4.お母様
あまり読まなくても本編には影響しないような気がしますが、読んでいただけると幸いです!
奥に続く部屋に入った瞬間目に入ったのは大きな額縁。その中に描かれている真っ直ぐに伸びる髪の綺麗な女性。これがレティシアナのお母さんなんだろうか。
儚げに微笑むその様子は、まるで今にも消えてしまいそうで、見ているだけでギュッと胸がいたんだ。
少し不安になってお父様の方を見ると、私なんかより泣きそうな顔でお母様の方を見つめるから何も言えなくなってしまった。愛してたんだなあ。
「......お前のお母様はこの国に殺された。ある人の記憶を持っているというだけで」
お父様の話を要約するとこうだ。
お母様は、女神の使徒、ロメリアの生まれ変わりで記憶を持っていたらしい。それを打ち明けたのはお父様と、お父様の弟だけ。お母様はロメリアの生まれ変わりだと知って、みんなから気味悪がられると思たから、信用した人にしか告げなかったようだ。病弱でなかなか社交の場に出られなかったお母様にとっては唯一の友人と言っていいのが二人だけだったから、必然的にその二人へ秘密を打ち明けた。
お父様は墓場までその秘密を持っていくことを決意し、弟も一旦は決意したが、すぐに裏切った。理由はお父様とお母様が恋仲になったから。密かにお母様に抱いていた恋心を兄に打ち砕かれて、魔が差してしまった。......不幸になればいいと思った、らしい。本人的にはあそこの夫婦は前世がどうのこうのという話を信じるおかしな人だと思われて、疎外感を感じさせる程度のことが目的だったらしい。だが現実は残酷で、最悪の場合が実現してしまった。
ロメリアの生まれ変わり=私達人間を憎んでいるという認識が一般的な現在の教会関係者は、お母様におそれをなして、なんとか排除できないか考えた。必死でお母様が、ロメリアが人間を憎んで殺そうとしていることをひろめた。その教会関係者の活動の最中に生まれたのがこの私。レティシアナだった。
教会関係者はこれがチャンスとばかりに私を人質にとって、「あなたが私達に首を差し出さなかったら、この娘を神のもとへ送ってしまいましょう。ロメリアよ、あなたの時代は終わったのだ」と言い放った。血走った教皇の目を見て本気でやりかねないと思ったお母様はおとなしく命を差し出すことにした。目の前で首を掻っ切るという方法によって。
お父様は随分焦ったらしい。何も知らされずに教会まで連れてこられたと思ったら最愛の妻が自殺を図ったのだから。
「全ては人間たちの浅はかな思考が悪い。少し考えればわかっただろう。前世がロメリアだと知っていながら、人間を滅ぼしていないんだから、彼女は悪くないって、わかった、だろう......?」
感極まったお父様の目に涙が浮かぶ。私の存在が、そう思ってしまうといたたまれなくて、顔があげられない。なぜ私にお母様のことを隠したのか、わかった気がする。
「お父様。お母様は、私がいなければ、生きていました。お父様は、私が嫌い、ですか」
後半は零れ落ちそうになる涙をこらえていたからひどく情けない声になっていたかもしれない。
「少し、思ったよ。レティがもう少し遅く生まれていたら。私が、もう少し早くレーラに出会っていたら。弟がレーラに出会わなかったら。でもね、私は一回もレティが生まれてこなければ、弟が生まれてこなければ、と思ったことはないよ」
「......」
ファンディスクのレティシアナの過去編にも描かれなかったお母様の秘密。それを知った私はますますレティシアナという悪役令嬢が好きになった。辛いことを全て飲み込んで、毅然とした態度で前を向いていたこと。
素敵な女性じゃないか。私もそうなれるように頑張ろう。
「お父様、私、お母様に恥じない淑女になります。少し早い誕生日プレゼント、ありがとうございます」
精一杯の笑顔で見たお父様の顔は、また少し、歪んでいたかもしれない。
私は頬を流れる一粒の光には気づかないふりをして部屋を出ていった。
次話投稿予定日:6月14日〜15日の間
ふわっふわしていてすみませんm(_ _)m
テスト期間が6月10日〜14日までなのでそれまで更新ストップという形を取らせていただきます。




