128.また再会 1
司令官室をあとにしてレイラに個室に案内してもらった。そこは二部屋分の広さの部屋だった。
「ま、三人別の個室より二部屋分に入れたほうが節約にはなるな。」
エルドが笑いながらいい、亜空間から着替えを出す。
「そもそも到着してすぐ何かさせるとかどうなんだろ。」
エルドは旅装から普段着に着替えた。
「二人は着替えないの?」
「もう夕方だし着替える意味ないし。」
「私も別に。」
マリーとモイラは淡々と答える。
「あっそう。僕はバレーンの爺さんの所に行ってくるけど二人はどうする?」
「一緒についていこうかな。その後少し早いけど大食堂行かない?お腹空いてきた。」
あれだけ食べて?とモイラはマリーを見ながら思う。
「じゃあ一緒に行くか。」
そう言ってエルドは部屋を出る。三人でバレーンが居るであろう鍛冶工房に向かって歩いていると後ろから声をかけられた。
「おや、その赤髪もしかしてマリーか?」
三人が振り返るとマリーほどではないが濃いめの赤髪赤目の大柄な女性と青髪青目の小柄な男性が立っていた。
「あ〜…えっと…」
マリーはこめかみを指で叩く。
「あ、思い出した。アイルアイル国のジルバーとキリ国のヒュライス・バーライト・ジリシタンだ。」
アイルアイル国はリュトデリーン王国の西側、キリ国は東側にある隣国だ。
「よくまあ名前を覚えてるな。」
エルドがマリーの耳元で言う。
「流石にすぐには思い出せなかったけどね。」
だがエルドは声をかけられた瞬間に誰だか予想がついていた。だからなんだということのないことなので特に言うことはないが。
「あんたらもまた招集されたのか?大変だな〜。」
「それはお互い様じゃない?それにこのエリアにいるって事は。」
「ああ。今はSランク冒険者やってるよ。あんたらもだろ?…そっちのちっこい譲ちゃんも?」
ジルバーがモイラを指差して聞いてくる。
「はじめまして。聖女モイラと申します。まだDランク冒険者ですがエルドとマリーの付き添いのためこのエリアにいることを許可されました。」
モイラは深々と頭を下げる。
「聖女…そう言えば50年ぶりに聖女が誕生したって情報があったな。それがこんな子供だったのか。」
「いえ、こう見えても30歳なんですよ。」
それを聞いてジルバーは目を見開く。
「こんなちっこくてあたしと同い年かい!」
ジルバーも年上だったのかとエルドとマリーは同時に思った。
「こんにちは聖女。あんた出身は?」
今まで口も開かずこちらを見ていたヒュライスが突如モイラの前に来て聞いてくる。
「え?あの…リュトデリーンですけど…」
突然のことで混乱しながらも出身国を答えるモイラ。
「違う!!どういう身分なのか聞いてんだ!!」
突然の大声にモイラがビクつく。
「え、えっと…一般家庭です…キリ国風に言えば平民ですね。」
それを聞いてヒュライスの表情が凍る。
「やっぱダメだな、リュトデリーンは…」
モイラは突然のことで戸惑っている。エルドはそんなモイラを助けるために声をかける。
「相変わらずの貴族至上主義だなヒュライス。」
ヒュライスはエルドに顔を向ける。