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第11話 ボスの思惑

「・・・助かったよアンベルト、お前がわざと蹴りを受けてくれたお蔭でディーノ様の気持ちを紛らわせる事ができた」


「ああ、借りだから覚えとけよ」


 ルチアーノを置いて先に出た廊下の中ほどで、オーウェンが口を開きアンベルトに礼を言った。

 アンベルトも別に不満を抱いている様子も無く、素直にその礼を受け取る。

 どうやら蹴りが自分に飛んでくる事を理化したうえで、ディーノを悲しませず『強く成りたい』という話題を遠ざける為にわざと受けた様だ。


「しっかし、ボスは坊主をどうしたいのかね? 現実的にこのまま裏社会の情報を与えず、マフィアどころか裏社会に繋がりを持たせず育てるなんて不可能だろ」


「それは確かにそうであるな、、、仕方ない事とは言えディーノはルチアーノ・バラキアの息子として世界から狙われる存在。こうして安全な屋内に閉じ込めるか、我々の誰かが護衛しなくては生きていけないのであるからな~」


 会議室の前に到着した三人は、アンベルトの言葉に同意しながらディオンが開けた扉から室内に入る。

 そして綺麗な装飾と彫りが施された円卓に用意された椅子に座り、話を続ける


「加えてディーノ様の人相もどこから漏れているか分かったものじゃない。部下からも裏情報で懸賞金付きの写真が出回っていると聞いている、、、やはり普通に生きる事は厳しいだろう」


 ルチアーノはディーノに裏社会とは関係が無い平和で安全な場所で生きて欲しいと願っていた。

 しかしその願いが非常に困難で、現実味が無い話である事は誰の目にも明らかだ。


「やっぱり戦い方を教えて、裏社会を生きる術を与えるべきなんじゃないのか? 俺達と同等の実力に達せれば無名の暗殺者に殺られる心配も無いんだからよ」


「吾輩もそう思うのである。二代目もキラキラした目で強く成りたいと申しておった、本人が望んでいるのであれば教えても問題ないであろう?」


 アンベルトとディオンはディーノに戦い方と裏社会の知識を与える事に賛成している様だった。

 しかしオーウェンはそう簡単に結論を出そうとはしない。


「私は未だ時期尚早であると思う。先ほどの発言もマフィアの事を心から理解して発した言葉では無い、ヒーローと勘違いしているだけだ。戦場での我々を見てそれでも憧れられるとは限らないさ」


 恐らくディーノがマフィアを憧れている原因は、制限されてバラバラになった情報を彼の脳内で切り貼りした結果カッコイイ側面だけが残った為だろう。

 しかし現実にヒーローなど存在しない、マフィアの本質は遥か昔から悪であり薄汚く残忍な生き物なのだ。


「もしこのまま口車に乗せてマフィアの世界に入るのならば嫌でも汚れ仕事を行う必要が出てくる。望んでいない殺人、望んでいない破壊、望んでいない犯罪、、、それこそ本当の悲劇だろ? 私は最悪整形手術によって人相を変えてでも表社会に逃がすべきだと考えている」


「意外と過激なこと言うな、、、」


 確かにオーウェンの発言は過激に感じるかもしれない。

 しかし、ディーノがもし完全に裏社との繋がりを断ち切って生きていこうとするのなら、そのレベルの行動が必要に成ってくるだろう。


「・・・でも結局は坊主本人と父親のボスが決める事だ、俺達にできる事はその選択の先に幸せが待っている事を願う事だけ。其れよりも俺達は俺達の役目に意識を向けなくちゃな」


「そうであるな、、、今回の会議で何としてでもボスの真意を聞き出さなくては。受け身だけでは何も好転せぬわ」


 話題がディーノの将来から、ファミリーの方針に移った。


「俺は絶対に譲る気は無いからな、、、処罰されても構わないから遠征を認めさせてやるッ! じゃないと死んでいった奴らが余りにも報われねえ!!」


 アンベルトは強く拳を握り込む。

 その双眸には覚悟の炎がギラギラと輝いており、並大抵の言葉ではその意思を覆せそうに無い。


「アンベルト、お前が自分の考えを述べるのは構わないが余り感情的に成るなよ。此処は口論の場では無いんだ、互いに尊敬と礼儀を持ってッ、、、」


「此処まで来て自分を繕ってどうする!! 俺はボスの実力も知能もカリスマ性も認めているがッあの人は家族以外に冷淡過ぎる。俺が代わりに下の人間の気持ちをぶつけてやらねえと、、、此れは感情の問題なんだよ!」


 アンベルトはかなり熱く成っている様だ。

 彼の言いたい事は理解できる。しかし、感情に身を任せすぎてファミリーを二分する様な対立に発展しないかが心配であった。


「感情論だけでファミリーを守れない事は、あの人の背中を見てきた私達が一番理解している筈だ。時には感情を無視して長期的スパンに基づいた計画が必要なんだよ」


「だが、吾輩にはこの守り一辺倒な戦略が将来に繋がっているとはとても思えんな」


「ディオン、お前までッ」


 ディオンもアンベルトに触発されたのかボスの方針に対して本格的に反意を表し始めた。

 そろそろ危険な空気が漂い始める。


「お前ッ、まさかボスが信用できないとでも言う気か?!」


「ふんッ、それなりも説明が貰えたなら考えを改めるわい」


「おいディオン! お前何処から物を言ってッ、、、」


 その時、入口の扉が力強く開いた。

 そして最大最強のビッグファミリー『レヴィアスファミリー』のボスとしての覇気と、世界最強・生ける伝説としての威風を纏ったルチアーノが表れる。


「待たせたなガキども。さあ、会議を始めようか!!」


 今回もお読み頂きありがとうございます!!

 今日も無事、一日三話投稿が可能なので午後10時の投稿も読みに来て頂けると嬉しいです。


『『ブックマークと評価、そして感想を宜しくお願いします!!!!』』

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