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甘い君は今日も私を愛でる  作者: 大木戸いずみ
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1.ヒロインになる為に

 ヒロインになりたーい! 

 絶対に転生してやる。私が今している乙女ゲーム『王子と甘いKISS』に出てくるヒロインが本当に羨ましい。私もこんな風に生まれ変わりたい。その為には死んでこの世界に転生するしかない。

 馬鹿な私は何も考えずに高速道路に生身で飛び出した。

 

 十七歳 女子高校生 田宮真子

 トラックにはねられ死亡


 痛かった……。無茶苦茶痛かった。私は一度死んだ。そしてまたこの普通の世界に生まれ落ちた。どうして! 生まれ変わるなら異世界に連れてってくれ! 欲を言えば、あの乙女ゲームの世界が良い。いや、あの乙女ゲームの世界以外に行きたくない。前世の記憶を取り戻すまで結構時間がかかるものなんだな。よしっ! 来世に期待だあああ!


 二十一歳 男子大学生 川本昇

 屋上から飛び降りて死亡


 うおおおおお。痛かった~。全身に激痛が走るってああいうことのことをいうのか。トラックとは別の痛みがあった。そして、またこの世界も普通の世界。異世界に行けないように私は何かに邪魔されているのかもしれない。どうしたらいいのよ! また、前世の記憶、前前世の記憶を取り戻すのに時間がかかってしまった。これで最後にしたい! いざ、参らん!

 

 三十五歳 独身女性 無職 町島聡子

 階段から転倒して死亡


 てへ☆ もう失敗の連続だ。私、もう七十三年も生きている。今の年齢を足したら……、いくつになるのだろう。兎にも角にも、私、もうおばあちゃんじゃないか!! いや、ヒロインは何歳でもなれる! ヒロインの年齢制限なんて聞いたことないし。それに男の人生も歩んできたら男性の気持ちもよく分かるようになった。経験ヒロインに即抜擢されるほど積んできた。

 ……さっきゲーム屋さんで十円で乙女ゲーム『王子と甘いKISS』が売られているのを発見してしまった。あの神ゲームをそんな安さで出すな! あれは決してクソゲームではないのだ。むしろ値段がオークションで跳ね上がるべき品物だ。それなのに、十円で売られているなんて……。勿論購入してきた。これを持ちながら死んだら転生できるかもしれない。よしっ! 逝こう!


 四十七歳 引きこもり男性 的場俊之

 古い乙女ゲームを手にしっかりと握りしめたまま溺死

 

 ふざけんなああああああ! なんだ? もう金を積んだらいいのか? 今の私はかなりお金を持っている。振込口座を教えてくれえええ~!! 全財産つぎ込んでやる。よしっ、とりあえず、銀行に行こう。受付の人に相談だ。


 五十三歳 男性 某ホテルのCEO 豊松康太

 子供を救って軽自動車にはねられ死亡

 

 なんとまあ、予想外な死に方だった。そして、ここはどこ? 私は何にもなっていない。宇宙みたいなところで私はぷかぷかと浮かんでいる。この浮遊感が妙に心地良い。……私、物凄い長い人生を歩んでいるな。男性になった時、引きこもりになる前は警察学校へ行っていたし。なかなか経験値高いんじゃないのか? もしや、今何にもなっていないということは、ついにヒロインになれる経験値を手に入れた!?


『馬鹿か』


 突然どこからか透き通るような中性的な声が聞こえた。

 誰!? もしやこれが神様の声? おお! ついに神と会話できるレベルまできたのか。


『ようやく、意図的でなく死んだな』

 

 なんだか呆れた口調でそう言われた。意図的でなくってことは……、意図的だったから駄目だったの? じゃあ自然死だったらオッケ―だったってこと? 私のこの長年の努力は水の泡……。


『こっちの身にもなってみろ! いい加減お前をどこかに転生させたいが、こっちのルールでそれは出来ないんだ』

 

 あらら、知らない間に迷惑にかけてみたいだ。ごめんね、神様。これからは周りのことに気配り出来るような女になるよ。


『私ももうお前の人生を繰り返し見続けるの飽きたわ。それに今回の死に方は子どもを救っている。どこでも好きな人物に転生させてやろう』

 

 うっそ! 本当の本当に? ということは、私、ついに念願のヒロインになれるってこと? あの逆ハーレム状態を体験できるってことだよね。『王子と甘いKISS』のあの美少女ヒロインになれるなんて……。夢みたいだ。


『早く満足してくれ』


 神は面倒くさそうにそう言った。神様と意思疎通できるなんてめったにない機会だからもうちょっと喋りたいな。


『私は、はやくお前から解放されたい』


 私の考えていることが分かるんだ。ほう、これまた便利。私も言葉を出さずとも意思疎通できる能力が欲しいな。けど、私が転生を考えている乙女ゲーム『王子と甘いKISS』のヒロインは普通の女の子なんだよね。異世界ではあるのだけれど、彼女は魔法を使えない。だから努力でのし上がっていこうとする。その過程で王子とか他の攻略対象達と出会うんだよな~。


『お前の言っているゲーム、随分と古くないか?』 

 

 分かってるわよ~! 何度も死んだ私を転生してくれなかった神様のせいこうなったのよ。当時は輝いて見えた乙女ゲームも今じゃなんだか廃れて見える。

 ……というか、さっきから気になっていたんだけど、私、声出せてない? いや、それでも神様と意思疎通できるから何の問題もないのだけれど、どうして声が出ないのだろう。


『理由は簡単、お前は喋ったらうるさそうだからだ。だから声を今出せない状態にしておる』

 

 それだけかい。

 声を出せない状態にしてる、か。神様って本当に何でも出来るんだな。


『早くどこに行きたいか言え。そろそろ声も返してやる』

 

 やっぱりいくら廃れているといえども憧れだ。長年思い続けてきてようやく両想いになれるんだ。こんなチャンスもう二度と来ない。


「乙女ゲーム『王子と甘いKISS』のぅりッッ」

 

 あまりに力強く言ったものだから舌を噛んでしまった。どうしてこんな肝心な時に……。口の中でじんわりと血の味が広がる。


『りっお? なんだそれは? よく分からんが、まぁ、良いか』


「ちょっと、待っ」

 

 私が神様を止めようとした瞬間、急に暴風が私の方に吹いてきた。

 ちょっと、こっちは全然良くなーーーい! ちゃんと顧客の思いを大切にして。これじゃあ、誰に転生するか分からない。……あ、でも常にヒロインになりたいって言っていたからヒロインにしてくれるかもしれない。というか、してもらわないと困る。私はこの為に生きてきたのだから。

 大きな煌めきが私を覆い、そのまま爆風と共に私はどこかに飛ばされた。

 何これ? こんな転生の仕方ってあるッッ!?

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