123.書類整理と第二王子
エルドはため息をつきながら書類の仕分けをしていた。請求書、領収書、戦傷保証の申請書、はたまた有給申請の書類なんかもある。
エルドは風魔法で書類を浮かせて種類ごとに分類していた。その際箱に入れたほうが楽だなと思いアルに余った箱はあるか聞くがなかったのでケイラックに取りに行かせたりもした。
ケイラックは北の前線に勤務しているわけではないため書類関係は手を付けられない。そのため2人のサポートに回っていた。
「そういえばエルド君、イニシアの王位就任を承認したんだって?」
ケイラックが嬉しそうに言う。
「その話聞いてたんですね、ケイラック殿下。」
「あはは、アルデリックがアルだからオレはケイでもいいよ。
手紙は飛ばせるからね。通信魔法より安定して情報が届くんだ。」
「イニシア殿下が次の王位なのは周知の事実でしたからね。僕の名前で承認しました。」
エルドは書類から目を話さずに言う。
「…ケイラック殿下はなんで国王選別試験を受けなかったんです?第二王子ならだいたい受けているって聞いたことが…」
「エルド、その話はよしてくれ。」
アルが声を上げる。
「気にするな、アルデリック。」
「いや、そうじゃなくて…」
「話は単純、オレは子供が作れないんだ。」
アルが止めたとおりまずいことを聞いたなとエルドは思った。
「昔イニシアと遊んでた時にあのバカ川に落ちてさ、それを助けたら今度はオレが溺れたっれわけ。その性で風邪ひいてって流れさ。」
エルドの驚愕をよそに淡々と話すケイラック。
「まあでも良かったと思ってるよ。俺は元々国王なんかやりたくないって思ってたし。ただイニシアには色が出なかったからね、どうしてもオレを国王にしたい勢力が一定数いて子供ながらに面倒に感じてたんだ。」
ケイラックは自分の髪に触れる。アルよりも濃い緑色の髪だ。
「まあそれからはイニシアのサポートができるようにと各国をめぐる外交官になったってわけ。
今は休暇で実弟の様子を見に来てるんだけどね。」
「えっと…なんかすいません…」
エルドは恐縮しながら言う。
「あはは、何も謝ることじゃないさ。ただ事実を話しただけだしね。」
ケイラックは笑いながら言う。エルドは仕分け作業に戻った。
「そういやアルデリック、もう一人の同腹の弟とは連絡取ってるか?」
それを聞いてアルはため息をつく。
「どこにいるかもわかんないやつとどうやって連絡取れっていうんだ。」
「そうだよな〜。オレなんかあいつが成人してから連絡取れてないんだよな。」
再びため息をつくアル。
「当たり前だ。子供が作れないのをいいことに各国各地に現地妻こしらえるような兄貴、潔癖なあいつが認めるか。」
「あ〜、なんか昔言われた気がするな〜。」
「俺も似たようなものだけどな。こいつと大喧嘩してそれから口もきいてくれなかったよ。」
アルがエルドを指して言う。そして顔を引きつらせた。アルがエルドの方を見ると少々引いていた。
「各国各地に現地妻って…」
「はぁ…兄貴の話をするとみんな引くからさせたくなかったんだよ…」
アルは頭を抱えてしまった。