3 後輩とショッピング
(。・~・。)ノ
「思ったより高くつくなぁ……」
ショッピングの前に、奏を連れて移動出来るようにしないといけなかったので車で子供用品の店に寄ってベビーカーとチャイルドシートを購入する。それが結構高くて、昔親がチャイルドシート買わなかった訳がなんとなく分かったのだった。
一通り奏の物は購入して、後部座席にチャイルドシートを固定してスヤスヤ寝てる奏を撫でてから運転席に乗り込むと、まだ少し暗い顔をしている後輩に苦笑して言った。
「最近は車の維持費も高いからね。少しカッコ悪いかもだけど軽で我慢してよ」
「え……あ、ち、違いますよ!そうじゃなくて……」
「そうじゃなくて?」
パタンとドアを静かに閉めてシートベルトをする。と、紗夜はポツリと言った。
「……なんか、私最低だなって思って……」
「そう?」
「はい……だって、先輩の好意に凄く甘えちゃってて……」
「そうかな?むしろ俺的にはここでブランド物欲しがらない紗夜に密かな大和撫子を感じてるよ」
まあ、実際問題有名ブランドを買ってあげるような金銭力は無いからね。いや、出来なくもないけど……貯金が一瞬で消えるのが見えるのでしたくないのだ。昔から頑張ってたバイトの掛け持ちでの貯金に、お年玉貯金、自分の買い物をなるべく無料小説を投稿して得たポイントで通販の密林さんで済ませてきたり、はたまた知り合いに見せられないほど甘くて胃もたれする恋愛小説を副業として書いてたり……などなどの貯蓄性&節制が無駄になるのは少し惜しい。
まあ、本当に必要なら借金でもなんでもするけどね。腎臓ってどのくらいで売れるんだっけ?
「もう……昔から先輩はいつもそうですよね」
「これが俺だからね」
「知ってます」
少しだけ笑みを浮かべる紗夜。まあ、意図してこんな風に接してることも否定は出来ない。こうして人間関係をなんべく円滑にしといた方が楽だしね。
「じゃ、次はお待ちかねの紗夜の買い物だね。とりあえず服買わないと、その格好は恥ずかしいでしょ」
無難なスウェットだけど、女の子的には……いや、俺でもそれで雨の日の街を歩く勇気はないしね。紗夜はその言葉に俺の服をくんくんしてから言った。
「先輩の匂いがします」
「臭いってこと?加齢臭はまだのはずだけど……あ、それとも間違えて仕事用の香水零したやつかな」
「違いますよ……凄くホッとする匂いです」
………いかんな。なんか昔より紗夜が可愛いと思ってしまう。知らない間に女に飢えてたのかなぁ……まあ、どっちにしても今の辛い紗夜に付け入るつもりは微塵もない。俺が下手に手を出して彼女を完全に壊す訳にはいかないしね。まず有り得ないことだけど……万が一彼女から求めてきたらその時は応えたいとは思うけどね。
……我ながらないなぁと思う。だって、今の紗夜的に俺を異性として見るのはしんどいだろうし、その前に仲のいい先輩という認識はそうそう覆らないだろうしね。そう、その時は本当にそう思ってたんだよね……人生ってなかなか難しいものだ。