1 後輩と赤ちゃん
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「あれ?あれって確か………」
とある雨の日のこと。会社にも慣れて社会人として若干仕事が面倒だと思い始めていた時に俺はそれを見つけた。雨の日の公園で傘も差さずに何かを抱きしめて濡れないようにしている女の子。茶色がかった髪と高校の制服は俺に昔知ってる人物を連想させるのだった。
「まさかな……」
そう思いつつも俺はお節介にその女の子に近づくと傘を差して言った。
「こんなところで風邪ひくぞ?紗夜」
「……せん……ぱい?」
ずぶ濡れのまま呆然とこちらを見上げる女の子。うん、間違いなく俺の知ってる高校時代の後輩の星崎紗夜だ。同じバイト先でそれなりに仲も良かった。でも、確か噂で妊娠して高校辞めたって聞いたけど……そんなことを思っているとモゾモゾと紗夜が抱きしめていた毛布が動いた。
犬でも連れてるのかと思っていたが、薄らと見えた小さな手で俺は嫌な予感がして聞いた。
「その子はお前の子供か?」
「……はい」
「何があった?」
「……彼氏にも家族にも捨てられました」
聞けば、紗夜を妊娠させた男は姿を消して、家族も絶縁したらしい。高校も辞めさせられて、行く場所もなく、お金もなく生んでしまった子と公園でじっとしてたそうだ。
つぅっと、涙を流す紗夜。
「ごめんね……私のせいで……」
眠る赤ちゃんにそう謝る彼女。俺は男にも家族にも頭にきてしまっていた。無責任に子供作って全てを後輩に押し付けた……そいつ見つけたらガチで殴ろうと思って俺は紗夜の涙をハンカチで拭くと言った。
「紗夜、その子と一緒に家に来ないか?」
「え……でも……」
「無理にとは言わない。家に来れば衣食住はとりあえず保証するよ。もちろん、紗夜に手は出さないから」
「………どうして、先輩はそこまで………」
「いやー……一人暮らしって結構寂しくてね。誰かいてくると安心するっていう感じで、まあ、俺のワガママかな」
そう微笑みかけると紗夜は驚いたように目を丸くしてから俺に抱きついてきた。
「せん………ぱい…………先輩………うぅ………」
「よしよし、辛かったな」
赤ちゃんも濡れないようにして俺は紗夜を慰めるのだった。まあ、お金の問題とか色々あるにはあるけど……目の前で泣いてる後輩がいる。いや、泣いてる女の子がいる。何も無いなら助けたってバチは当たらないはずだ。それに俺は子供好きだしね。
そうして俺、社会人の椎名華凛は、その日後輩の星崎紗夜とその子供を拾うのだった。まあ、本当にこの時の俺は正義感的なもので動いてたので下心だったりは微塵も無かったのだが………後に積極的にアプローチする紗夜にあっさり陥落するのはまた別の話だろう。