よくあるやつ
「起きるのじゃ!」
「うおっ!」
暑苦しいおっさんの声のせいで、俺の安眠は唐突に終わりを告げた。
寝落ちしてしまっていたようだ。
「悪いな、そこのおっさん。起こしてくれて助かった」
さてさて、気合い入れて今日も1日頑張りますか。
そう思い、ガバッと立ち上がって辺りを見渡すと、
「( -_・)??」
おかしい。おかしすぎる。さっきまで自分の部屋にいたはずなんだが?
そこにはただ真っ白な空間が広がっていた。
え?え?どういうことだ?なんだ?
ドッキリ大成功~とかいうあれか?それとも荒手の虐めか何かですか?
「安心せい。ドッキリでもいじめでもない。」
声がしたので後ろに振り替えると、そこには"THE仙人"という風貌の老人が立っていた。
白い服というかそこまでいくと布というくらいの白い衣服を身にまとっており、白い髭、白髪と相まって背景と見事に保護色である。
「誰だ?」
気づけば白い空間で、振り向けば知らない仙人みたいなおっさんがいたのだ。こんな幼稚な質問しか出てこないのは仕方の無いことかもしれない。
「フォッフォッフォッフォッ、そこまで物怖じせぬ態度でその台詞を吐いたのはお主が初めてじゃ。そうじゃのう。わしは所謂神というやつじゃな」
「神か」
「驚かんのか?」
「まあラノベのお陰で耐性はあるみたいだ。」
俺は結構ラノベを読む。学校からの帰り道で本屋によく寄って、今となってはかなりの数が家には保管されている。
まあ、いきなり神だとか言われても実感がわかないけどな。
ここはどこかもわからないし、取りあえずは成り行きに任せよう。
「所でお主。そろそろ気になっているのではないか?此処が何処なのか」
そりゃそうだ。こんな一面真っ白い空間なんか、地球上には存在しないだろう。
「まあそうだな。だがどうせあれだろ?天界とか、精神世界とか、時空の狭間とか」
「うむうむ。確かに日本のラノベではその辺りが一般的じゃな。どれに近いかと言われると····天界じゃな。」
「へー。じゃ何で俺は天界にいんの?」
「よくぞ聞いてくれた。お主にはのう、別の世界に転生して欲しいのじゃ」
そこで神の口から出たのは一般人には驚きの言葉だった。
だがラノベ愛読者ともなると、これくらいじゃおどろかないのだ。
「所詮テンプレか。いいぜ」
俺は二つ返事で許諾した。こんな美味しい話なんて無いしな。
「よいのかっ?!もとの世界には戻れんのじゃぞ?!」
この爺は俺に転生して欲しいのかしてほしく無いのかわからんな。
「良いっつってんだろ?聞こえなかったのか?」
爺は俺の堂々たる態度に驚きながらも何とか気持ちを落ち着かせているようだ。
「あ、ああ。まさか承諾してくれるとは思っておらんかったのじゃ。それも即答でのう。」
「まあ特に思い入れもなかったしな。因みになんだが、理由だけ教えてくれないか?」
「もちろんじゃ。実はのう、お主はもともと異世界で生まれるはずの人間だったんじゃ。それが何らかの手違いでそちらの世界に生まれてしもうたみたいなんじゃ。長らく気づかんですまんかった」
「なんだそんなことか。だが、俺を転生させる意味ってのはなんなんだ?別にそのまま地球で生きていてもよかっただろ?」
「いいや、そこが問題なんじゃ。お主がそっちの世界に行ったせいで、地球のバランスが崩れてしまったんじゃ」
「なるほどな。ならしょうがねーか」
俺が納得したところで、爺は先程までの申し訳なさそうな顔から立ち直った。
「では早速じゃが、これから転生の準備に取りかかるぞ?」
「それはいいんだが、どんな世界に転生するんだ?」
「それも含めてこれから決めるわい」
爺はそういうと、俺の方に向けて手を向けた。
すると、俺の目の前に半透明のボードが浮かび上がった。
「ステータスカード」
「ビンゴじゃ」