ったりするものなら使えるってのがわかった。」
「でもその理論なら魔力強化は水かけられても使えないとおかしいわよ。水に触れた途端に魔力が動かせなくなったんだから。」
マリーが反論する。
「僕は全く動かせないわけじゃなく、かなりゆっくりだけど動かせるよ。実際この腕輪の魔法発動させるのに普段の3、4倍はかかってるし。」
「じゃあ量は?どれくらいつけたの?」
「両手の平が浸るほど。」
人族が魔法を使う際その殆どは手のひらから出ると言われているためそうしていた。
「なら問題ないのかな…」
「いや、実は問題点は結構あるんだ。」
エルドは腕を組みながら言う。
「1つは大きな魔導具が使えない。これはもうしょうがないと諦めるしかないね。
1つは水を全身に被ったら腕輪のすら発動するのかわからない。一応水を塗って発動するかどうか試したら発動するから腕輪が濡れても大丈夫だろうけどね。
最後に根本的な話だけど、これはどんな魔物が使ってくるのかわかってないらしいんだ。」
「それは困るわね。」
エルドは魔封じの腕輪をつけて40kgのバーベルを両手でつかむ。そしてゆっくり持ち上げる。
「僕が魔力強化無しで持てるのはこれくらいかな…あれ?モイラは?」
先程まで近くにいたはずのモイラがいなくなっている。
「あら?どこに…」
モイラは話の内容は理解できるが議論などがあまり好きではないため2人の話を聞きながら先に1人で筋力トレーニングをしていた。