9.学園に到着
わぁ~お! 本当にゲームの中の学園と一緒だ。この学校の造りって質素な宮殿って感じで大好きなんだよね~。皆もうヒロインともう出会っるはずよね? そのままルーカ―が既に無理やりヒロインを学校に入学させているはず。王子って何しても良いんだな~。
この学園って十三歳から入れるはずだから……留年とかしていなければ彼らは二回生のはず。はぁ、今から探さなければならない。今の私の格好って相当目立っているはず。制服じゃない上に、この服装だもん。
レオの通う学園に連れて行けじゃなくて、レオの元へ連れて行けの方が良かったような気がする。
「まぁ、でも学園内を探検するのも悪くないね」
私は魔法でポニーテールにして歩き始めた。
何故ポニーテールにしたかって? 探検するにはバサバサと散らばる髪は邪魔だから。それだけ。
「今授業中かな……、誰もいない」
『誰もいないね~』
『独り占めだよ!』
歓喜の声を上げる妖精達……、単純だな。
森の妖精って森から出ること出来るんだ。って当たり前か。そうじゃないと私、森以外で魔法使えないもんね。
一体どの校舎なんだろうな~。私は心を弾ませながら歩いた。かつてこんなにも心が躍った日はない。ヒロインになりたいと懇願し続けたあの日からこの学園内を歩きまわるのが夢だったのだ。
もはやレオに会いにきたという目的を忘れそうになるぐらいだ。
これって掲示板かな?
私は何かポスターみたいなものが目に留まり、歩く足を止めた。
学園の外にある大きな掲示板。これで皆色々な情報を手に入れるのだ。私はこのゲームを愛してやまなかった者だ。これくらいは分かる。……正直なところ忘れている部分の方が多いけど。
私はじっとポスターを見つめた。
……うっそ~ん!
今の私はムンクの叫びのようなポーズになっているだろう。
「へ? 魔女の森は、魔女が出れぬよう人間が入れぬように棘の壁で囲まれた?」
どういうこと? もしや、これが原因でレオは私の元へ来ることが出来なかったってこと? 一体誰がこんなことをしたのだろう。考えられるのは国王陛下ぐらいだけど。それにしても何のために……。私、別に何も悪いことしていなかったよね?
大人しく過ごしていただけなんだが……。寝ている間に無意識で町を燃やしていたとか!? いや、それは流石にあり得ない。
『こんなことしてもリオンは魔法で簡単に出れるのにね~』
『意味ないよね~』
そうだ、その通りだ。もはや壁があったことすら今まで気づかなかったのだ。「連れ出してあげるよ」とレオが私に言ったのを思い出した。……なんだか申し訳ないことをした。まぁ、でも今でも森以外の所に私の居場所はない。だから、結局また森に戻らなければならない。
森を出たのはただレオに会いたかっただけだ。もしレオが私に会いに来てくれていたら私はこんな大胆な行動に出なかっただろう。……ずっと森にいるっていうのは飽きていたかもしれないけど。少なくとも考えもなしに出たりはしない。
「誰だ?」
あちゃぱーーー! 見つかってしまった。守衛さんかな? 私は彼の見た目からそう判断した。
「不法侵入者を発見した! 至急応援を頼む!」
叫んで至急応援を呼ぶ人始めて見た。
……なんかウケる~。この言葉は私が若い頃にはやっていたものだ。
確かにこの世界にスマートフォンとかないから叫ぶっていうのが一番手っ取り早い。この距離感で伝書鳩を飛ばすことも出来ないしね。
「逃げよう!」
『魔法使わないの?』
『そうだよ! 魔法使えば!』
「それじゃあスリルがないんだよね!」
私は走りながら妖精に言った。周りから妖精は見えていないから、私は一人で喋っているただの変な奴になる。
『リオンって案外馬鹿だよね』
『そこが可愛いんだけどね』
「生きてるって実感したいの~!」
私の気持ちも理解してくれ、妖精達。スリルは私に生きているということを実感させるのだ。
『見た目は美女なのに走ってるってなんか面白いね』
『残念な美女ってこういうことをいうんだろうね』
おい、あんたら、しばくでぇ? って言ったらあまりにも品がないのでやめておこう。
私は走っている速度を段々遅くした。そうだ、私は魔女なのだ。余裕がある大人の魔女なのだ!
息を切らして走る姿なんてみっともない。やめよう。私はその場に立ち止った。私は守衛さんであろう人の方を振り向き、にこやかに笑った。
さぁ、今からお姉さんの反撃よ。