137.貴族式決闘 決着
爆発の余波で熱風がエルドを襲う。来るのは予想してたためテンペラの熱魔法で周囲の温度を下げていたがそれでも周囲の温度が上がるのを感じる。そしてテンペラは震えている。
「ちょっとやり過ぎたかな?抑えたつもりだったけど。それともやっぱりテンペラの機嫌が悪くて調整しきれなかったか…」
爆発のせいで巻き上がっていた土煙が落ち着くとヒュライスの姿が見えてきた。ヒュライスは自身の周りに水を膜を発生させて爆発を防いでいた。だが最初の方は食らったのか全身ボロボロになっている。
「ふざけるなよ…エルドマリーン・ファニアール…こんな戦い方今までしてなかっただろうが〜!!」
エルドは頭をかく。
「君はなんというか…決めつけがすごいね。前に君とここであって何年経ってると思ってるの?それに僕はもともと近接戦闘タイプじゃなく魔法戦闘タイプだ。相手のことはよく調べておきなよ。」
「ふざけるなふざけるなふざけるな〜!!」
ヒュライスは杖を前に出し呪文を唱える。エルドは更に距離を開けテンペラを地面に刺す。
ヒュライスの周りに水が集まり何かの形に変化していく。次第にそれは形が整い、古代に絶滅したと言われるドラゴンの形となった。
「流水龍ウォータードラゴン、だっけ?」
「そうだ!ボクはこれで数千の魔物を討ち滅ぼした!!いくら魔剣でもコイツは抑えられないだろう!行け!!」
流水龍がエルドに向かってくる。しかしエルドは動かなかった。流水龍が大きく口を開けてエルドを飲み込もうとした時、流水龍が止まった。
「な!?まさかまた…」
「今度はちょっと違うよ。よく見てみな。」
ヒュライスが流水龍を見ると体に青白い何かが巻き付いていた。よく見てみるとそれは氷でできた流水龍によく似た龍だった。
「君風に言うなら氷結龍アイスドラゴン。発動魔法がウォータードラゴンだとわかったとき作成を始めたんだ。流石に造形は真似させてもらったけど。」
エルドが右手を降ると氷結龍は流水龍を引っ張り、ヒュライスに叩きつけた。
「さあ今度は完全な魔法対決だ。どっちの龍が勝つかな?」
再び右手を振り氷結龍をヒュライスに向かわせる。ヒュライスも手を振り流水龍を氷結龍に向かわせる。2体の龍はお互いを食おうと体に噛み付いた。
「属性は違えど同系統の魔法だからほぼ互角か!だが!」
ヒュライスは両手を前に出し振る。流水龍の形が一度崩れ氷結龍から離れたところに再形成される。そして再び両手を振るうと流水龍は大口を開けて氷結龍を飲み込もうとする。
エルドは右手を振って氷結龍が避けるように操作するが氷結龍の土手っ腹を流水龍が噛み付く。
「あはは!いいぞ!そのまま噛み砕け!!」
「こっちの思惑通りに動いてくれてありがとね。巻き付け!氷結龍!!」
「な!?」
エルドの言葉に反応して氷結龍は体を伸ばし、流水龍を中心に閉じ込めるように氷の球になって落ちてきた。
「クソ!完全に捕らえられている!だがもう一体作って…」
「いや、もう終わりだよ。」
エルドは左手を振った。赤く燃える炎の龍が氷球とヒュライスを飲み込み爆散する。
「かは…こ、こんなのいつの間に…」
「氷結龍を作ったとき同時にね。ちなみに名前は炎爆龍ファイアドラゴン。」
そんな事知るかと呟きながらヒュライスは倒れた。そして周囲をおおっていた結界が無くなり観客の歓声が耳に痛い。
「全く、うるさいよ。」
エルドはテンペラを引き抜き亜空間にしまい、マリーたちのもとに戻っていった