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ハルジオン

作者: 瑠音

夜って不思議なもので、心地よくもあり感情を増幅させる効果もあると思うんです。俗に言う深夜テンションというものでしょうか。

深夜1時。こんな時間に解散できるのは一人暮らし大学生同士の強みだな。そんなことを考えながら彼の顔を見つめる私。

「…また来るね、ばいばい。」

彼は眠っている。疲れているのだろうか、その寝顔はいつもより無防備であどけない。

起こさないようにそっと上着を羽織り、靴を履く。普段上手く履けないオールスターのハイカットが今に限ってすんなり履けるのが、まるで帰るのを急かされているようで皮肉だ。


アパートの階段を降りきって数歩、ふと彼の部屋を仰ぎ見る。カーテン越しにこぼれる僅かな光ですら愛おしくなって、溢れだしそうになる感情をを必死で押えつけながら急ぎ足でその場をあとにする。


途中、24時間営業のコンビニに寄って蒸し鶏のサラダとミネラルウォーターを買った。あ、ドレッシング別売りか。でも家にあるからいいや。

静かな雰囲気と、少し濡れた草木の匂い。この季節の夜風はひんやりとしていて心地が良い。街灯も少ないこの道では、自分の足音と鶯や虫が鳴く声だけがBGMだ。

鳥は夜には眠っていると思っていた。きっと間違えて起きてしまったに違いない。


明日は休講が重なって全休だ。久しぶりにゆっくり眠って、3限帯に彼が目を覚ましているか連絡を取ろう。たしか明日は4限からって言ってた気がする。

2人とも気を抜いていると午後の授業すら寝過ごしてしまうようになった。規則正しく生活していた高校時代はどこへ行ってしまったのだろう。


そんなことを考えているうちとあっという間に自宅へ辿り着いてしまった。当たり前だ。彼と私の家とでは20分ほどの距離しかないのだから。

さて、切り替えてまたしばらくは1人での暮らしに慣れていくとしよう。そう自分を奮い立たせて、この感情に名前をつけてしまわないように無理矢理別のことを考える。


結局、シャワーを浴びた時に彼が首筋に残した赤いしるしを見つけてしまい、流水に紛れて泣いてしまったのはここだけの話。

ハルジオンの花言葉:「追想の愛」


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