2 後輩と自宅
(´・ω・)つ
「狭いけど遠慮しないで入ってよ」
「ありがとうございます……」
まだ目の赤い紗夜を連れて俺は一人暮らしのマンションに戻ってきていた。幸い仕事は休みなので友人と遊ぶ予定をキャンセルしたのだが……まあ、紗夜の方が大切だし仕方ない。
「着替えは……無いんだよね」
「はい……」
「じゃあ、とりあえず俺の服を貸すからお風呂入りなよ。その子の面倒は俺が見てるから」
「いいんですか?」
「子供好きだって言ったでしょ?そういえば、この子の名前は?」
「奏です」
奏か、可愛い名前だ。今の紗夜にこの子のお風呂を任せるのは少し怖いし、この子は後で俺が入れるとしよう。そんなことを思っていると、さっきまで寝ていた奏がぐずり始めた。このぐずり方は……お腹空いたのかな?
「部屋出てるから、母乳あげなよ。多分お腹空いたんだよ」
「あの……実は、あんまり母乳出なくて……」
ふむ、体質というより環境の問題かな?まあ、出にくい人もいるしそれは仕方ない。
「分かった。じゃあ、粉のミルクと哺乳瓶買ってくるから、着替えて少しだけ待ってて。帰ってきたらお風呂入っていいから」
そう言ってから、適当な着替えを渡してから雨の中ダッシュで近くのディスカウントストアに向かって一式買ってから急いで戻る。平日で時間も時間なのでレジも手早く終わったが……また後で紗夜連れて服だけは買いに来ないとね。
「お待たせ。これからミルク作るからお風呂入りなよ」
「あの……本当に任せていいんですか?」
「いいよ。これくらい任せなって」
紗夜から奏を引き取って、あやしつつミルクを作る。昔めちゃくちゃ作ったので体が覚えていたのかそこまで苦労はしなかった。
「ほい、お待たせ。ミルクだよー。ゆっくり飲みな」
きちんと抱っこして飲ませる。心無しか美味しそうに飲んでるので満足感もあるものだ。最後にきちんとゲップをさせて、ついでにオムツも変えてから寝かしつけていると、俺の服を着た紗夜がお風呂から上がってきて驚いたような表情を浮かべていた。
「先輩……なんでそんなに手馴れてるんですか?」
「弟、妹とかに散々やってたからね。うち下が多くて親戚も下ばっかりだからこの程度なら余裕だよ。それよりまだ髪濡れてるね。乾かすよ」
タオルで水気を取ってから、紗夜の髪をドライヤーで乾かす。妹よりも綺麗な髪で少しだけ見惚れてしまったが……いかんいかん、不純な気持ちは持っちゃダメと自分に言い聞かせる。
「………先輩」
「ん?何?」
「……私、本当にここにいていいんですか?」
「嫌なの?」
「違います……なんだか、先輩に甘えすぎそうで、先輩に迷惑かけそうで怖いんです……」
全く、本当に手のかかる後輩だ。
「別にいいよ。可愛い後輩の面倒くらい見る甲斐性はあるからね。というか、そんなことよりこの後買い物ついでに外でご飯食べようか。服とか日用品もだし、奏の買い物もしないとね」
幸いというか、実家への仕送り以外はほとんどお金は使ってないので貯金は結構ある。2人を食べさせて奏を学校に行かせる程度なら余裕だろう。なんでここまでするか自分でも疑問だったけど……まあ、可愛い2人を放っておけなかったのだろうと思う。