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海系ダンジョン挑戦

「こっちのようだな……。」


 ギルドで案内されたダンジョンの場所は港の中のコンクリート製の堤防を越え、海側の階段を下りていくようになっている。階段を下りた先は長い側道があり、岸壁側は延々と続くコンクリート壁となっていて、その壁にはいくつものドーム状の穴が開いていて、金網をかけ施錠された扉にはそれぞれ番号札が貼られていた。


『ガチャン……ギイッ』30と書かれた扉の南京錠を外し、扉を開け中に入る。


「じゃあ、忘れずに盾を装備してくれよ……俺の盾が一番大きいから、俺が先頭で隊列は1列縦隊だ。」


 俺が先頭に立ち、続いてトオルにナーミで、最後がショウという隊列で1列で進んでいく。ショウは杖と大きな盾を装備しているので、最後尾とした。


『シュシュシュシュシュシュッ』『ドガドガドガドガドガドガッ』突然前方に掲げる盾に、激しい衝撃が……。


 ダンジョン内は幅4m高さが2.5mほどの洞窟。海中洞窟ということで、じめじめと湿気が高く、また壁面も天井も地面も苔か海藻に覆われていて、気を付けて歩かないと滑って転びそうになる。海用防具の足は底面にゴムを貼り付けてあるので、何とか滑らすに歩くことができる。


「なんだこれは……ずいぶんと細い魚……トビウオ系のトビッギョだな……海系のダンジョンでは、こいつが高速で飛んでくるようだから、注意が必要だ。小さな魚の体当たりとはいえ、急所に当たると大けがをすることもあるからね。このダンジョンでは盾は必須となる。盾を構えてさえいれば自滅してくれるから有り難い。


 焼くとおいしいらしいから、網に入れて持っていこう。」

 海系ダンジョン別添資料を確認し、魔物を特定する。食べられる魔物というのはラッキーだな。海系のダンジョンに出てくる魔物は変わっているので、ここに生息する魔物の特徴を別途記載したとカルネが言っていた。


 トビッギョを携帯している袋状の網に入れてから冒険者の袋に収納する。この網一つがダンジョン取得アイテム一つとしてカウントされるので、網に詰められるだけ詰めたほうがお得だ。冒険者の袋に保管していた肉は全て別荘の冷蔵庫に入れてきたので、十分な余裕がある。


『ブジューッ』『ブジューッ』少し歩くと、今度は消防車の放水のような激しい水流が前方から浴びせられた。


「ちいっ……こんな大きな盾を構えていたら、先へ進むのもままならんな……。」

 水圧がすごすぎて、前へ進むどころか少しずつ押され気味になってきた。身をかがめて思い切り踏ん張る。


「突風!」

『ビュゴワッ』ショウが唱えると、前方からの圧力が軽くなった。突風で水流を押し戻している格好だ。


『ダダダダッ』『シュパシュパッ』『シュシュシュッ』すかさずダッシュで駆けだし、放水地点めがけて剣をふるう。トオルも放水地点めがけてクナイを、投げつけたようだ。


「ふうっ……口先がとんがったずんぐりした魚……鉄砲魚系のテッポギョだな。こいつの放水能力は、軽く百mを越えるとなっているから、こんなやつを消防士にすると便利だろうな。こいつも食用にできるようだ。」


 魔物が人の役に立つことなど、食べる以外にはあり得ないだろうが、うまく飼いならせないものか……。

 テッポギョはトオルが網に入れて収容した。



「うおっうおっうおっ」

『スタッスタッスタッ』更に進むと、今度は腰くらいまでの大きさの黒い影が、地面を小刻みに跳ねながら突進してきた。


「わあー……かわいい……。」

「まてっ……危険だ!」

 その愛くるしい姿に、ショウが駆け寄っていこうとするのを寸前で止める。


『グワッ……バッチーンッ』そいつはおもいきり大きく口を開くと、ものすごい勢いで噛みついてきた。危ないところだった、止めなければショウの手はかなりの深手を負ったことだろう。


「アシカ系の魔物、アッシークンだ。特殊効果石に引き寄せられる魚系魔物を捕食する魔物だな。鼻から毒液を吹き付けてくる場合があるのと、噛みつき攻撃に息が臭いとなっている。正面から近づくのは厳禁と書いてあるな……注意するようにね。」


『ブシュワッ』『ビチャッ』言ってるそばから、鼻から毒液を吹き出した。危うく避けたが、ばばっちい……。

『ブシュッバシュッ』『カンカンッ』更に素早い動きで、小石を口に咥えては、全身のバネを使って投げつけてくる。盾を持っているから避けることに苦労はしないが、忙しい奴だ。


『シュシュシュッ……グザグザグザッ』トオルがすぐさまクナイを投げつけるが、刺さることは刺さったのだが、アッシークン自体に変化はない。クナイを喉元に突き刺したままで平気でいる様子だ。


「投げナイフ等では、その分厚い皮膚と脂肪を通さないと書いてあるな……仕方がない、脈動!」

『ダッ……スタッ』『ズッパァーンッ』脈動で大きく跳躍し、アッシークンの背後へと回ると後ろから袈裟懸けに斬り捨てた。ちょっと卑怯な気もするが止むを得まい。


「肉は食べられますかね?」


「えーと……肉は食用可能となっているが、脂肪が厚く肉も少ないし皮も小さいので、もっと大きな獲物アリとも書いてあるぞ。わざわざ皮を剥いで肉を調達するまでもないということなんじゃないかな……。」


「そうですか……じゃあ、あきらめましょう。」

 さすがのトオルも、その大きさを見て利用価値が低いと見たのか、回収はあきらめた様子だ。


 しかし1頭だけだったから、結構余裕をもって資料を調べながら戦えたが、群れでいきなり襲い掛かってこられたら厄介だったろうな……。



『ブジュー』『ブジュァー』少し歩くと、またもや強烈な水流が襲い掛かってきた。『シュシュシュッ』盾を両手持ちにして水圧に耐えようと身構えるが、あれ?すぐに消滅した。一体どうしたのか、前方を見回すと……


「放水の根元に魔物が潜んでいるんでしょ?さっき見たから覚えたわよ。放水の角度から、魔物の位置を大体つかめたから、そこを狙って矢を射たのよ。」


 ナーミはそう言いながら先へと進んで、テッポギョと矢を回収した。その後もトビッギョやテッポギョの襲撃を受けながらも進んでいくと、洞窟の先に巨大ドームへと通じる入り口に達した。


「このダンジョンのボスは、象アザラシ系の魔物となっている。名付けてゾーアザだな。こいつもアッシークンよろしく鼻から毒を吹き出すし、大きな口でかみつかれたら致命傷なようだ。また、皮も厚いし脂肪も厚いので、クナイや矢は通じにくいとなっているな。正面攻撃は厳禁だ、いいね?


 それと……毛皮が高く売れるらしいから、ショウ……炎系の魔法は禁止だ、いいね?」


「えっ……ええー???」

 全員に注意点を伝えたら、広いドーム内へ入っていく。その先にいたのは……


「ありゃりゃ……団体さんだ……。」

 体長5mはありそうな巨大アザラシが群れでドーム内のあちらこちらの突き出た岩の上に、寝そべっていた。恐らく十頭はいそうだな……これまでのダンジョンの中で一番厄介かもしれないぞ……。


「ぱおーっ……」

 俺たちが入ってきたことを認識したのか、一番近いゾーアザが雄たけびを上げた。


『シュッ……ズゴッ』「きゅーむ……」すぐに矢が射かけられ、大口を開けて雄たけびを上げていたその口の中に命中。ゾーアザは即座に動かなくなった。いくら体を脂肪の鎧で包んでいても、口の中までは防御できなかったということだ。だがしかし、いくら大きな口でも十m以上離れた場所から射抜くなんて、さすがナーミだ。


『ダダダダダッ』「脈動!」『ダッ』駆け出して加速すると、脈動を使って大ジャンプ。

『ズゴッ』「きゅーん……」はるか高みから急降下して全体重かけてゾーアザの脳天に剣を突き刺して絶命させる。


『タタタッ』「超高圧水流!」『タッ』トオルが……以下同文……。


「えっ……えっ……えーと……。」

「ぱおーっ……」『シュッ……ズバッ』


『ダダダダダッ』「脈動!」『ダッ』『ズッゴンッ』

『タタタッ』「超高圧水流!」『タッ』『ズバンッ』


 先手必勝とばかりにナーミの矢が、俺とトオルの脈動と超高圧水流を使っての大ジャンプからの脳天への一撃がさく裂し、次々とゾーアザを倒していく。


「捷きなる雷の精霊たちよ、友を信じ力を貸し与えたまえ。その術を使い敵をせん滅せよ。雷撃!」

『バリバリバリバリッ……ドッガァーンッ』すると突然、ドーム端にまばゆいばかりの閃光がきらめき、一番奥のゾーアザを直撃した。


「捷きなる雷の精霊たちよ、友を信じ力を貸し与えたまえ。その術を使い敵をせん滅せよ。雷撃!雷撃!雷撃!」

『バリバリバリバリバリバリッ……ドッガァーンッガンガンッ』「きゅうん……」

 さらに連続してゾーアザめがけて閃光がきらめき、一番奥にいたゾーアザは動かなくなった。


「おおー……やったじゃないかショウ……ついに雷魔法の完成だ。しかも……初級魔法だっていうのに、すごい威力だな、巨体のゾーアザを一連の攻撃で葬ってしまった。」


 なんとついに、ショウの雷魔法炸裂だ……恐らくドーム内に入ってからもずっと呪文を唱えていたのだろうな……その間俺たちでゾーアザの群れを倒し続けていたのだが、何とか間に合ったというわけだ。


「次々と倒していった方がいいわよ……せっかく使えるようになったんだから……確実に魔法効果を発揮できるようになるまで……。」


「うんっ!捷きなる雷の精霊たちよ、友を信じ力を貸し与えたまえ。その術を使い敵をせん滅せよ。雷撃!雷撃!雷撃!」『バリバリバリバリバリ……ガガーンッ、ドッゴォガッコドッガーンッ』「きゅうん」続けとばかりに放った3撃も命中、またまたゾーアザを葬った。


「いいねえ……続けざまに成功だ……あとは、どのような範囲攻撃が出来るか、試していく必要性があるな。電気は濡れた体などには流れやすいっていうから、この魚介類系のダンジョンでは効果を発揮しそうだ……よくやった……。」


 本当に素晴らしい……まさかこんなに早く雷の魔法が完成するとは……やはりショウには魔法使いの才能があるのかもしれないな。


「本当に素晴らしいですよ……ゾーアザの頭頂部に小さな焼け焦げ跡ができているだけで済んでいます。これなら毛皮も高く売れるでしょう。」


 ゾーアザの解体に入ったトオルもべた褒めだ。俺だって極力毛皮に傷をつけたくないから、脳天に一撃を食らわせたのだが、剣を突き刺した分は穴が開いているからな……ナーミの口を狙った矢と、ショウの雷撃攻撃が毛皮のダメージが少ないだろう。


 うん?いや待て……やはり趣旨が違ってきている……


「意外と早くボスステージまで来ることができたけど、まだ昼飯前だからな。ここで一旦昼食休憩としよう。

 どうせ、ゾーアザを解体するんだろ?血なまぐさくなる前に、飯にしようじゃないか。」


「そうですね……じゃあ、ちょっと待っていてください、準備をします。」

 すぐに調理セットで、トオルが料理を始めた。


「手伝うわよ……。」

 ナーミがトオルの手伝いをかって出る。


「料理ができるまでに、ショウ……精霊球じゃなかった特殊効果の石を探すとするか……。」

「うんっ」

 ショウと一緒に、ドーム奥の壁を注意してみて回る。


「これじゃないかな……」

 ショウが紫色のいびつな球体をつまみ上げる。球というよりラグビーボールのような流線型をしている。どことなく魚の胴体に見えなくもない。


「できましたよー……。」


 ちょうど見つかったところで昼食の準備ができたようだ。昼食は先ほど倒したというか自滅したトビッギョと倒したテッポギョの焼き魚だった。トオルの持っている調理道具は、当然ながらガスコンロなどではなく、炭の種火を常に持ち歩いて、炭火を熾して焼くので、炭火焼きの焼き魚はまさに絶品だった。米が進む。


 魚系の魔物がいるダンジョンも悪くないと、しみじみ感じる。


 その後、ゾーアザの毛皮を剥いで解体して持てるだけ肉を持っていくことにした。クーラーボックスの中に氷を入れたのを各自持ってきているので、冒険者の袋のほかにも詰め込めるだけ詰め込む。

 一つはミニドラゴン用で、残りの大半はギルドで売り払うことに決めた。



「ご苦労様でした、集魚石とゾーアザの肉2百キロとゾーアザの毛皮10頭分ですね。明細書をお受け取りください。」


 予想通りゾーアザの毛皮は、切り傷が小さいほど引き取り値が高いようで、更に枚数が多かったため結構な収入になった。集魚石とかいう特殊効果石と肉や毛皮と合わせると、B級ダンジョンでの収入に近いくらいはあるんじゃないかな?


 ボス魔物もてこずるというほどではないため、これくらいならかえって普通にB級ダンジョンをこなすよりも、全然楽なのではないかと思える。まあ別に、楽したいがためにこの地へ来たわけでは決してないのだが、海系ダンジョンもいいなと思い始めてきた。


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