1.追放される領主
初投稿です。第一部は書き終えているので毎日投稿します。
「お義兄様には領地経営は任せておけません!!」
ファニアール家の食堂で食後のティータイムを楽しんでいるときに長女、サンドレアは桃色の髪を揺らし義兄で現領主のエルドに向かって宣言した。
それを言われたエルドはカップを口に運び、ゆっくりと紅茶を飲む。
「ふむ、また突然だなサンドレア。僕は特に問題を起こしていないと思うが、どういった理由でふさわしくないというんだい?」
エルドはカップをテーブルに置き、色の違う両目でサンドレアを見る。
「何も問題を起こしてない!?お義兄様が領主になってから収入は激減、これから増税も視野に入れなければいけないとご自分でおっしゃっていたではないですか!
これはお義兄様の人徳がないために領民が他領地へと流出してしまったことが原因です!!」
サンドレアはテーブルをたたきながら言う。
エルドは近くのメイドに紅茶のお代わりをもらいながらため息をつく。
「サンドレア、領民の変動は僕が領主になる前から起こっていたことだし、逆に他領地から入ってくる人もいる。
それに増税はあくまでもしもの時の笑い話だ。今の領民数でも増税どころか減税したって問題ないくらいだ。
帳簿の管理をさせているんだからそれくらいわかるだろう。」
エルドは新たに注がれた紅茶を飲む。
「いいえ!これはお義兄様が領主なのが問題なのです!早々に辞任してください!!」
エルドは再びため息をつく。義理とはいえ我が妹ながら頭の悪い理論で自分が辞任すると思っているのかと怒鳴りつけたくなる。
「お、お姉さま…さすがにそれは言いがかりというものです。」
「そ、そうです…エルド兄さまは問題なくやっていると思います。」
エルドの異母弟妹のミレニアとジェイロットもサンドレアに抗議する。
「まだ中央学院に入学していないお子様はおだまりなさい!!」
しかし異父弟妹の言葉をサンドレアは一蹴する。
「ふ~…サンドレア、たとえ僕に問題があったとしてもそう簡単に領主は辞任できないよ。
いくつかの理由があるが、一番の理由は僕が辞めても後を継げる人間がいないこと…」
「いやいやお義兄さん、ところがここに、王命書があるから問題ないんですよ。」
エルドの言葉を遮ったのはサンドレアの夫、ルーファスであった。
「この王命書にはお義兄さんを退任させて、新たにサンドレアが領主になるように書かれているんですよ。」
ルーファスはエルドに王命書を投げて渡す。
エルドは行儀が悪いなと思いながら投げられた王命書を受け止め、内容を確認する。
「中を見てもらえれば本物だってわかるでしょ?ちゃんと国王の署名と魔力印も押してあるから、破こうが燃やそうが意味ないですからね。」
エルドは王命書をテーブルに置き、何度目になるのかわからなくなったため息をつく。
「ああそうかい。それじゃあ僕は領主を辞めるよ。それでも引継ぎがあるから一か月くらいは…」
「いいえ!お義兄様の仕事はもうすべて把握しています!お義兄様はこの書類にサインして即刻この家から出て行ってください!!」
サンドレアはエルドの前に二枚の紙を差し出す。
一枚は仕事の引継ぎが問題なく引き継がれたという証明書類。サンドレアのサインがすでに入っている。
もう一枚は領主辞任の承諾書類だった。
「…これでいいのか?」
エルドは無言で二枚の紙にサインをする。二枚の紙は光り、エルドとサンドリアがそれぞれつけているネックレスの宝石部分に入っていった。
「これで問題ありません。荷物の整理もあるでしょうから、三日以内に出て行ってくださいませ。」
その時サンドレアがエルドに向けた笑顔は、これまで一緒に住んでいた中で見たことのないほど悪意のこもった笑顔であった。