表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
琴線に貴方が刃を  作者: nun
1/1

~プロローグ~第一話~

《プロローグ》

ここは、妖怪や人間、はたまた精霊でさえも存在する世界。

夜は妖が蠢き、森の奥深くでは精霊たちが暮らす。そして、人間にとって妖怪と精霊は信仰や畏れの対象であった。






《第一話》


ここは人の暮らす町と妖怪の住む里の丁度真ん中にある幹和。

いくつもの店が並ぶ通りの一番端“団子屋みやび”と書かれた暖簾の中から若い少女の「いらっしゃいませー!」という声がする。

「おっ!七瀬ちゃん。今日もめんこいなあー」

 店に入ってきた男たちが口を揃えて“七瀬”と呼んだ少女はくすっと苦笑いを浮かべた。

「あいかわらず、お世辞はお上手ですね。喜平さん」

“七瀬”はゆるくウェーブのかかった桃色の髪をおさげにしている、肌の白い少女であった。

「まあそう言いなさんな。本当のことなんだからなあ!」

「全くだ!」

「「あっはははははっは」」

その様子を少し距離をおいて見ていた七瀬だったが・・・

「こおぉぉぉおらああぁあああぁあ!!あんたらここに七瀬をからかいに来たのかい⁉違うだろ⁉団子食わんかい!団子!!」

 

突然響き渡る怒号。

「げ。妙さん来ちまった」

男達は一斉に顔を青くした。“妙”とはこの店の主であり七瀬の叔母だ。七瀬の母親の姉で妹夫婦が死んでから七瀬を引きとって生活している。


七瀬に絡みに来た客にきっちり団子を食べさせてかえらせるのもいつもの光景であり妙の仕事のうちの一つでもある。


「あー、じゃあ黒蜜団子二つ頼むよ」

「・・・・俺はー」

そこにいた男たちが妙のすごみに注文しだす。それをメモする七瀬。暫くすると筆を止め注文の確認をする。なかなか確認が終わらないのはきっと男たちが相当の団子を頼んだからだろう。店の奥では妙が悪い顔をしてふつふつと笑っていた。

「じゃあ、お持ちしますね!少々お待ちください」

七瀬がそう言って台所へ向かおうとしていた、その時。




カランカランー…



暖簾を誰かがくぐり、それと同時風鈴が鳴る。それだけのことなのに七瀬は振り向くことができず、足は店の奥をむいたままだった。



「邪魔をする」



店に響く低い凛とした声。客なはずのその“誰か”に七瀬は未だ振り返ることができずにいた。


「おや。八尋か。久しぶりだね」

 

誰か、は八尋というらしい。妙の知り合いならこの言い知れない感触は気のせいだと思い客へと振り返った…が。


カシャンー…


「あ、妖・・・?」

片付けようとしていた皿は床に落ち、手は自分の意志と関係なく小刻みに震えていた。“八尋”と呼ばれていた彼は銀からだんだん青になる髪で爪が長く、そして左腕がなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ