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イカタコ系ダンジョン挑戦

『ブジューッ』『ブジューッ』墨を吐きかけてくるのはタコだけではなく、イカ系魔物もそうで、しかもこっちのほうが強烈。前方が見えなくなるほど真っ黒いイカ墨が混じった水流を吹きかけられ、進めなくなる。


「突風!」

『ビュゴワッ』『シュシュシュッ』『シュシュシュッ』ショウの魔法で水流の向きを変え、放出元めがけてトオルがクナイを投げナーミが矢を射かける。


「スルメイカ系の魔物のようですね。これは天日干しにしてするめにしましょう、おいしいですよ。」

 トオルはご機嫌でクナイと矢を回収し、イカ系魔物を網に詰め冒険者の袋に収納した。


『ピカーッ』先へ進もうとすると、今度は前方からまばゆい光に照らされ、前を直視できなくなる。

『シュシュシュシュッ』『シュシュシュシュシュッ』トオルとナーミがクナイと矢を投じるが、一向に光は弱まらない。輝照石の光源に勝るとも劣らないくらいの光の強さだ。


『ダダダダダッ』『ザバッズバッシュパッシュパンッ』仕方がないので、盾を前方に構えたままダッシュして、光源のあたりで剣をやみくもに振り回すと、かすかな手ごたえがあった。


「蛍イカ系の魔物のようですね。さほど大きくはないので、光源めがけてはなったクナイや矢では的中できなかったのでしょう。剣で斬りつけていくしかなさそうです。

 生でも食べられそうですが、煮物にするのもいいですね。」


 トオルが、手のひらサイズの小ぶりのイカ系魔物を手のひらに乗せながらつぶやく。ううむ……洞窟壁面の岩の突起に当たると剣が痛むが……やむを得ないのかな……。



『ピカーッ』『ダダダッ』『ドゴバゴドガバンッ』

『ブジューッ』『ダダダッ』『ドガッボゴッバガンッ』剣が痛むのは嫌なので鉄パイプに持ち替え、ホタルイカ系魔物が出現したら、目をつぶって岩壁を鉄パイプで叩いて回る。


 意外とこの攻撃は有効なようで、擬態しているタコ系魔物でも強烈な墨が混じった水流を吹きかけてくるイカ系魔物でも、大まかな位置だけ把握して鉄パイプを振り回すことで対処できた。


 多少手がしびれるが仕方がない。トオルも鉄パイプを購入していたようなので、2人で対処しながら洞窟内を進んでいく。トオルに言わせると、このほうが身に切り傷がつきにくいから有り難いとのことだった。



「じゃあ、いよいよボスステージだ。ここでは巨大イカ系魔物……名づけてダイオウとなっている。津波のような凄まじい勢いの墨を吐くということと、十本の足が厄介となっているな。

 弱点はやはり目のようだから、ナーミ……何とか頼む。」


「わかったわ……イカの目ってどこにあるの?」


「イカ系魔物は角のような剣先があってその下が胴体ですが、スカート状の胴体の中から足が出ていてその足の根元付近に目があるはずです。」


「了解!やってみるわね……。」

 トオルから説明されて、ある程度の見当をつけたナーミが、こぶしに力を込める。


「じゃあ、行くぞっ!」

『ダダダッ』鉄パイプから剣に持ち替え、駆け足でドーム内に入っていく。


「うーん……予想通りでかいな……。」

 胴体だけでも十メートルは優に超える巨大イカ ダイオウは、俺たちが入っても気づかないのか、動こうともしなかった。それでも輝照石でその巨体を照らして目の位置を探っていると目を覚ましたようで、その触手を振るい威嚇してきた。


『シュシュシュシュッ』『バシュッバシュッバッ』すぐにナーミが矢を射かけるが、その長い触手で全て弾かれてしまい、当たらない。


『シュルンッ』「きゃあーっ!」

 さらにその触手のような長い足が伸びてきて、ナーミの体に一瞬で巻き付いた。


『ガッツガッツガッツ』すぐにトオルが長刀で斬りつけるが、人の胴体ほども太く吸盤のついた足は硬く、刃が通らない様子だ。『ガガッガッガゴッ』俺も急いで駆け寄っていき、一緒になって剣をふるい、巨大な足に斬りつけようとする。


『ブッジュワーッ』『ドゴンッ』すると、ものすごい勢いの墨を吐きかけられ、そのまま体を吹き飛ばされて、ドーム壁面に衝突した。


「かまいたち!」

『ビュゴワッ』『シュルルルッ』ショウが唱えたかまいたちの魔法で深く足に傷がつくと、ようやくナーミを放して足が引っ込んでいった。やれやれ……と思っていたら


『シュルルンッ』『シュルッ』『シュルッ』「またっ?」「いやーっ!」「うわっ!」

 すぐに足が伸びてきて、今度はショウとトオルとナーミがその長い足に絡みつけられる。必死でもがいているが、巻きついた上に吸盤で吸いついているので、簡単には逃れられない様子だ。


 やはりこいつも、攻撃を仕掛けると敵として認識して襲い掛かってくるようだ。


『ダダダダダダッ』「脈動っ!」『ダッ』「だりゃあっ!」

 剣を銛に持ち替えてからダッシュで駆けだし、脈動で跳躍して瞬間的に距離を詰めると、『ズッゴォーンッ』ダイオウの足のつけねの上にある丸い目を狙っておもいきり銛を突き立ててみる。


『ズッゴズッゴズガッ』更に間をおかずに足の上の内臓部分を狙って、銛を突き立て続ける。


『シュルルルルッ』胴体が収縮して、足を巻き上げているのが分かる。恐らく、トオルたちは解放されただろう。『シュルルンッ』ほっとするのもつかの間、今度は俺の体に触手のような足が巻き付き、『シュッ……ピュー……ドッガンッ』持ち上げられると勢いよく放り投げられ、またもや入り口側のドーム壁面に激突した。


「ごくごくごくっ」

 急いで冒険者の袋から回復水を取り出し、竹筒を一気にあおる。


『シュシュシュシュシュ』『バシュバシュバシュバシュバシュ』ナーミの矢が矢継ぎ早に射かけられるが、全て長い脚で払い落されてしまった。


『タタタタッ』「超高圧水流!」


 今度はトオルが跳躍してダイオウのすぐ目の前に達すると、やはり銛で残ったもう一つの目を突こうとするが、『バッシュンッ』触手のような足で体ごと吹き飛ばされてしまう。『ドッゴォーンゴロゴロゴロッ』トオルは高く飛ばされ勢いよく地面に衝突すると、その勢いのまま転がった。


「かまいたち!かまいたち!かまいたち!」


『ジュバッバッシュバッ』ショウが唱えると、ダイオウの足の根元に斬りこみが入っていくが浅く、分断するまでには至らない。『シュルルルッ』「うわあっ!」「いやっ!」逆に触手のような長い足が伸びてきて、ナーミとともに、またしてもつかまってしまう。


『ダダダダダッ』「脈動!」『ダッ』

『ズッゴォーンッ』勢いよく駆け出し加速してから大跳躍し、先ほどつぶした目の側に着地して思い切り銛をダイオウの体に突き刺す。


『ブンブンッ』触手のような長い足が捕まえに来るがうまく避け、『ズゴッバゴッ』何度も銛を突き刺していく。

『タタッ』『ズゴッバゴッ』すると回復したトオルも飛んできて、俺と同じ目をつぶした側で銛を突き刺し始めた。『シュシュシュシュシュッ』さらにその向こう側には、ナーミの矢が降り注いできたようだ。


 十本もの足があるが、恐らく自由に動かせる触手のような足は2,3本しかないのだろう。かなり動きは素早いが、全員で一気に攻め立てれば何とかなりそうだ。


「かまいたち!かまいたち!かまいたち!」

『バッシュンッバシュッシュパッッパァーンッ』ショウが何度も繰り返し唱え、ようやく一本の触手のような足が根元から切り取られた。


『ズゴッバゴッズゴッ』こうなればこっちのものだ。ひたすら巨大なダイオウの体めがけて銛を突き立てていく。『ブジュワーッ』『ドーンッゴロゴロゴロッ』しかし高圧の墨をもろにくらい、思い切り弾き飛ばされ地面を転がされる。


「ごくごくごくっ」

 冒険者の袋から回復水を取り出し、一気にあおる。ううむ……これまでで一番手ごわいボス戦のような気がする。凄まじく破壊力のある攻撃はないのだが、何せ倒せないのだ……。


『ダダダダッ』「脈動っ!」『ダッ』

『ズゴッドガッズンッ』気を取り直して一気に跳躍し、ダイオウの目の前に着地すると、またもや銛を突き立てる。『ズゴッバゴッズゴッ』すぐにトオルもやってきて、一緒に銛で突き始める。


『シュシュシュシュシュッ』『バッシュンバッシュバッシュッ』さらにナーミの矢とショウのかまいたちがさく裂。『ブジュワーッ』『ダーンッゴロゴロゴロッ』しかし、またもや大量の墨を吹きかけられて、地面を転がらされる。


 だがしかし、着実に俺たちの攻撃は効いているはずだ。しつこく何度も攻撃を繰り返す。何せ間を置くと、触手のような長い足につかまってしまい、動けなくなってしまうのだ。攻撃を継続しなければならない。

『ズゴバゴズゴッ』『ズッダァーンッ』何度も飛ばされては駆け寄り銛でつき続け、ようやくその巨体があおむけで倒れた。ようやく倒したのだ……。


「はあー……ようやく倒せたな……かなり苦労した。プッ……しかし……みんなの格好……。」

 ナーミもトオルもショウも、ダイオウの墨を浴びて全身真っ黒だ。目を開けると白目だけが白いので、そこだけ浮き上がって見える。


「別荘では皆が待ってます。ぐずぐずはしていられません。すぐに解体しましょう。ごくごくごくっ。」

 トオルが、回復水を一気に飲みながら立ち上がる。そうだな……早いところ帰らなければならん。


「ごくごくごくっ。」

 俺も回復水を飲んでからドーム壁面を見て回り、吸盤の形をした特殊効果石を見つけた。



「集軟体石と巨大イカゲソ6本ですね。明細書をご確認ください。」


 ダイオウの大きな足は一人2本ずつ持ち帰ったが、なにせ肩に担いでも地面に擦るぐらい長く巨大で、とても別荘まで持ち帰れそうもないため、2本だけぶつ切りにして全員で分担して持ち帰ることにして、残りは清算する。


 2本だけでも百人前以上はあるだろうというトオルの見立てだ。ダイオウの本体は短冊に切って各自の冒険者の袋と持ちきれない分はクーラーボックスと別途手持ちで対応。


 この日は防具屋に寄って装備を補修に出した。何せイカ墨とタコ墨を浴び続けたのだ。ちょっと生臭いし、壁に激突したりと結構いたんでもいる。クリーニングと修理でも一晩で直るそうだから有り難い。


 ナーミはついでに武器屋にもよって、矢を購入していた。弾かれたり折られたりと矢の消費が激しいと嘆いているようだ。俺とトオルは、銛を研ぎに出した。


 いつものように帰りは馬車をチャーターして別荘へ帰る。そろそろ、この町用の馬車を購入してもいいかもしれないと考えてきた。とはいえ、あくまでも1時しのぎで借りている別荘ではあるのだが……。



「お待たせいたしました。今日はイカとタコを干して干物にしましょう。干しイソギンチャクとふかひれづくりは継続してくださいね。」


 別荘へ戻るなり、待機していたキーチとその仲間たちに本日の作業手順を指示する。イカとタコ系魔物の内臓を取り出して、竹ひごに結び付けて引き延ばし、天日干しにするようだ。俺たちの晩飯と、明日のキーチ達の昼食用以外は、全て干物にするようだ。


 中庭に何本ものポールを突き立てそこにロープを渡し、イカやタコを干していくと、なんだか運動会か何かの万国旗のように見えてきた。



 この日の晩飯は、イカ刺しタコ刺しとイカリングフライにイカの塩辛だった。新鮮なイカ刺しは向こう側が透けて消えるくらいに透明で、軽くかむだけでとろけるようになくなり、ゆでてあるタコ刺しは噛めば噛むほど味が出てきて、どちらも酒が進む。


 何より最高だったのは内臓とイカの身を塩で浅漬けにしたイカの塩辛で、その複雑で奥深い味わいはまさに絶品。日本酒との相性も抜群だったが、ショウとナーミはご飯と一緒が一番おいしいとご機嫌だった。

 塩辛は保存食なので、煮凝り同様これから当面食卓に上ることになった。


「これ……ナーミお姉さんに返す……。」

 団らんの夕餉を楽しんでいたら、突然ショウが胸元から火の精霊球を取り出した。


「うん?どうしたんだ?2つの精霊球で、すごく大きな炎の玉を作れたりするんじゃないのか?」

 カンヌール王宮で作り出した、あの巨大な火球がいまだに忘れられない。それなのに……なぜ?


「僕はもう雷の魔法も使えるし、炎の玉もすごく大きなのを作れるから、2つも精霊球はなくても大丈夫だよ。」

 ああそうか……


「雑魚魔物は問題ないが、このところ海系ダンジョンのボス相手では、ナーミの矢はあまり効果を発揮していないからな。この精霊球はナーミと一緒に取得した精霊球だから、ナーミが持てば最大効果が得られるはずだし、持っていたほうがいいかもしれないな。俺だって地の精霊球がどれだけ役に立っていることか。」


「私も……水の精霊球のお世話になっていますね……。」

 俺の言葉にトオルも同調する。


「そうね……確かにあたしもちょっと困ったなって思っていたのよ、男の人みたいに弦の張りが強い弓を使えれば威力が増すのだろうけど、力がないし……いいわ、ありがとう。魔法効果を補助にするわけよね。

 でもなあ……これから毎晩魔法の訓練までやらなくちゃいけないのが辛いわよねー……。」


 ナーミはそう言いながら肩を落とす。まあナーミの場合は口だけで、実際は弓の訓練も毎日欠かしたことはないし、魔法の訓練だって精霊球を持っていた時は毎日欠かさず行っていたからな、大丈夫だろう……。


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