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再びイカタコ系ダンジョン

あけましておめでとうございます。いつも応援ありがとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

「えーとカルネの別添資料によると、ボスは巨大タコ系魔物でダイオウダコとなっている。大量に吐く墨と8本の足が厄介となっているね。また擬態もするので要注意ということだな……昨日同様、強敵だろうから、油断せずに対処するようにね。」


 ボスステージのドーム前で、皆にボス魔物の説明を実施する。昨日と同じイカタコ系のダンジョンに挑戦しているのは、あまりにもふがいない結果に全員が猛省し、再度同じダンジョンを攻略することになったのだ。


 言ってしまえば復讐戦ということだな……昨日と同じダイオウイカ系ボスではないのは残念だがほぼ同じようなものだし、こちらも強力そうなので楽しみではある。以前は絶対に嫌だったが、最近は強敵と戦えるのが、なんだか楽しみになってきた。命がけではあるのだが、何とか知恵を絞って倒し切った後の満足感が堪らない。


 途中ナマコ系魔物の強烈な水流に悩まされたが、ショウの風系魔法で何とか対処し、干しナマコは珍味だからとトオルが喜んで冒険者の袋に詰め込んでいた。


「これは……大きいですね……。」


 ドーム内に入った途端、トオルが絶句する。確かに巨大ダコだ……頭部というか胴体部分だけで十mはあるだろう。長い8本の足は20m位はあるんじゃないのか?ドームの向こう側にいるのに、その足先は、ドーム中央部分に届かんばかりだ。


「かまいたち!かまいたち!かまいたち!」

『ビュゴワッゴワッゴワッ』ショウが駆けだしてかまいたちを発する。先手を取って一本でも厄介な足を切り取ってしまう作戦だ。


『シュルルンッ』「うわーっ!」

 ところがすぐにショウの体に長い足が絡みつき、つかまってしまう。


「だりゃあっ!」

『ガツンッガッツガッツ』急いで剣をふるって、ショウの体に絡みつく足を剣で斬りつけるが、その表面のぬめりのせいか、なかなか刃が立たない。


「炎の矢!」

『シュボワッシュボワッシュボワッシュボワッ』ナーミが竹製の矢に炎を纏わせ射かける。ナーミの火力アップのために、昨日の晩必死で特訓していた戦法だ。


『ボワアーッ』ショウをとらえている足の根元に命中し、そこが燃え上がると『シュルルルルッ』『バシッバシッ』すぐにショウを放し、他の足も一緒になって叩いて炎を払い鎮火させた。


 巨大火炎で焦がしてしまうと食用には向かないが、炎の矢程度の小火力であればいいだろうと、獲得する食材品質にはうるさいトオルも、しぶしぶ承知したのだ。


「炎の矢!」

『シュボワシュボワシュボワッシュボワシュボワッ』『バシュバシュバシュッバシュバシュッ』なおもナーミの執拗な攻撃が続き、ダイオウタコは8本の足総動員で炎をまとった矢を振り払い始めた。


『カンカンカンカンッ』ところが突然、ナーミの矢が岩に弾かれてしまう。あれ?珍しいな、ナーミが的を外すなんて……と思ってみてみたが、先ほどまでいたはずのダイオウダコの姿がどこにも見当たらない。


「どこへ行っちゃったの?」

 ナーミがダイオウダコがいたはずのドームの向こう側の空間を、唖然とした表情で見つめる。


 あまりの凄まじい攻撃に堪らずドーム外へ逃げたのか?とも思うのだが、いくら軟体生物でも、あの巨体が細い洞窟内に収まるとは考えにくいし、一瞬で消えてしまった感じだ。


『シュルルルンッ』「いやーっ!」


 すると突然ナーミの体に、長い足が絡みついて捕えられた。しかもその足は、何もない空間から突如出現しているようだ。一体どうした?透明化か?


「擬態ですね……洞窟内のタコ系魔物同様、擬態でドーム壁面と同化してしまったのでしょう。あんな巨体が消滅したように見えるとは……凄まじい能力……かなり厄介ですね。」

 トオルが、この信じられない状況を解説する。とはいっても、足の根元には本体があるはずなのだ。


『ダダダダッ』「脈動!」『ダッ』

 ナーミをとらえている足の根元に向かって大ジャンプして間を詰めると、『ガツンッドガッドゴッ』剣を銛に持ち替えて足の根元の胴体部分を突き刺し始める。


『シュルルルッ』するとナーミをとらえていた足がナーミを放し縮むと、その灰色の足がドームの地面と同化して、みるみる見えなくなっていく。


「超高圧水流!」『タッ』

『ドガッドゴッドガンッ』するとトオルが大ジャンプして飛んできて、足があったあたりの根元を執拗に銛で突き刺し始める。


「擬態して逃げられたら厄介です、休まず攻撃を続けてください。」

「おっ……おおそうか、わかった。」


『ドゴンッバゴンッドッガンッ』トオルに促され、ほぼ地面のように見える部分に銛を突き立てていくと、その部分がだんだんと灰色に変わってきた。擬態を続けられなくなってきているな。


「炎の矢!」

『シュボワシュボワシュボワッシュボワシュボワッ』俺たちが攻撃している上部に向かって、ナーミの矢が突き刺さっていくと、その部分も擬態が剥げて姿があらわになってくる。


「かまいたち!かまいたち!かまいたち!かまいたち!」

『ブゴッブシュッシャアッシュパッ』更にショウの執拗な一点集中攻撃で、『ゴロンッ』ついに太く長い足の一本が、根元から切り取られた。


『ドゴッバゴンッズッゴンバッゴンッ』攻撃が効いていることを励みにして、なおも執拗にダイオウダコの胴体めがけて銛を突き刺し続ける。ダメージを与え続けてさえいれば、擬態はできない様子だ。


『ブシュワーッ』苦し紛れにダイオウダコは墨を一気に吐き出すが、吐き出し口の漏斗の向きに注意しておけば墨攻撃は食らわなくて済むことを、昨日ダイオウを解体していて気が付いたのだ。


『ドゴッバゴッ』『プシューッ』やがて風船がしぼむかのように、その丸く張りのあった頭部というか胴体部分がしぼんで倒れた。やったあ……倒したのだ……。


「はあはあはあ……何とか倒し切ったな……ちょっと苦労はしたけど、昨日よりはずいぶんと簡単に倒せた。これも経験というか、慣れだね……。擬態はちょっと厄介だったが、休まず攻撃すれば問題ないことが分かった。ごくごくごくっ」


 回復水をドリンク代わりに飲みながら、一息つく。結構疲弊したが何とか倒せた。これで今日の寝つきはいいだろうな……。


「じゃあ、解体に入りましょう。」


『ゴリゴロゴリゴリッ』トオルが、のこぎりのようなギザギザの刃がついた、日本刀のように長い刀を冒険者の袋から取り出した。暗器の一種と言っていたが、それを使って太く長い足を一本ずつ根元から斬り落としていく。海系ダンジョン用に、武器屋に行って新たに購入したものだ。


 ドーム壁面から集軟体石を回収して、胴体部分は短冊に切り取って、それぞれの冒険者の袋とクーラーボックスに詰め込み、巨大な足は一人2本ずつ両肩に担いで……というか、多少引きずりながら持ち帰る。


 今日も巨大足のうちの6本はギルドで清算し、その他は持ち帰ることにした。この日も銛を研ぎに出したが、海系ダンジョンでは、剣より銛の方が活躍するなあ……。



「よう……するめとか干しイカ、干しアサリや干しイソギンチャクは、俺たちで売りさばいていいと言われていたから、今日港市場の海産物問屋を呼んで見積もってもらった。俺たちの仕事ぶりもかなり評価してくれて、予想外の高値で引き取ってくれることになった。


 さらに、後2日もすればふかひれも完成するが、そっちも俺達で売っていいんだな?」

 別荘へ戻るとキーチがやってきて、心配そうに小声で俺たちに確認してくる。後ろにはキーチの仲間たちがこちらの様子を覗き込みながら、落ち着きなくそわそわしている様子だ。


「もちろんです。するめも干しイカも干しアサリも、もちろんふかひれも、私たちが頂く分として取り分けた以外は、皆さんが食べてもいいですし販売していただいても構いません。」

 すぐに海産物加工担当のトオルが笑顔で答える。


「ああ……ありがとう……本当にこんなうまい話があるとは……ちょっといまだに信じられなかったからな、念のための確認だ。俺たちはふかひれや干しイソギンチャクや干しアサリなんていう高級食材は食えなくても構わない。それよりもそれを売った金で腹一杯食えて、仕送りもできるほうがはるかにありがたい。


 特にふかひれは手間もかかるらしく、かなりの高額を提示されている。俺たちの場合は、仕事にあぶれた港湾作業者がやっているからな、魚の扱いは慣れているし何より時間が余っているわけだ。


 高級食材ばかりだから、この作業に従事しているのは30人いるのだが、全員の1ヶ月分の稼ぎに匹敵する。これだけの稼ぎになるのなら、いっそのことこっちに職替えしたほうがいいといった意見まで出ている次第だ。だがまあ、現状は全てあんたたちのご厚意に甘えているだけだ。


 場所もそうだし、材料だって無償で提供されている。だからこそ、こんなすごい稼ぎになるわけだ、元手がかかっていないからな。それでも俺達だって、港湾作業に従事しているから、それなりに漁師の知り合いはいるし、海産物問屋の知り合いもいるわけだ。


 だから今回の稼ぎを元手に、場所を借りて材料は漁師から直接仕入れて干物加工を行う会社を立ち上げようという話になった。もちろん港湾作業をやめるわけではない。港湾作業者の契約でこの地へ呼ばれて出稼ぎに来ているわけだからな。だが、その作業が毎日全員に割り振られないから困っていたところだ。


 だったら持ち回りで、港湾作業と干物加工を分担しようということになった。50人の仲間がいるのだが、今までおおよそ月の半分しか仕事がなかったから、そうすれば収入は約倍になる。そうなれば、ここにお世話にならなくても、ちゃんと3度3度の飯にはありつけるし、仕送りも滞らなくなるはずだ。


 食事を与えてくれるだけでも大変有難かったのだが、こんな俺達でも稼げる手順を教えてくれたのは、本当に感謝している。心からありがとうを言わせてもらう。」


 キーチが深々と頭を下げると、それに呼応して奥に立っている仲間たちも腰を折って深く頭を下げる。


 はあー……トオルは彼らの自立を期待して、干物加工の手順を教えていたというわけか……さすがトオルだ。俺なんか、いつまでここに俺たちがいるのかとか、食材をいつまで供給できるだろうかといったことにしか頭が回っていなかった。港なんだから食材は彼らだって、入手できるわけだものな。


 後は加工して稼ぐ方法さえ学べばいいということだ。


「そうですか……それは素晴らしいことですね。皆さんの成功をお祈りいたします、頑張ってください。

 では、本日はタコの干物とナマコの干物の作り方を伝授いたします。ナマコの干物も珍味として珍重されますからね……しっかり覚えてください。」


『はいっ!』 

 キーチの仲間たちが姿勢を正して大きな声で返事をする。トオルを先頭にナーミとショウが一緒になって、干物加工の作業に取り掛かるようだ。今日も昼食抜きだが仕方がないな……。


 明日はサメ系ダンジョンの予定だから、ふかひれ食材を追加してやれば、彼らの会社の運営費用の足しにもなることだろう。その後も、この地に俺たちがいる限り、たまに様子を見に行って食材を提供してやってもいいしな。会社運営が軌道に乗るまでは面倒を見てやればいい。


 チートのほんの小さな善意から始まったことだが、ずいぶんと大きな輪になったな……チートも喜んでいることだろう……と思ってみてみたら、ちょっと肩を落としている……あれ?どうしてだ?


「やりましたね……彼らが自立すれば、もうチートさんが昼食の心配をしなくてもよくなりますよ。」

 なぜか元気のないチートに、喜びを伝えに行く……もしかして状況が呑み込めていないのかな?


「はあ……そうですね……よかったよかった……はあ……。」

 だがしかし、チートはよかったと呟きながら大きなため息をつく。


「寂しくなるなあ……。」


 そうしてぽつりとつぶやく……そっそうか……チート夫妻には子供がいないと言っていたからな。もしかすると、彼らは港湾作業者たちが自分たちの子供のように感じていたのかもしれない。世話を焼きたかったのかな……だが、彼らが自立してしまったら、もうここへは来ないはずだものな……。


 ううむ……これはこれで困ったな。

 ミニドラゴンには大きなタコ肉の塊を与え、気分転換に海岸沿いを散歩がてら飛行した。



 この日の晩飯は、タコ鍋にイカ刺しと酒のつまみに干しアサリと干しイソギンチャクが出た。干しアサリは味が濃く、噛む度に濃厚でジューシーなうまみが出てくるし、干しイソギンチャクは歯ごたえとうまみが楽しめた。特にアサリは干さずにそのまま酒蒸しにした時よりも、はるかにうまみが凝縮されているのには驚いた。


 高級食材と評されるわけだ。

 食事の席でチートが寂しがっていることを皆に相談して、日課の訓練をこなしてから就寝。


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