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113.五大家会議の閉幕

 エルドはテンペラを投げ捨てイニシアに駆け寄る。イニシアは怪我がひどく、気を失ってはいるが死んではいない。


 エルドは急いで呪文を詠唱しイニシアに回復魔法をかけた。回復魔法が発動するとイニシアは痛みに呻き始める。


「あんまり慣れてないんだ。痛みくらい我慢してよ。」


 エルドが回復魔法をかけているとあたりの景色も変わり始める。エルドはあたりを見渡し、元の部屋に戻っているのを確認した。


「イニシア!」


 そう言って駆けつけてきたのはバルザだった。エルドはイニシアから離れる。


「とりあえずの応急処置しかできてないから早く誰か呼んでモイラに回復させてもらって!」


 エルドの言葉にルリアは頷き誰かを呼びに外に行く。


「あとはゆっくり休みなエルド坊。」


 そういうのはブライナス。エルドの頭を撫でまわす。


「お前の戦い見せてもらったよ。なかなかいい動きしてたじゃないか。」


「え?見てたって…」


 どういうことだとエルドは首を傾げる。


「そのまんまの意味さ。お前ら四人が消えたを思ったら中央に映像が映し出されてそれぞれの戦いを見させてもらったよ。


 お前はまあいいが、殿下はちょっとな。もっとも殿下は騎士や冒険者じゃないしあんなもんなのかもな。」


 そう言ってブライナスはエルドの頭を撫で続けた。




 イニシアが次に目を覚ました時ベッドの上にいた。どうやら医務室のようだ。体を起こすと側ではバルザが心配そうな表情でイニシアを覗いている。


「ち、父上…俺は…」


 イニシアが目を覚ましたのを見てバルザは安堵の息を吐いた。そしてイニシアの頭頂部に拳骨を食らわせる。


「このバカ息子が!!」


「いった!何するんですか!!」


 痛いのは痛いが昔くらったほどの痛みは無かった。それでも食らったところに手を当ててしまう。


「なぁにが、どちらが相手を先に倒すか競争しようか、だ!?お前の実力でエルド殿に勝てると思ったのか!!?」


「な!?なんでそれを…」


 まさか知られているとは思わずイニシアの表情が青ざめていく。


「お前らの戦いは見せられてたんだよ!まあ、ワンダル殿の事だ。自分たちが勝ってもその証明が出来なければとか思ったんだろ。その結果、むしろ自分たちの敗北を証明する形になるとは思わなかったんだろうがな。」


 なるほどとイニシアは思った。実際どういう魔法なのかはよくわからないが、結界系の魔法と通信系の魔法の複合魔法だったのだろうとは予想がつく。


「昔からそうだ!お前は本当に無鉄砲に事を進めようとする!ここ数年は落ち着いてきたと思ったのにそんなんで王位を譲れると思うのか!!」


 ここまで叱責されるのも久しぶりだなと思いながらイニシアはバルザの説教を聞いていた。


 息が続かなくなったのか、言いたいことが無くなったのか、バルザが大きく肩で呼吸を始めたのを見計らったのかエルドが部屋に入って来た。


「失礼。陛下、落ち着かないと血管キレますよ。」


「君もそんなこと言うのか…」


 バルザは恨めしそうにエルドを見ている。


「ちょっと殿下と話させてもらってもいいですか?外にモイラがいますから回復して休んでください。」


 バルザは頷いて部屋から出て行った。


「何の用だ?」


 イニシアはエルドを見る。


「何の用って、賭けのこと忘れました?」


「…そんなわけあるか。だが病み上がりのところに乗り込んでくるとは礼儀がないな。」


 エルドはイニシアに用紙を差し出す。イニシアが訝しげにそれを受け取った。


「ほしいものか?全く、何が…」


 渡された用紙を見てイニシアは目を見開いた。その用紙はイニシアを国王と認めるファニアール家当主の承認書だった。最後にエルドの名前が記載されている。


「僕が賭けに勝とうが負けようがこれは書くつもりだった。まあ、陛下があれだけ怒ってるからすぐになれるかどうかは別にしてね。」


「…いいのか?」


「良くなかったら用意してないよ。それにあんたが何かしでかしたら承認者も責任を問われる。だから僕が承認しないといけないんだ。」


 それを聞いてイニシアは拳を握る。


「ま、あんたが愚王でも責任さえ果たせば僕はそれでいい。もう僕は政治にかかわる気は無いからね。」


 そう言ってエルドは振り返り外に行こうとする。そして扉の前で立ち止まった。


「あ、そうそう。賭けは僕の勝ちみたいだからあとでほしいもの一覧にして送っときますよ。まあこの前みたいにそこまで高いものは頼まないで済むと思いますけど。」


 そう言って笑いながらエルドは出て行った。


「エルド・ファニアール…毎度のことながらふざけてるやつだ…」


 イニシアは用紙を握りしめる。しかし表情は微笑んでいた。

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