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11.報酬と難易度

 西の森にやってきたエルドはとりあえず薬草を探して歩き回る。ソフィアの話ではこの森は薬草が群生しており、簡単に依頼達成できるとのこと。


「お、本当に群生してるや。」


 少し開けたところに出ると薬草が青々と生えている。まるで誰かが育てているようにも見えるが、この森はギルドの管理下にあるため、誰かが勝手に育てていても森の中にあるものはギルドの物と判断される。


「それじゃあ10本ずつで括っておけばいいかな。」


 エルドは丁寧かつ素早く薬草を摘み、10本ごとに紐で括って空間魔法で異空間にしまう。


 30分かからずに100本の薬草を採取し、報告に戻る前に森の中を散策する。


 特にこれといって特徴もなくどこにでもある森のようだ。ときどき魔獣か普通の獣かわからないが生き物が通る音が聞こえる。


「ふむ。やっぱりこの森での採取の依頼を基本的に受けるのがよさそうだ。」


 そう言ってエルドはギルドに戻った。




「おかえりなさい。早いですね。」


 受付で作業をしていたソフィアがエルドがギルドに入ってきたのを確認して声をかける。


「そうね、森に入って少し行ったところに群生したところがあったから助かった。これで100本ね。」


 そう言って亜空間から100本の薬草を取り出す。


「…はい、問題ありません。ではこちら、依頼料から税金を1割差し引いた3600リュンです。」


 ソフィアは薬草を受け取り、依頼料をエルドに渡す。


「3600か…宿代は無いから三食外食してもギリギリ問題ないくらいか。」


 エルドは財布にお金をしまう。昔なら午後からもう1~2件依頼をこなすが、今は特に焦る必要がないため町を見て回ることにした。


 ギルドの外に出ると人の横行が目に付く。朝早く見たときは農夫が多かったが、昼前の今の時間は商人などが多く行き来しているようだ。エルドはその辺を歩き回り、どこに何の店があるのかを見て回る。


 どの店もそこそこ人の出入りがあり、割と活気づいているように見えた。


「新しい町なのもあるだろうけど、結構にぎわってるよな。」


 そう言いながらふらふらと町中を散策し帰路に着いた。


 翌日からは午前と午後で依頼をこなすようにした。朝は森で採取系の依頼を、午後は魔獣討伐系の依頼をこなす。


 魔獣は主に森に生息しているようで、適当に茂みをつつくと猪型や兎型、犬型の魔獣が出てくることがある。


 普通の獣と魔獣の大きな違いは体内の魔力の量といわれている。見た目は同じでも魔獣の方が凶暴性が高く、何もしなくても襲ってくることがあるため、見つけたら即討伐するのが望ましい。


「お、魔獣の兎が普通の兎相手にハーレム築いてるな。」


 兎魔獣を討伐した後、他に何かないかと茂みをあさっていたら複数の兎が逃げて行った。まさに脱兎のごとくとはこのことかとエルドは思う。


 エルドは他の魔力の量を認知しにくい。だが魔獣か獣かは見た目で分かる時がある。


 前述したとおり出会ったときに好戦的であればほぼ魔獣だ。それ以外に体の一部に角が生えてたり牙が長かったり、体毛が系統魔法の色に染まっているなどの変化がある。


 体毛に関していえば、そういう種類もいるため一概に言えないところもあるために確認するときは魔力量を確認して魔獣かどうかを見極めることが推奨されている。


 魔獣だと思って討伐完了の報告に行ったら、普通の獣だったというのもよくある話らしい。


 エルドが冒険者を再開して2週間がたったころ、いつも目にしている依頼とは違う依頼が目に入った。


「これは…」


 エルドは依頼の詳細を確認する。


「あ、それですか。昨日緊急で入ってきたものなんですけど、なんでも昔魔剣が封印されていた場所で何かが起きているようだから調査してほしいとのことです。」


 ソフィアはエルドが魔剣を持っていることは知らない。


「…それじゃあ僕が受けるよ。依頼料もなかなかいいし。」


「あ、ありがとうございます。…あ、この依頼が達成できたらポイントがたまってDランクに昇格できますよ。」


 依頼は冒険者のランクによってS~Fに振り分けられているが、同じランクの依頼でも採取系と討伐系では難易度が違ってくる。


 昔は同じランクの依頼の数でランクの昇格を認めていたが、難易度が簡単なものばかりやっている冒険者が難しいものもこなしている冒険者と同じ依頼の数をこなしてランクが上がるのが不公平だという意見から、難易度によってポイントを与えるポイント制に切り替えられた。


「お、それなら気合い入れてやらないとな。」


 エルドは笑いながら依頼契約を結ぶ。


「それではお気をつけて。」


 エルドはギルドを出ると町を出る。目的地の近くまで行くという馬車に相乗りすることが出来たためにそこに行くまで1日かかるところを半日で到着することが出来た。


「さて…何が起こりますかな。」


 エルドは目的地である洞窟の入り口の前に立ち中をのぞく。中は暗く奥まで見えない。


「まあそうだよな。『ライト』」


 魔法の明かりを発動させ洞窟に足を入れる。


 魔剣を入手したのは6年前。冒険者駆け出しのころだった。その時は仲間が一人いたため駆け出しには少し難しいと言われていたこの洞窟も難なく進むことが出来た。


 今はブランクがあるとはいえ駆け出しのころとは違い、一人でも洞窟の探索は問題なく行える。記憶を探りながら洞窟を探索するが、特に変わったようなところは見受けられなかった。


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