表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甘い君は今日も私を愛でる  作者: 大木戸いずみ
11/17

11.独占欲と疑惑

 なんて眩しい笑顔ッ! 目に入れても痛くないってこういう子に対して使うものだわ。

 五年も経っているのに、可愛さは健在でみたいね。というか、前よりも可愛い。少し大人びたけど、天使には変わりない。うん、ヒロインの攻略対象だ、当たり前か。

「相変わらずね」

 相変わらず可愛いわね、とは言わなかった。よく堪えた、私! そうよ、私はもう大人なのよ。言葉遣いも気を付けないとね。

「とっても綺麗だね~」

 レオの無邪気さも健在なのか。恥じらうことなくそう言ってくれる。……嬉しいけど、私は彼にみたいに素直になれない。ヒロインならここは「有難うっ」って満面の笑みで返すのかな!? それとも、「そんなことないよ~」って謙遜するべきか? いやいや、私は魔女だ。色気ムンムンの魔女なのだ。

「今頃私の魅力に気付いたの?」

 私はそう言って妖艶の笑みを浮かべた。

 わ~おッ! 自分で言って思う、なんて可愛げのない返答なんだ。本当にこの乙女ゲームをしたことがあるのか、私。

「美しい声だ」

 その言葉と同時に私はギュッと誰かに両手を掴まれた。

 ……さっきの守衛だ。彼が目を輝かせながら私をじっと見つめている。もしや、私に惚れたとか? 流石に会ってすぐそれはないか~。

「僕の心は貴女に奪われてしまいました」

 あったーーーーー! え? さっきまで私に対して叫んでいた人が、いつどこで私に惚れるタイミングがあった? あ、もしや、頬をつまんだ時!?

「えっと……」

「僕も! 僕もリオンと手を繋ぐ!」

 そう言って無理やりレオは守衛の手をはがし、私の手を掴んだ。

 ……幼いながらの独占欲? のわりには一瞬彼の目に殺気が漂っていた気がしたけど。

 彼は私と守衛の真ん中に立った。

「リオンの魅力は僕が一番早くに気付いていたんだから!」

 うわッ、可愛すぎだろう。彼を抱きしめたい衝動に駆られる。

「誰よりも早く僕が気付いていたんだから、誰にもあげないよ?」

 あれ? 一瞬、寒気が……。何だろう。

 ……レオ? 守衛の方を向いていてどんな表情をしているのか分からない。けど、彼の声は可愛らしかったが、一瞬恐ろしいものを感じたような気がした。

「……申し訳ございません! レオ様!」

 蒼白した表情を浮かべて、その場を逃げるようにして離れて行った。

 レオが圧をかけたのかな? おもちゃをとられたみたいな子供の独占欲? それとも、守衛とレオの立場があまりにも違うからとかかも……。やっぱり階級って大事なんだな~。

 ん? レオも私といてはまずくないか? 私魔女、彼貴族。……今の状況的には私が魔女だとバレない方が良いのか。けど、今の私の外見だけで魔女だと言っているようなもんだ。

 うん、出直そう! あまりにも無計画だった☆ 

「リオン? どうかした?」

 クリッとした丸い大きな瞳が私をじっと見つめる。

 あっ、そうだ! これだけ聞いておこう。私は少し眉をひそめながら彼に聞いた。

「どうして森に来なくなったの?」

「……え」

 どうしてそこで驚いた表情をするんだよう! さっき壁のせいだって知ったんだけど、それでも一応聞いておきたかった……。けど、そんな驚くようなこと? いや、壁のせいじゃなかったのかもしれない! もう私に飽きたからこなくなった可能性も十分あるじゃないか! むしろその可能性の方が高い気がしてきたぞ。まだ私のこと好きかなッ、とか思っていた少し前の私を殴り倒したい。

「もしかして、僕が森に来なくなって寂しかった?」

 なんて返すべきか。彼にとっての私の存在の大きさによって返答が変わってくる。ここは素直になるべきかな。

「もしそうなら嬉しい! 僕のこと思っててくれたってことだよね?」

 これは……、まだ彼は私のことを思ってくれているという解釈でよろしいかい?

「レオ」

「ん? 何?」

 私は片手でレオの顎をくいっと軽く持ち上げた。これは、どの人生でか忘れたが、若い子達の間で流行っていた顎クイというものだ。

 私はじっと彼を見つめた。無垢な瞳……、でもなさそうだ。案外腹黒さが感じられる。半透明の薄い紫色の瞳の中に知性がある。

 思っていたよりも子供じゃないのかもしれない。……まぁ、何でもいっか。レオ、可愛いし。

「私を落とすのは大変よ?」

 私は彼から手を離して、子どもに対してするような笑みを彼に向けた。

 レオはきょとんとした顔を浮かべた後、一瞬ニヤリと笑ったような気がした。けど、気のせいな気もする。天使は悪魔みたいな笑みを浮かべたりはしない。

「けど、今は僕に頼らないと大変でしょ?」

 彼は嬉しそうにそう言った。頼られるのを待ち望んでいたかのような表情を浮かべている。

 ……本当に無邪気なままなのか、否か。そこはひとまず置いておこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ