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106.五大家会議 1

 女神裁判が終わったのち、五大家の面々は別室に通された。国王の命により緊急五大家会議が行われるためだ。


 五大家の面々と言っても今そこにいるのはファニアール家を除いた四家。ファニアール家当主サンドレアは裁判の後どこかへ向かってそれから姿を見せない。


 ガン!と音がしたのでそちらを見ると出入り口に誰かが立っているのが見えた。


「ファニアール家当主代行エルド・ファニアールだ。入らせてもらう。」


 普段とは違う雰囲気を纏ったエルドが上体をそらし、両手をポケットに入れて歩いてくる。おそらく扉も蹴って開けたのだろう。


「おやおや、これはこれは先代ファニアール家当主様じゃないですか。代行という事は義妹殿は体調不良でも?」


 声をかけてきたのはドライシア家領主ブライナスだ。50歳を過ぎてなお毎日の筋力トレーニングを欠かせない筋骨隆々の男だ。


 エルドはブライナスの言葉に返事をせず空いていた席に座り、テーブルに足を乗せる。


「お、おいエルド…代行で来るのはともかくその態度は…」


 エルドの隣に座っていたミルリシア家当主ルリアが注意してくる。エルドは意に介した様子もなくルリアを見る。


「やあルリアにいさん。別にいつもの事だから誰も気にしないでしょ。」


 そう言ってエルドは不敵に笑う。


「おやおや、跳ねっ返りのエルド坊はまだファニアール家が五大家筆頭と勘違いしてるのかねぇ。」


 そう言うのはエルドの対面に座る五大家の最年長かつ唯一の女性、ソライス家当主ワンダルだ。


「あははワンダル婆さん。まだ現役なんだ。うちの爺さんの代からの長老なんだからそろそろ後進に譲った方がいいんじゃない?」


 エルドは気にした様子もなく言葉を返す。その言葉に怒りを覚えたのはワンダルではなくルリアの反対隣りにいたレドモンド家当主キュートルだ。


 キュートルは立ち上がりエルドの胸ぐらをつかみ持ち上げる。エルドが持ち上げられるのをルリアはどうすればいいのかと焦りながら見ている。


「てめえの父親もそうだがファニアール家は礼儀ってモノがなってないな。てめえが当主を降ろされた時点で純血の五大家は消えた。序列もそれに伴い変更されたんだよ。」


 ルリアがアワアワしている中、エルドは面倒くさそうに耳をかく。


「そもそも五大家に序列なんてないでしょ。あんたらが勝手に純血の方が上だってへりくだってただけじゃん。」


「このクソガキ!」


 キュートルが殴ろうとするのをワンダルが老婆とは思えない声量で止める。


「やめときな、キュートル坊。エルド坊はあんたを挑発して殴らせようって魂胆さ。」


 それを聞いてキュートルはエルドを放す。持ち上げられた状態で突然放されたエルドは椅子に腰を打ち付けてしまう。


「いった~…相変わらず力でしか語れない人だな~。当主より冒険者の方が向いてるよ。」


 エルドは腰をさすりながら言う。


「ひっひっひ…まあそうかもね。しかしエルド坊、あんたらファニアール家は序列は無いって考えてたかもしれないけど、どんなものにも上下関係は必要さ。これまでは純血の家に従ってたがこれからは違う。あんたも義理の妹の代行なんだからそれに従ってもらうよ。」


 ワンダルの目が鋭く光り、エルドを見る。


「ワンダル。相変わらず婆さんとは思えない声だな。」


 扉が開き、バルザとイニシアが入ってくる。


「これは陛下。それにイニシア殿下。それじゃあこれから五大家会議を始めて大丈夫そうですね。」


 ワンダルが立ち上がり宣誓する。


「これより五大家会議を始める!まずはこの場での争いの意思がないという事の証明のためにお互いの魔封じの腕輪を確認する!」


 そう言ってバルザ、イニシアを含め各々魔封じの腕輪をつけている腕を上げる。みんな片腕だがエルドは両腕を上げた。


「よし、下げよ。」


「ち、相変わらず桁違いな魔力量のようだな。」


 ワンダルの声にかぶせるようにキュートルが悪態をつく。 


「そう?これくらい僕の周りじゃ結構いるけど。赫鎚鬼マリー、聖女モイラ、第五王子アルデリック…あ、一年後輩の子も両方に色が出てたな。今何してるんだろ。」


 エルドは名前を上げながら指折り数える。


「将来性も考えれば僕の弟妹もそうかな。」


「それだと家の末の弟もそうなりそうだな。」


 そう答えたのはイニシアだ。


「いやはや、我が国の未来は明るいね~。」


 ブライナスが茶化したように言う。


「そうだな。さて、まず今回集まってもらった件を言う前に一つ訂正しないといけないことがある。」


 バルザが口を開いた。


「ファニアール家当主代行で来てもらっているエルド殿だが、彼は義妹サンドレア殿の代行ではない。」


 それを聞いてどよめきが走る。


「ちょ、ちょっと待ってください!ファニアール家の残りの子供は未成年だ!当主には…」


 ルリアが慌てたように言う。


「ああ、普通なら無理だ。しかしサンドレア殿が体調不良を訴え当主を退任した。そのため特例措置ではあるが未成年のジェイロット殿が領主となっている。」


 バルザが淡々と答える。


「待て待て待て!たしかエルドの父親の弟がいたはずだ!普通はそっちに話が行くんじゃ…」


 キュートルが吠える。


「それも当主法によれば子供に当主が受け継がれた場合、先代兄弟の継承権は破棄されるとなっている。つまりエルドが当主を受け継いだ時点で叔父の継承権は無くなってる。ちなみにそれに同意した書類はエルドが当主になる時点で提出されているから問題ない。」


 イニシアが言葉をつづけた。


「そういう事。つまり現在ファニアール家は直系の子供が当主。あんたらの理論なら純血が一番偉いんだよね?」


 エルドは改めてテーブルに足を乗せて言う。

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