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2.親バカですか

おとー様、いーれーて。なんて言える訳もなく、かと言って何を言っていいかわからず、私は扉に手をかけたまま固まった。押すのか引くのかそれすらも怪しい。力を入れた腕を一旦扉から離した。モーラの方を見ると、旦那様に会うことに緊張しているととられたのか、大丈夫ですよ〜、旦那様は怖くないですからねぇ〜。とあやしてくる。いや、4歳らしいからね、私の見た目年齢。子供扱いされるのは仕方ないとしても、モーラは私をバカにしすぎてないか。私が分からないのは、扉を開けたあとの挨拶の仕方よ!まさか小学生みたいに○年○組の誰々です!△△△の鍵を借りに来ました!って言う訳にも行かないわ。

うーむ、どうしようか。


「お嬢様、旦那様が首を長くしてお待ちです。......入っていらしては?」


痺れを切らしたのか中から黒髪美人の侍女さんが扉を開けて出てきた。あ、扉は内開きなんですね。なるほど。

覚悟を決めて小説や漫画、ゲームの知識で乗り切ろう。なんていえばいいんだろう?えっと、お父様、ご機嫌......よ、う?


私が部屋に入ってまず見たのは歪む視界、感じたのは謎の浮遊感。脇には大きな手の存在が。視界がクリアになった時、目に映ったのはデレデレな顔をしたイケメン。レティシアナと同じ少し落ち着いた金髪で、キリッとした顔はさぞ綺麗だろうな、という人形のような顔がいまぐにゃぐにゃと崩されている。親バカですか。


「レティ!私の可愛いレティシアナ!さあ、君の誕生祭には何がご所望かな?なんでもあげるよ。土地でも、お金でも、宝石でも、高価なドレスでも、お前の欲しい人でも。何がいい?」


私を殺しにかかる暗殺者様。


即答よこんなもの。でも、望んで手に入るものじゃないからね。待ちます。


で、このことだけで呼んだの?この親バカは。


「......それだけ?」


「え?」


しまった、声に出てしまっていた。いつまでも地につかない足(物理)で少し浮かれてたみたい(物理)。えー誕生日に何が欲しいか聞くだけならテキトーに何か言ってはやく部屋に帰ろうかなー。


私が浮いている足をバタバタさせて暗におろせと言っていると、この親バカ、いえ、お父様が不思議そうな顔をしてこちらを見つめる。ちなみに、あの黒髪侍女さんは部屋に入ってからも、存在感を消して扉の近くにたっている。目を僅かに見開いて、驚いている様子がみてとれる。ていうか、モーラはどこ。


「ねぇ、レティ。欲しいものは無いのかい?今ならずっと欲しいって言ってたドレスも買ってあげるよ?普段から買ってたら浪費癖がついちゃうからやめてたけど、誕生日だからね。特別だ」


ドレス......。ドレスって重くて苦しいんだよね。


「別にいらない。それより早く誕生日が来てくれるほうがいい」


はやく暗殺者様に会いたいんだもの。1回はレティシアナになったことに絶望しかけたけど、もうレティシアナの人生を楽しむことにしたんだから、一大イベントの暗殺者様に出会うを達成したい。


それまでにしておくことって何かあったかしら?ヒロインの動向も気になるし、モーラとも更に仲良くなっておきたいし、考えてみれば沢山あるかも。


「レティ......。お母様のことが知りたい、とかも無いのかい?」


恐る恐ると言った感じで聞いてくるお父様。その顔はまるで怒られるのを怖がっている子供のよう。


レティシアナのお母様?確かに作中には全くと言っていいほど出てこなかった。それは物語の進行上要らなかったからだと思ってたけど実は違ったりするの?お父様が必要以上に顔を強ばらせてるのも気になるし。


知りたい。


そういう意図を込めて私がお父様を見つめ返すと、私を下ろして、ついてきなさいと一言告げて奥の部屋へ入っていった。



次話更新予定日:6月6日㈰

よろしくお願いしますm(_ _)m

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