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第7話 最強と三人の弟子

 戦争が終結して建物が跡形も無く消えた町を、ルチアーノは何をするでも無くただ静かに眺めていた。

 すると、突如背後に何かが激突して地面が大きく揺れる。


「来たか、、、さあて、今日の一番乗りは誰かな?」


 ルチアーノが振り返ると其処には真っ黒で光沢の有る物質で形作られたキメラが立っており、地面は先ほどの衝撃でクレータが出来ていた。

 そして数秒見詰めているとキメラにヒビが入って崩壊し、中から色白で黒いマントを纏った男が表れてルチアーノに近づき跪く。


「無事任務を遂行し、134区の防衛と敵の撃退を達成しました」


「お疲れ、オーウェン。今回もお前が一番だな」


 ルチアーノは跪くオーウェンという男に労いの言葉を掛け、頭を上げて立ち上がる様ジェスチャーで促す。

 オーウェンがそのジェスチャーに従い立ち上がると、目線はルチアーノを超えてかなりの長身である事が分かった。顔も中々の美青年でモデルの様だ。


「お前も少しは加減しろよな。何時もお前が一番乗りだったら酒場での賭けが面白く無くなるだろ?大穴狙いでアンベルトに賭けてる奴の気持ちも考えろ」


「はは、此れでも少し手を抜いてゆっくりと飛んできたのですが、、、サボるというのは全力を尽くす事の何倍も難しくて」


「うわ~、嫌味な奴ぅ~!! 二人の前で同じこと言うなよ? あいつらにも最高幹部のプライドってヤツが有るんだからさ」


「はい! 温かく迎えてやります!!」


「だめだ、何言っても嫌味に感じる」


 ルチアーノとオーウェンが他愛もない会話をしていると、再び二人の前に人が落下してきた。


「一番ッ!! 今回こそ吾輩が一番であろう?? ハハ、久しぶりにオーウェンの屈辱に歪む顔が拝めると思うと胸が弾むわ!!」


 衝突によって巻き上がった土煙の中から野太い声が響き、中から銀髪銀髭で筋肉粒々な職業軍人的見た目の男が出てきた。


「お疲れディオン、二番目の到着おめでとう!! いや~二番目に到着できるなんてお前はすごい奴だよ。たとえオーウェンには敵わないとしても、お前が凄い奴って事に変わりはッ、、、」


「ボス、貴方が一番性格悪くないですか?」


 自信満々の表情で現れたディオンを必要以上に痛めつけるルチアーノの言葉をオーウェンが遮る。


「わ、吾輩が二番であるますかボス? おいオーウェン!! 吾輩に負けるのがそんなに嫌か!! 偶には1位を譲ってッ友人に花を持たせてやろうとは思わんのか!!」


 ディオンの表情は一瞬で真っ赤に染まり、羞恥心を隠す様にオーウェンに向かって詰め寄る。


「いや、私は別に任務を終える速度自体が能力を図る指標に成るとは考えないし、順位に大して興味は、、、」


「1位を目指さなくても君達程度は問題に成らないってさ」

 

オーウェンの釈明にルチアーノが要らない要約を加えた。


「何だと貴様ァ!! 吾輩を愚弄するつもりか! 吾輩は、吾輩の能力は多数を圧倒するのに少し向かないからこの順位に成っているだけだ!! 一対一ならば貴様にだって・・・!!」


「ちょッ! ボスのせいで話が変な方向に進んだじゃないですか!!」


 オーウェンはディオンに掴み上げられながらルチアーノを非難していたが、ルチアーノはその姿をニヤニヤしながら見詰めるだけで助け舟を出さなかった。


 その時、ようやく三人目が到着して前の二人を遥かに凌する土煙を上げながら着地した。


「よしッ!! 今日は行けただろ!! 俺が今日は一番乗りだッ、、、」


「んな訳ねえだろ。お前は今回も最下位だ、バーカッ」


「何だとッ!!」


 三人目のレヴィアスファミリー最高幹部、『アルベルト』が到着した。

 アルベルトは何となく品が有る二人と違って、如何にもマフィアっぽい悪人面をしており口調も荒々しい。


「きょ、今日も俺が最下位なのか?」


 アンベルトが煙の中から顔を出てきて辺りを見回すと、ばつが悪そうに笑うオーウェンとドヤ顔を浮かべるディオンが目に入った。

 その瞬間顔が真っ赤に染まる。


「ふんッ! 到着した順番なんかで俺の能力が図れてたまるか。そもそも俺の能力は多数を相手にするのがほんの少し苦手なんだよ!!」


「流石最下位、二人の言い訳を見事に融合させたE難度の言い訳テクニックを披露」


「うっさいですよボス!! 其れに俺はこんな競争初めから興味ないッ、、、」


「でもお前さっき、『今日は俺が一番乗りだッ、、、』と言っていたではないか??」


「はあ? 聞き間違いだろぉ、、、?」


 アンベルトは恥ずかしがったり、強がったり、とぼけたり様々な表情を見せた。

 裏社会で汚れ仕事を何年も続ける中で表情のレパートリーが減っていない事が、この男の精神の屈強さを顕著に表している。


「ふっ、最下位の言い訳は無様であるな」


「何だとこのチョビ髭野郎ッ!! あんまり嘗めた口きいてるとそのクソダサいチョビ髭毟り取るぞ!!」


「わ、吾輩の髭がダサいだとッ!! 訂正しろこのチンピラ風情が!!」


 二人の怒りが一瞬で爆発し、掴み合いの喧嘩が始まった。

 この二人は幹部とは思えない程沸点が低く、二人が喧嘩してオーウェンが止めに入るのがいつもの流れだ。


「二人とも下らない喧嘩は辞めるんだッ!! 僕たちは人の上に立つ立場だろッこの程度で我を忘れてどうする? それに、二位三位だって誇るべき順位さ。二位と三位が下に居るから一位は輝き、人に賞賛されるんだ。比較対象が居るから勝者が輝くんだぞ!!」


 オーウェンの言葉に二人の動きが固まる。


「何か、今の言葉ムカつかないか?」


「ウム、吾輩に対する強い侮蔑を感じたのである!! 断固としてこの屈辱の報いるを受けさせなくては成らない!!」


「手ぇ貸すぜ、チョビ髭、、、」


 アンベルトとディオンがゆっくりと背後に顔を向けた。


「な、なんだよ二人とも急に静かに成って、、、何で私を見るんだ!!」


 オーウェンは二人の表情に何か嫌な物を感じて後退る。

 しかし逃がすまいと二人は彼が後退る倍の速度で擦り寄って距離を一気に詰める。


「吾輩思いついたのである。この男を消せば吾輩が確実に一位に成れるという事に、、、貴様の理論で言うのであれば、一位の貴様こそ死んで下の者の順位を上げ、幸福を与えるべきなのではないのか?」


「俺は上二人どっちが死んでも一個上がれるんだ。この際二人纏めて、、、死んでくれよッ!!」


 アルベルトとディオンがオーウェンに飛びつき、本格的な喧嘩が始まった。

 二人の喧嘩を止めに入ったオーウェンも巻き込まれて、結局三人仲良く喧嘩する事もいつもお決まりの流れである。


「うん、今日も平和。我が弟子ながら皆サルみたい」


 ルチアーノは朗らかな笑顔を向けて、自分のファミリーの最高幹部達、そして手塩に掛けて育てた自慢の弟子たちが戦争でも一切汚れていなかった衣服を泥塗れにする様子を眺めた。

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