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107.五大家会議 2

「かっかっか!なるほどなるほど!」


 声をあげて笑うワンダル。


「自分の発言権を確立させるために未成年の弟を持ち出したか。なんだかんだ言って当主の座はあきらめきれないんだね~、エルド坊?」


 エルドは腕を組み返事をしない。


「おほん!毎度毎度喧嘩から始めるのはやめてほしいものだね。」


 バルザが咳ばらいをしながら言う。


「それでは本日の議題だが、先日各家に禁呪をつづった書物を回収に向かったのは覚えているだろう。」


 バルザが見渡すとみんな頷く。


「実は大教会でその写本が見つかった。」


 それを聞いてみんなどよめく。


「しかし写本にあったのはすべての家で保管してある一番危険なもののみだったためにどこの家から漏れたのかは一切不明だ。それで今回、心当たりがあるのなら正直に告白してほしいと思いこの場を設けた。」


「陛下、たとえ心当たりがあっても答えるとは思えないんですが?」


 ルリアがおずおずと聞く。


「ああ。それはそうだろう。ただこの場にいるものが流出させたとは思ってない。もしかしたらずっと昔に流れたものかもしれない。だからこの場で告白すれば不問にすると誓おう。」


 バルザの宣言にまたどよめきが走る。誰もが周囲を見て長い沈黙が続く。


「だ~から言ったでしょう?こんなやり方で告白するところなんかないって。たとえ陛下に不問にされてもやった家は永遠に五大家でも下の地位に落ちるんだから自分がやってなくても答えないって。」


 エルドがバルザをバカにしたように言う。


「お、おいエルド…陛下にそんな口の利き方は…」


 ルリアがたしなめる。


「そうだなエルド殿。はぁ…それじゃあ…君の見たものを話してほしい。」


 エルドはテーブルから足を降ろして座りなおす。


「さて、さっきの女神裁判でマリーが無罪と宣言された時、明らかに表情を崩したのが3人いた。僕はあんたらの反対側にいたからよく見れたよ。」


「ほほぉ。これは面白いね。」


 言葉をはさんだのはブライナスだ。この男はいつも茶化すように口をはさむ。


「まずはルリアにいさん。」


 エルドはルリアを指さしながら言う。


「え?お、おいエルド!?俺は別に…」


「あ~、大丈夫大丈夫。知っての通りルリアにいさんはいつもこんな感じだからね。有罪だと思ってたのがひっくり返って驚いただけでしょ。まったく。30過ぎてんだからもう少し堂々としてほしいものだよ。」


「む…」


 ルリアは顔をしかめて黙る。


「それより残りの二人だね。ワンダル婆さん、キュートルのおっさん、あんたらだ。」


 エルドは表情を変えずに言う。


「聞かせてほしいね。なんでマリーが無罪になった時に表情を崩したのか。」


「なんだそんなことか。なに、私も有罪だと思ってたから無罪になって驚いただけさ。それに女神様を生きて拝めるだなんて感動してたからね。」


「お、俺だって同じだ…」


 ワンダルはさも当然と答え、キュートルもそれに続く。


「なるほどね。それじゃあこの場で一番堂々としてるのはブライ爺さんだけか。」


 エルドはやり取りを笑顔で聞いているブライナスを見て言う。


「あははは。まあそうかもね。ワンダルねえさんは意外と小心者だから。それにしてもエルド、ここまで大々的に集まってこの程度ってのはどうなんだ?これだとただお前が当主の権限を悪用したように見えるが?」


「いや、今回の召集は私が…」


 ブライナスの問いにバルザが答えようとする。


「陛下、今回の容疑者であるマリーとの関係性を考えればエルドが裏で動いてたのは明白。そもそも大教会を壊したのもエルドって話じゃないですか。」


 それを聞いてバルザは黙る。


「まあ、自分の女を守ろうとする姿勢は評価できるから個人的には問題にしたくはないが、五大家の当主相手にここまでの事をしたんだ、これ以上何もありませんじゃそれで終わりですってわけにはいかないよな?」


 ブライナスがエルドを見据える。エルドは黙って見つめ返した。


「ひっひっひ…なんだ、これ以上何もないのか?あ~本当にファニアール家はこれだから…」


 ワンダルが小ばかにしたように言うとエルドが笑っているのに気が付いた。

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