9.
すみません。眠いので短いです
「で、友達になりたいってなんでだよ」
少女は相変わらず顔から想像もできないぶっきらぼうな口調で、言葉を紡ぐ。その顔には呆れがにじみでていて、諦めも見受けられる。
「そのままの意味よ。じゃあまず、お友達の証として名前を教えてちょうだい。私も教えるから。私の名前は」
「ちょっと待て」
早速、と思って名前を言おうとすると少女から止められた。私がキョトンとした顔で彼女の瞳を見つめると、おじさんがさっきお盆で殴られて冷やしていた患部をさすりながら一枚の紙に文字を書いた。
「ヴェ、ルデ?ヴェルデ......。名前まで素敵ね!私はレティシアナよ。お父様からはレティって呼ばれてるわ!」
「聞いてないだろ。おじさんなんで教えるの。おれ......わ、私は許可してない」
「いいだろ。減るもんじゃねぇし。お前もこんなに可愛いことお友達になれて嬉しいんじゃねえの」
「もう一発いっとくか?あーあ、どんどんお盆が壊れていくなあ。あっははは」
「それだけは勘弁してくれ」
笑ってるんだけど目が笑ってないわ。
おじさんはお盆に伸びかけたヴェルデの右手を払うとそのままお盆を持って客の対応に向かった。
ヴェルデ
私は真っ白な紙に少し粗い字で書かれている文字列をなぞる。見た目が暗殺者様に似ているからか、まるで暗殺者様の名前を知ったかのような錯覚に陥る。ヴェルデって中性的な名前だからもしかすると、の奇跡も有り得るだろう。
「ヴェルデね。なんて呼ぼうかしら。お友達にはあだ名をつけるものでしょう?そうね、ヴェールはどう?だめ?」
「......勝手に友達認定されてる。まあいいけど。ヴェールって初めて言われたよ」
「私にもあだ名をつけて!レティ以外のあだ名がいいの」
暗殺者様に重ねてしまうから、2人だけの呼び名が欲しかった。その気持ちは、ヴェルデ自身を見ていないようで失礼に当たるだろうけど、この気持ちから本当にヴェルデ自身を知りたいと思えるようにしたい。
少女は真面目な顔をして考えこんでいる。友達になりたくなさそうだったのに、変なところで誠実な人だわ。
しばらく悩んだ後、少女は恐る恐ると言った感じで口を開いた。
「シア、は?そのまんますぎるか」
「いい。シアがいい。ぜひ、そう呼んで!」
少し美少女と距離が縮まったかのような気がして、はしゃいでいる私は、黙って屋敷を抜け出して街へ降りてきていることをすっかり忘れていた。
「お嬢様、さすがに私、怒りますよ?」
モーラは片手にコップを持ったまま怒りをあらわにして部屋の中で立ちつくしていた。
次話更新予定日:6月24日(木)




