10.レティシアナの家
新しく出てくる名前が多いです。頑張ってください!
お嬢様がいない。それは由々しき事態、普通ならばそうなんでしょうけど。旦那様が秘密裏につけた隠密たちから居場所の報告を受けているから、私たち侍女は焦らない。すぐに下町娘の服に着替えて、連れて帰ってくるだけでいい。
「そう言ってるでしょう!誰が行くかで揉めてないですぐさま用意するのよ!」
侍女長は誰がレティシアナを迎えに行くかで揉めている侍女たちをいさめ、ある一点を指さした。
「え、私でいいのですか?」
そう困惑の声を上げたのは侍女歴のいちばん浅いモーラだ。周りの侍女たちも普通なら反発する者がいてもおかしくないのだが、モーラならばと納得するものばかりいる。
「モーラはお嬢様にいちばん懐かれているからね。決まったなら早く準備しておいで。そして、早くお嬢様に合わせてね」
茶目っ気のある笑顔でそういったのはモーラより少し年上のルルだ。肩を押されたモーラはなされるがままに歩いていき、扉を出る。そこからはなにかに気づいたかのようにハッとして走り出した。服を着替えると二階の窓から飛び降りる。
貴族社会のみんなは口を揃えて言う。「モーリスト家(レティシアナの家)はおかしい」と。侍女は戦闘もお手の物、庭師は小さな足音でも誰が来たかがわかる、シェフは毒の扱いに炊けている精鋭揃い。そして、娘には隠密をつけて行動を把握するという徹底ぶり。全ては国民が安心するために犠牲になったレティシアナの母、レーラを愛しているがために、犠牲にした国王などを憎む気持ちからおこっているのだろう。
せめて娘だけでも殺させまい。そんな決意が伝わってくる。実際、娘も危険ではないかという会議がなんどもあったのだ。今すぐ殺してしまえという保身に走る貴族と、子供に罪はないという綺麗事をほざく貴族。そのどちらもレティシアナの父、シアンの怒声で黙った。
「レティにだって、レーラにだって、罪はない!!!!なにかされたのか!レーラは何もしていないだろう!!この会議は開かれること自体が間違っている。これ以上このくだらない会議をするならば、それ相応の対応をする。俺にとってはこの国を滅ぼすことなんて容易い。その事を覚えておけ」
普段、一人称が私である父の俺という声があまりにも怒っていたから、貴族たちはみんな怖がって、レーラのことは一切口に出さなくなった。レティシアナのことも避け、息子の婚約者にしようなどという家は全くなかった。
なぜなら、シアンは隣国からレーラの家に嫁いだ王族で、弱小国であるこの国は本当に滅ぼされなかったからである。ちなみにレーラの家はそこそこ私財を持っている子爵だ。ただ、シアンと結婚する際に、馬車の事故にあって両親は死亡している。そのために、レーラを守る人がシアンしかいなかった。
レーラがしんでもなお、憎きこの国に住んでいるのはレーラの家を無くしたくなかったからだ。レーラがいたという記憶を子孫にまで伝えたい。というシアンの思いで、この国にとどまっている。だが、貴族社会に関わるつもりはなく、家の敷地を周りと隔絶した場所にしようと身分関係なく精鋭を揃えた。中には元奴隷もいる。
モーラはシアン直々に選んだ優秀な侍女だ。2階から飛び降りるなんて余裕で、なんなら3階でも飛び降りられる。
そんな人材がゴロゴロいるから、モーラが飛び降りてもはしたないと怒られることがない。のびのびと行動できるいい職場だ。
「さて、お嬢様は確か、犯罪者組織の連中が度々出入りするという物騒な酒場にいるのよね。本当に、注意したそばから危ないとこに近づいて。急がないと」
人が徐々に増えていく。先程までは全力で走っても誰にもみられなかった。人が増えるにつれて徐々にスピードを落としていった。今では歩くスピードで酒場に向かっている。
途中何度か人とぶつかったが、それが日常茶飯事なこの街では誰からも責められることは無かった。
「ヴェールってモテるでしょう?こんなにも顔が綺麗だったら誰も放っておかないわ」
まもなく、聞きなれたお嬢様の声が聞こえた。誰かに話しかけているようだ。名前からは性別が判断できない。
少し駆け足で店の扉を開く。思ったより大きくなった扉の音にお嬢様の注意がこちらにむく。顔の表情の移り変わりといったらこれまでにないくらい凄かった。
近くにいる人物の顔を見ると、ものすごい美少女がいる。いや、まて、美少女か?
「あ、え、モーラ、その、勝手に出ていったことは謝るわ。だから、その、怒らないで!」
「お嬢様、その男から離れてください」
「え?おじさんは悪い人じゃ......」
モーラはどこに仕込んでいたのか、マチェットを取り出すと男の喉に突きつけた。
「あなたは昨夜、無事だったようですが、それは温情ですよ?お嬢様を最終的には殺さなかった、という事実で見逃されただけです。2度目の接触は許した覚えがありません。今すぐ、離れてください」
モーラがマチェットを突きつけている相手は、ヴェルデと呼ばれた美少女だった。
「え、男って。え?」
未だにレティシアナは状況が呑み込めずにいた。
次話更新予定日:6月28日(月)に変更させてください
学校行事が思ってたよりハードで書く時間があまり取れず。
時間作るの下手なのですみませんスミマセン(>_<)




