表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/216

今度のボスは巨大ザメ

「超高圧水流!」

『ジュバッ……ズッゴォーンッ』トオルが跳躍して、魔物の頭上から銛を打ち込み瞬殺する。


『シュシュッ……』『グゥォー』『シュシュシュッ』ナーミはまず両目を正確に狙い撃ち、苦し紛れに相手が大口を開けて襲い掛かってくるところを冷静に、その口の中に矢を射かけて絶命させた。


「捷きなる雷の精霊たちよ、友を信じ力を貸し与えたまえ。その術を使い敵をせん滅せよ。雷撃!」

『バリバリバリバリ……ズッゴォーンッ』ショウの雷撃は、大きなサメ系魔物でも一撃で仕留める事が出来た。やはり体が湿っている魚系魔物への効果は絶大だ。


 その後も、順に魔物たちを仕留めながらダンジョン内のほぼすべてのルートを踏破し、ボスステージのドームまでたどり着いた。収集したふかひれで冒険者の袋のアイテム枠はほぼ満タン状態だ。



「これまでの経緯から察すると、ボスはおそらく超巨大だ。しかも人食いざめとして恐れられている、ホオジロザメ系魔物のようだから十分注意するようにね。名付けてホオジロとなっている。」


 ボスステージ前で注意事項……といっても気を付けるようにとしか言いようがないのだが、全員気を引き締めてからドーム内へ入っていく。


「はあ……すごいね……。」

 それは見上げるような大きさの巨大ざめだった。体高5m体長は20mを越えるだろう巨大な魔物は、動かずにじっとしていた。


「どうする?このまま特殊効果石だけ取って逃げ帰るか?」

「いけません!あの巨大なふかひれをゲットしなければ……。」


 トオルがじっと上方を見上げる。体高5mのその上にさらに3mくらいの高さはあるであろう、その3角形の背びれは、ピンとヨットの帆のように張られている。あれをゲットするには倒すしかないのだが……。


「だったら、早いところ片付けてしまいましょ。」


『シュッ……ガツンッ』『ガァオーンッ……ブンブンブンブンッ』『ズンッ……ズンッ……ズンッ』おもいきり引き絞って放ったナーミの放った矢は、なんとホオジロの目に突き刺さり、目を覚ましたホオジロはその巨体を大きく揺り動かし、そのたびにドーム全体が振動しているように感じられる。


『タタタタッ』「超高圧水流ハイパー!」『シュタッ……ズッゴォーンッ』トオルが駆けだし、大跳躍してホオジロの背に到達すると、全体重をかけておもいきり銛を突き刺した。


『ブンブンッ』『ドサッ……ゴロゴロゴロッ』しかしあまりに激しいホオジロの動きに跳ね飛ばされ、トオルは地面を転がり、危うくホオジロの下敷きになるのを避ける。


「捷きなる雷の精霊たちよ、友を信じ力を貸し与えたまえ。その術を使い敵をせん滅せよ。雷撃!」

『バリバリバリバリバリッ……ドッガァーンッ』『カラーンコロンッ』ショウの放った雷撃は、正確にトオルが打ち込んだ銛にヒットし、凄まじい衝撃音とともに銛は大きく吹き飛ばされ地面に転がった。


『ブンッブンッ……ブンッ』ところが、そのダメージを全く感じさせないように、ホオジロの激しい動きは変わらない。


「だめだ……刺さりが甘かったか?」


「そうですね……皮が厚いし固すぎて、思い切り銛を突き刺したつもりでしたが、深くは刺さらなかったのでしょう。」

 トオルがやってきて、申し訳なさそうに頭をかく。


『ぐわおー』『シュシュシュシュシュッ』『バリバリバリバリバリッ』「きゃあっ!」

『タタタタタッ』大口を開けたホオジロの口の中を狙って果敢に矢を射かけたナーミが、悲鳴を上げながら戻ってきた。


「口の中ならダメージを与えられるかと思ってやってみたけど、金属の矢は全てヒットする前にかみ砕かれたわ。全然効果がないみたい。」

 ナーミはお手上げ状態のようだ。


『ブンッブーンッ……ドッゴォーンッ』おっと危ない……思い切り振り回される巨大な尾を、すんでのところで躱す。尾を叩きつけられたドームの壁は、表面の岩が破壊され破片が飛び散る。巨大な口だけではない、振り回す尾だけでも十分な脅威だ。


 しかもドームが破壊されていくから、いつまでもぐずぐずしてはいられない。だがしかし、こんな化け物倒せと言われても……大砲でも持ってこなければ無理だ……。


「あの背びれだけなら何とか切り取ることができるから、それだけ持って逃げない?」

 ショウがとんでもないことを提案してきた。


「あれを切り取るだって?パパが持っている剣を使っても、ひと振りじゃあ自信がないぞ……何せ皮は相当厚そうだし、しかも巨大だからな……そんなものどうやって切るというんだ?

 恐らくつむじ風的な範囲魔法なのだろうが、浅い傷ぐらいしかつかないと思うぞ。」


 以前の風系ダンジョンでは、ボス魔物は自らの羽を混ぜて飛ばすことにより破壊力を上げていたが、仮にそうやったとしてもあの分厚い皮で、しかも巨大な背びれを切り取ることは困難だろう。


「うーん……ちょっと違う。衝撃波があるでしょ……あれをもっと範囲を狭めて、強烈にしたんだ。

 名付けてかまいたち!さすがにホオジロの胴体を真っ二つにはできないけど、皮を切り裂くぐらいはできると思うよ。」

 ショウが自信満々に答える。ほお……かまいたち……風系魔法の新しいバージョンだな……。


「よしっ……だったら、背びれではなくホオジロの頭に切り込みを入れられないか?出来れば2重に……十文字に切り込みを入れてくれ。パパがジャンプして、その切り込みを入れたところに深く銛を突き刺してみる。うまくいけば倒せるだろう。」


 背びれを切り取ったところで、あの暴れまくるホオジロをかわして特殊効果の石を見つけて逃げかえれるとも思えない。さらに傷つけるだけ傷つけておいて、そのまま逃げるのもなんだ……倒せる可能性にかけてやってみよう。


「うんっ、わかった……じゃあいい?やってみるよ。かまいたち!かまいたち!」

『シュバッ……ザバッ』ショウが唱えると、ホオジロの頭部に血しぶきが吹き上がるのが見えた。


『ダダダダダッ』「脈動!……脈動!」


 ショウが攻撃した辺りを目指してダッシュで駆けだし、脈動を使って地面を盛り上げ『ダッ』ジャンプ『ダッ』更に前方にこしらえたもう一つの盛り上がりを使って大跳躍……ドーム天井に届くかのような大跳躍をして、ホオジロの頭部目指して降下していく。


『ズッゴォーンッ』落下の勢いも加算して、ショウがいれた十文字の切れ込みの真ん中めざし、銛を全体重込めて深く突き刺した。


 すごいな……長さ2m位の大きな切り込みが十文字に、ホオジロの背中に見事に入っている。こんなの俺でも……いや、竜の鱗をも貫くという日本刀のようなあの刀であればよもやとも思うが、海用に装備しているセラミック製の剣では、斬りこんだところで止まってしまうだろう。


 あの刀ですら、よほど精神統一して斬りつけなければ無理だ……それを魔法で行うとは……さすがカルネの娘……と一言で片づけてしまっていいのかどうかわからないが、ショウには魔法使いというか冒険者としての才能が、脈々と流れているのだろうと常々感じる。


『ブンッブンッ……ヅッガァーンッ』だがしかし、ホオジロの動きは止まらない。ありゃりゃ……だめか……銛の刺さりが浅かったのか?ダッシュで逃げて、ショウに雷撃……と思って逃げようとしたら


「そのまま持っていてください。」

 不意に頭上から声が……『ズッグォォーンッ』トオルが飛んできて、立ったまま踵で俺が刺した銛をさらに押し込んだ。


『ピクピクピクッ…………』するとホオジロは、少しけいれんを起こしたように小さく震えた後、動かなくなった。


「頭骨がありますからね、皮を切っても強く押し込まなければ突き破れませんよ。」

 トオルが笑顔を見せる。はあー……何とか倒せたのか……。


『ズガッズガッズガッ』それからトオルと両端から剣を何度も振るい、ようやく巨大背びれを切り取り、尾びれも切り取った。


「せっかくショウ君が切り込みを入れてくれたのですから、肉もいただきましょう。」

 そういってトオルが、頭の切り込み部分を広げて中の白身を回収し始める。サメ肉はクーラーボックスに詰め込んだ。


「多分、これが特殊効果石なんじゃないかしらね。」

 ナーミが持ってきたのは、真っ白で正三角形の石だった。サメの歯を連想させるな……。


 巨大背びれは俺が担ぎ、巨大尾びれはトオルとナーミとショウが3人がかりで運んでダンジョンを後にした。


「ご苦労様です……はあー……本日もボスを倒していただきましたか……ありがとうございます……。」

 巨大背びれと巨大尾びれをカウンターに並べると、さすがの受付嬢も絶句していた。


「えっ……せっかく持ち帰ったのに清算しないのか?」

「はい……今はまだ特殊効果石だけですね。」


 ふかひれはすべて持ち帰るとトオルが言い出したため、集サメ石のみ清算する。人気がないため報奨金は高めに設定されていて、C+級ダンジョン分よりは少しだけ多めであった。武器屋に寄って、銛の先端を鋭く研いでもらうよう依頼し、巨大ふかひれは乗合馬車には積めないため、馬車をチャーターして別荘まで戻った。


「おかえりなさいませ、ご苦労様でした。」

 別荘は昨日のように人垣は作られてなく、閑散としていた。


「本日も、昨日同様多くの港湾労働者たちが詰めかけたのですが、教わった通りにキーチさんにお手伝いをお願いしたところ、数人の元料理人という方たちとともに、調理から盛り付け皿洗いまでやっていただきました。


 おかげさまで、2時には全ての方たちが昼食を終えることができて何よりでした。明日からもまた、お手伝いいただけるようで大変助かります。あっ……キーチさん……どうぞ……。」


 中庭の隅にきちんと片づけられたテーブルと椅子を指しながら、チートが笑顔で頭を下げる。やはりキーチが率先して手伝いを呼び掛けてくれたのだろう。有難いことだ。

 さらに俺たちの帰りを待っていたのか、日焼けした肌の大柄な男が管理人室から出てきた。


「おお……ワタルさん……だったか……俺たちもただ食べさせてもらってばかりじゃあ申し訳ないから、出来ることは自分たちでやろうと呼びかけ、手が空いている奴らで調理など手伝うことにした。


 そうして分かったことがある。ここで振るまわれる料理は、王室が金を出して俺たち労働者に振るまってくれていると思って、遠慮なくいただいていたのだが、実はここにいるチートさんのご厚意と、あんたたちの好意で賄われていることが分かった。まさか、個人レベルでこんなことをしてくれているとはね……。


 そこで俺たちも考えた……このまま甘え続けるわけにもいかないだろうと……それで、仕事にありついたやつらが酒を我慢して、その分を拠出することに決めた。そうすれば、自分が仕事にあぶれた時でもここへきて、温かい昼飯にありつけるわけだ……他人のためではなく自分のためだと言い聞かせてな。


 もちろん、今日振るまわれたあんな新鮮でプリっぷりのエビの対価なんて払えるわけもないが、それでも少しでも足しにでもなればとして集めるつもりだ。明日から持ってきてチートさんにお渡しする。

 それで何とか……今後も続けていただくようお願いしていたところだ。」


 キーチがそう言って少し恥ずかしそうにほほを染めながら、笑みを浮かべる。

 おお……なんだか素晴らしく、また大きな動きになってきたようだな……大変好ましいことだ。


「それはいいことですね……ついでと言っては何ですが、お願いしたいことがございます。

 ここにあるのは、サメ系魔物のヒレ……いわゆるふかひれです。これを天日干し……。」

 すると突然トオルが、キーチにふかひれの身の取り出しと天日干しの説明を始めた。


「もちろん当日の作業にあぶれた、暇な方たちだけでよいのです。常に日の当たり方を見ながら、ひっくり返したり位置をずらしたりして頂く。しっかり天日干しをした絶品のふかひれは、生のヒレの十倍から数十倍の値段がつきます。それを売ることにより、今後の食費に役立てるのです。」


 トオルが驚くことを提案する。確かにそんな手間暇かけてでも売値が上がるのであれば、やる価値はある。しかも仕事にあぶれた港湾作業者であれば、1日外で立ち仕事でもさほど苦にはしないことだろう。

 ギルドで収穫したヒレを清算しなかった訳がようやく分かった。俺達が食べるためではなかった訳ね。


「ほお……そんな仕事をくれるのかい……いいね……明日にでも手先が器用でまめで居眠りなんかしないやつらを見繕ってくるから、やり方を教えてくれないか?」


「いいですよ、明日はダンジョンを早めに終わらせて、昼一には戻ってくるようにいたします。そこで説明いたしましょう。」


「わかった……じゃあ明日もよろしく。」

 そう言い残してキーチが帰っていった。


 俺たちにできることは食材の供給位だからな。彼らに手作業してもらって、稼いでいただければそれに越したことはない。少しでも蓄えができれば、この行いが継続できる。なにせ、人数が増えてきているようだからな。チート一人の善意だけでは賄えなくなってきているのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ