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138.名前と真実

「ま、予想通りエルドの勝ちだったな。」


 闘技場での対戦後、エルド、マリー、モイラ、アル、レイラ、ケイラックは司令官室に戻ってきた。


「そりゃあね。僕が負ける要素があると思う?」


「いや全く。あそこまで頭に血が上ってたらまあ無理だろうよ。」


 それを聞いてエルドは鼻高々に笑う。


「そういやエルド、マリーンってミドルネームか?初めて聞いたが。」


 それを聞いて固まるエルド。


「私も10年くらい一緒にいるけど初めて聞いた。」


 マリーが言う。


「あはは〜…エルドマリーンが僕の本名なんだよ。僕の戸籍にはそう記入されてるよ。」


「は?どういう事だ?」


「正直嫌いなんだよマリーンって部分。女の子みたいで。実際それでからかわれた事もあるし。まあそれが原因で雪山に放置されたんだけど。」


 マリーとモイラはあの話かと納得する。そりゃ詳細言いたくないわと。


「だからいつも前半のエルドだけ名乗ってたんだ。」


 エルドは深いため息をつく。


「たしかに昔、中途半端な名前だなとは思ったことあるわね。名前のモチーフも色から来てるのは分かったけど半分しかないから。」


「ちなみに署名関係は全部エルドで通してる。あれは書くときわずかながら魔力が残るからそれが判別できれば極端な話偽名でもいいし。」


 なるほどねとアルは納得する。


「ま、偽名使ってるわけじゃないから問題ないだろ。」


「問題ないんだ。」


 アルの言葉にマリーが聞く。それに答えたのはケイラックだ。


「問題ないと思うよ。戸籍がそうなってるならそもそも親父とイニシアは知ってるだろうし。」


 それを聞いてエルドは悶える。


「陛下はともかくイニシア殿下も知ってるのか〜。」


「ここまで落ち着きのないこいつ見たの初めてだな。」


「私も初めて見た。」


 アルとマリーは珍しいものを見たと笑いをこらえる。


 エルドが落ち着くのを待っている間にお茶にしようとレイラが色々と運んできた。お茶はマリーが淹れる。


「は〜、美味しいお菓子と紅茶で午後のティータイムなんて幸せ〜。」


 モイラがお菓子を頬張りながら言う。


「まだ沢山ありますよ。」


  少なくなったお菓子を追加で皿にのせるレイラ。


「はぁ…落ち着いた…」


 エルドはマリーの入れたお茶を一気に飲み干しひと呼吸おいた。


「さて…みんなには一つ話さないといけないことがある…」


 エルドが落ち着いたのを見てアルがきりだす。


「俺が次に魔物が攻めてくる期間が短いと予想したのは勘でも何でもない。そう話す声を聞いたからだ。」


 その場の全員が硬直する。


「…それは…誰が言ったんだ…」


 エルドが聞く。


「わからない。撤収しようとしたところで声が聞こえた。振り返っても誰もいなかったよ。」


 魔物は知性は高いが人族と会話できる個体はほぼいない。全くいないわけではなかったのだがここ2,300年は確認されていなかった。


「じゃあ誰がそんなことを話したって言うんだ。」


 ケイラックが叫ぶように聞く。


「考えられるのは人族の言葉がわかる魔物がいたか…もしくは…魔族か…」


 それを聞いてエルドは笑い出す。


「いくら何でも魔族はない。遥か昔女神に壊滅させられた神話レベルの話だよ。たしかに滅んではいないって話はあるけど、これまで一度も確認されてないんだから残ってないって。」


「ああ、それもそうだよな。なら人族語がわかる魔物か。これも厄介だよな。」


 エルドに笑い飛ばされたおかげか、アルの表情は軽くなる。


「他の魔物よりどれだけ頭が良くても魔物は魔物。どうってことないでしょ。」


 エルドは笑顔で言った。


「ほんとお気楽だよなお前は。エルドマリーン。」


「早速人の弱点いじるか陰険王子。」


 しばし口喧嘩が続くが最後は笑って解散した。

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