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3.次の仕事は(side:暗殺者)

「やあ、おじさん。久しぶり。なんか食い物をくれ」


木でできた扉が甲高い音をたてながらゆっくりと開く。入ってきたのはフードを被った男だ。店の中にいるのは店主ひとり。


「おお、なんだ。やっと仕事が終わったのか。依頼内容は隣国の王様だったんだろ?結構時間かかったな。さては、腕がなまったか?」


フードを深く被った男にはなしかけられた立派な髭を蓄えたガタイのいい男、もとい店主は、からかうような口振りでフードの男に問いかけた。店主が料理の準備をし始めた時丁度に、男がフードに手をかけ、そして脱いだ。

現れたのは白髪に近い銀髪で、鮮やかな黄緑色をした瞳が特徴的な童顔のイケメンだ。彼は荷物を机の上に乱雑に置くと、店主の近くの席に腰かける。


「腕がなまったわけじゃない。あいつ、いつも女を侍らせてるからなかなか近づけなかったんだ。......女は気配に敏感だからな。迂闊に近づくと痛い目を見る」


「ふーん。そういうもんか。......ほれ、できたぞ。今回も出世払いか?というかお前の業界に出世ってあるもんなのか?」


美味しそうな料理が目の前に出される。俺の業界での出世払いか......。それは、


「この国の王様から依頼を出される、とかか?」


王様まで俺たちをあてにし始めたらこの世界は終わるだろう。なんせ俺の仕事は暗殺。血で血を洗うような世界の始まりだ。


自嘲気味に笑い料理を口に運ぶ。おじさんには貸しがあるから特に払わなくても何も言ってこないだろう。形だけ、言ってるだけだ。


「ははっ、王様までお前を頼りにしたら終わりだろ。......次も仕事が入ってるのか?」


荷物からはみ出す1枚の上質な紙。たったそれだけから判断する観察眼はさすが長年俺と一緒にいるだけある。


紙を机の上に広げておじさんの顔を見る。おじさんは紙を食い入るように見ている。食器を拭く手を思わずとめてしまうくらい。そうだろうな。なんせ今回のターゲットは4歳の、もうすぐ5歳の少女。同じ年頃の娘を抱えるおじさんにはきっと辛い内容だ。

俺も最初みた時は疑ったよ。依頼したやつの正気を。ただ、仕事とあれば手を抜かないと決めている俺は気にしないように努めている。いざという時に刃が鈍らないように、な。


「この、レティシアナっていうのはいいとこのお嬢さんだが、一体なぜ?悪い噂は聞かない、罪のない少女を」


「知らない。詳しく事情は聞かないが暗黙の了解なんでね」


残りの料理を全て胃に流し込んで、次の仕事の計画を練る。......1番いいタイミングは誕生日会か。浮かれて警戒心が緩む。本人の警戒心はあまり心配していない。問題は警備だが、これも難なく突破できるだろう人数しかいないことがわかっている。まあ王女様とかじゃないからな。


「二週間後。次の仕事へ向かう。今回失敗したらやばいから匿ってくれ、おじさん」


人懐っこい笑顔。仕事用なのか、本心からなのか、自分でも分からない。でも、まあ、おじさんのことは信用してる。


仕方がないというような顔をしておじさんは言った。


「ああ、匿ってやるから、だから......」


―――――――――殺すな、って?


無理なお願いだ。この仕事をやり遂げることが殺ししかやって来てない俺の唯一生きる意味だから。むしろ殺ししかやってきていないからこその意味だと思う。それしかできない。それ以外できない。普通にのうのうと暮らす奴らとは違う。


「失敗しないように頑張るよ」


ひきつる顔を精一杯隠しながら、今日1番の笑みを見せつけてやる。


彼は、レティシアナとの出会いが大きく人生を変えることになるとは知らず、席を立ち、扉から出ていった。






次話更新予定日:6月7日(月)

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