132.女子会
エルドがアルに連れて行かれて、レイラが部屋に残り三人で酒盛りをしていた。
「あんな連れ出し方、アルらしいといえばらしいわね。」
なみなみと注がれた酒を一気に煽りながらマリーが言う。
「そうかもしれませんね。学院卒業してからずっとここにいるので誘い方がわからないって悩んでいましたよ。」
レイラは空になったマリーのグラスと自分のグラスに酒を注ぐ。
「モイラさんはまだ飲みますか?」
「えへへ〜。アルデリック殿下も可愛いところがありますね〜。」
モイラは手に持った酒を飲み干す。顔は赤く、目は垂れ下がりあいてるのかどうかの判別がつかない。
「おかわりくださ〜い。」
「大丈夫かな…」
レイラは戸惑いながらもモイラのグラスに酒を注ぐ。
「大丈夫よレイラ。モイラはそうなってからが長いから。」
「はぁ…マリー先輩がそう言うならいいんですけど。」
レイラはちらりとモイラを見る。正直未成人が飲酒しているような感覚に陥り心が痛くなる。モイラは気にせず酒を飲み干す。
「は〜、おかわり〜。」
グラスをレイラに差し出した。レイラは躊躇して動けない。それを見てマリーはレイラの持っている酒瓶をとりモイラと自分のグラスに注ぐ。
「マリーありがとう〜。このお酒おいし〜ね〜。」
レイラは諦めたようにため息をつき、持ってきた箱を開ける。そして中からツマミを取り出した。
「飲んでばっかりだと悪酔いしちゃうので何か食べながらがいいらしいですよ。料理長にたくさん作ってもらってきました。」
マリーとモイラは一つずつ手に取り食べる。
「しょっぱ〜い。甘いお菓子のほうが…あ、お酒には合うからこれでいいや〜。」
モイラはもう一つ手に取り食べる。
「本当に美味しいわよね料理長の作るもの。これで魔力入ってないんだからあの人から学ぶことはまだまだあるわね。」
マリーは噛み締めながら言う。
「マリーまだ料理上手になるつもりなの?今でも十分美味しいのに。」
「魔力込めなきゃ人並みよ。でも料理長のは違うからやっぱり少し教えてもらおうかな。」
モイラはそういうマリーを見てクスクス笑う。
「それはやっぱりエルドの為?」
それを聞いてマリーは顔を赤らめた。
「ま、まあ一応そうかな…」
「そっか〜。じゃあわたひも頑張って覚えようかな〜。」
「え?」
「だってわたひもエルドの為に何かしてあげたいもの〜。マリーに料理に魔力を込めるやり方教えてもらったし〜、料理が上達すればマリー以上に美味しい料理作っちゃうもの〜。」
それを聞いてグラスの酒を一気に煽るマリー。そして割れんばかりの勢いでデーブルにぐた合うを叩きつける。さいわいグラスはヒビ一つ入らなかった。
「ふふふモイラ。どんなに頑張っても料理じゃ私に勝てないわよ。どれだけおばあちゃんに仕込まれたと思ってるの?」
マリーとモイラが喧嘩を始めるんじゃないかとレイラは戦々恐々と見ている。笑顔で睨み合う二人だが、しばらくすると大声で笑いだした。
「あ〜、たしかにモイラにも料理してもらうと私の負担が減るわね〜。」
「あ〜でも〜、やっぱマリーの料理が一番かな〜。でもエルドにもわはひの料理食べてもらいたいしな〜。」
レイラは何事もなくてホッとした。
「ねえレイラ、どう思う?」
「レイラさん、どう思います〜?」
まさか何か聞かれるとは思っていなかったレイラは動揺してうまく答えられなかった。