134.ヒュライス再来
翌日以降エルドは主にアルの手伝いで砦内をめぐり、マリーとモイラはレイラの手伝いをしつつ筋力トレーニングに勤しんでいた。そして1週間ほど経過して。
「なあアル。」
「何だ?」
「そもそもなんで僕は君の手伝いをしてるんだ?」
エルドは書類を分けながら聞く。
「まあ…忙しいからかな。」
「そうか。そろそろ落ち着いてきたと思ったんだけどな。」
「少しは落ち着いてきてるんだけどな。」
アルは決済済みの書類を箱に入れながら言う。
「さて。今日の分はこんなものか。エルド、昼食いに行くか。」
「ああ。こっちもちょうど終わり。」
「兄貴、行くよ。」
ペットか、と思いつつエルドはアル、ケイラックと大食堂に向かった。
大食堂には来たときと違って人で溢れかえっていた。新たに来た冒険者たちだ。
「だいぶ集まってきたな。」
「そうだな。2日前くらいから魔物も動き始めたし時期的にはちょうどよかった。」
「それにしても今回はアルデリックの勘が当たってよかったよ。こんなに短いスパンでまた攻めてくるようになるなんて前任者じゃ絶対言わなかったからね。」
ケイラックが席に座りながら言う。それを聞いてアルの表情が曇る。
「それに関して…話さなきゃいけないことがある…後でマリー達も呼んで説明する。」
ケイラックはその場で聞きたそうにしていたが周囲に他人がいる状況、エルドは目でケイラックを止めた。
それから3人はランチメニューを頼み食事を始めた。3人ともそれぞれ色が出ている為食べる量は人より多い。そのため周囲の色の出ていない冒険者たちにチラチラ見られている。
しかもアルは軍服、ケイラックに至っては仕立てのいい私服だ。とても冒険者には見えない。そんなのがそこにいるのはどうも異質で周りの冒険者たちは気になってしまっていた。
「エルド・ファニアール!!」
食後のお茶を飲んでいるときに突然名前を呼ばれてエルドは振り返った。
「やあヒュライス。この1週間全然会わなかったね。」
大食堂の入り口にヒュライスが立っていた。周りの冒険者たちがエルドとヒュライスを交互に見る。
「エルドとヒュライスだと?」
「まさか氷炎のエルドと流水のヒュライスか!?」
「あの2人数年前の大衝突でも活躍した冒険者だろ?」
「まさかこんな有名人が近くにいるなんて。」
アルが耳を澄ますとこんな会話が聞こえてくる。
「エルド・ファニアール!!ボクと勝負しろ!!」
エルドはそれを聞いてアルを見る。
「などと言ってますがどうしたらしいですか、司令官殿。」
「外の闘技場でやってやれ。あいつに関しちゃうるさくてかなわん。」
それを聞くと先に周囲の冒険者が我先にと闘技場に向かった。
「ありゃ、そんなにみたいかね人の練習試合。」
エルドが飽きれたように言う。
「練習試合だと?これから行うのはお前の処刑だ!!」
そう言ってヒュライスも行ってしまった。
「…もしこれで僕が行かなかったりしたらどうなるんだろうね。」
「それこそ暴動が起きて公開処刑だろうな。流石にそれは面倒だから行くぞ。」
エルドは面倒臭そうにアクビをして闘技場に向かった。




