プロローグ
一週間くらい前。
僕、吉川慎二は家でテレビを見ていた。
何となくチャンネルを変えようと、リモコンに手をのばす。
届かない。
動きたくない。
でも、届かない。
僕はもう一度手をのばす。
ピュー
手から糸が出た。
ピタッ
リモコンに引っ付いた。
ピュー
糸が縮み、リモコンが手に収まった。
「えっ……」
いや、もしかして……もしかしなくても、これって……
「異能ォォー!?」
つい、叫んでしまった。
◆◇◆◇
国立異能研究所。
その名の通り、国立の異能研究施設だ。
そこで僕は検査を受けた。
今は結果が出るのを待っている。
すごい異能だろうか。
無双とかしてみたいなぁ。
「えー……結果が出たので伝えさせて頂きます」
若い男性研究員が部屋に入って来て言った。
「ど、どうでした!?」
「これが検査の結果です」
研究員が1枚の紙を差し出す。
なになに……
異能
《糸操作》異能ランク D
粘糸と鋼糸の二種類の糸を操る。
「え~と……微妙……」
「そう……ですね」
研究員が苦笑した。
異能は6つのランクに分けられている。
異能ランク E
国家にとって有益でなく、また脅威とならない異能。
異能ランク D
国家にとって多少有益、もしくは脅威となる異能。
異能ランク C
戦場で複数人での戦闘が可能な異能。
または国家にそれなりの利益をもたらす異能。
異能ランク B
戦場で単独での戦闘が可能な異能。
または国家に大きな利益をもたらす異能。
異能ランク A
広範囲に影響を与える事が可能な強力な異能。
または国家にとって最大級の利益をもたらす異能。
異能ランク S
国家機密
こんな風にランク分けされている。
僕の異能ランクはD。
国家にとって多少有益、もしくは脅威となる異能……だ。
多少……か。
微妙だよな。
「え~と、まあ、ハズレ異能……ですね」
「ハズレ異能?」
初めて聞いたな。
「ハズレ異能っていうのは、我々研究員が言ってるだけなんですけど……」
研究員の説明をまとめると……
ランクDの異能者は国家にとって多少の利益、脅威となる。
だから、ランクC以上の異能者と同じ様に、異能学校に通うことになるらしい。
ランクEの異能者は異能学校に通わないのに。
でも、異能学校って楽しそうだけど?
その疑問に答える様に研究員が言う。
「異能学校に通うというのは、国に全てを管理されるという事なのです」
「国に全てを管理……」
「ええ。その上ランクDの異能者は、国から雑に扱われるんですよ。僕もランクDの異能者なので……」
ランクDってそんな感じなの……
先が思いやられるなぁ……
「え~と、まあ、あなたには清煌異能高校に通ってもらいます。」
清煌異能高校……いい噂を一つも聞いたことなんだが。
◆◇◆◇
清煌異能高校に通うまでの間で変わったことといえば……自分の異能であやとりが出来るようになったこと……だろうか。