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甘い君は今日も私を愛でる  作者: 大木戸いずみ
16/17

16.勉強

 ……授業が難し過ぎる!! 無理だ、私、もう無理だ。

 人生数回目だけど、今までいた世界と全く用語が違う。今まで聞いたことのない言葉がどんどん出てくる。それに、私は十五歳までずっと森にいたんだから、ここの世界のことを何も知らない。

 勉強は嫌いじゃなったし、それなりに頭も良かったのに、この世界じゃ私は落ちこぼれだ。

「あああああぁあぁぁああああ!」

 私は部屋の中で机に頭を付けて叫ぶ。

 この学園でやっていける自信がない。正直、もっと学園生活謳歌出来ると思っていたのに! なにこの課題に追われている大学生みたいな生活は!

 レオとも三日ぐらい会えていない。……こんなのレオにとったら簡単すぎて寝ながらでも解けるんだろうな。

 ……今頃だけど、卒業試験満点とか異次元過ぎない? 

 ヒロインも頭良かったしさ。……あんなにヒロインになりたかったけど、授業内容見てたらヒロインにならなくて良かったと少し思ってしまう。

 この雑草とか完全につくしなのに、おばあちゃんがよく料理してくれたつくしなのに……、名前がツクリンリンシャーグレットって何? 意味わかんない。どこぞの高級ホテルの名前なのよ!

「長すぎる。全部の雑草の名前が長すぎる」

 運営、初めて恨むぞ。

 こんなにハマった乙女ゲームを作ってくれたことには感謝してもしきれないが、雑草にこんな意味の分からん名前を付けた運営を呪いたい。

 私はページを捲り、植物の名前を覚える。

「……ふざけてんのか」

 どっからどう見てもケイトウだ。この花はケイトウだ。ケイトウは花の形が鶏頭のようだからケイトウと名付けられたのに……。

「何この、コケコッココトリームって。なんかの美容液?」

 もう無理! やだ! 憧れていた生活からかけ離れている。

 コンコンッと扉を叩く音が聞こえる。

「はい?」

「僕だよ~」

 レオの声が聞こえる。

 ああ、もう! 声を聞いただけで癒される。何このショタボは!

「どうぞ~」

 扉を開けると、レオが可愛らしいプレートを持っていて立っていた。

「疲れていると思って、ハニーレモンティーと、ジンジャークッキー持ってきたよ」

 よ、嫁に来てくれ。

 レオの笑顔で心がいっぱいになり、レオが持ってきたお菓子でお腹がいっぱいになるとか……、まさに至高。

「ただ僕が会いたかっただけなんだけどね」

「レ、レオ……有難ううぅぅ。ちょっとめげそ……」

 だめよ、リオン、弱音なんて吐いちゃ。ここは大人の魅力を見せないと! ……同い年だけど。

「貴方が持ってきてくれた甘い匂いで考えがまとまったわ」

 甘い匂いで考えがまとまるとか、私の脳みそおかしいだろ。ちょっと言葉の選択を間違えてしまった。

「僕はもう要らない?」

 ウルッとした目を私に向ける。あまりに可愛い上目遣いに意識が飛びそうになる。

 ……こ、これは罠なのよ。罠だと分かっているのに、まんまと引っかかりそうになる私って、本当に馬鹿よね。ちゃんと意思を強く持たなければならぬ。

「今は勉強に集中したいから」

「はかどってるの?」

「そ、それなりには」

 ツクリンリンシャーグレットとコケコッココトリームはなんとか覚えれたし……。

「私一人で大丈夫よ」

「僕がリオンに勉強を教えたいっていう我儘なお願いしてもだめ?」

「……わ、分かった」

 まんまと天使の罠に落ちる。あんな可愛い目を向けられたら誰だって承諾してしまう。


 レオは丁寧に名前の覚え方や植物の仕組みを教えてくれる。そして、それがびっくりするぐらい分かりやすい。

「で、水はこのボボボーン道って所を通って」

 なんだその名前は……。

 レオが真剣に説明してくれているのに、たまに集中できなくなる。皆、小学生の頃に道管と師管とか習うけど、あれはこの乙女ゲームでは全く役に立たないよ!

 彼は日が暮れるまでレオは私の馬鹿さっぷりに一度も呆れることなく、ずっと笑顔で私の勉強に付き合ってくれた。

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