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冒険の先にあるものⅢと、救出

 まだ日の高い10時にはダンジョン手前に辿り着いたため、平地を見つけてミニドラゴンの背から装甲車の荷台を下ろして水平だしをする。それから荷物を荷台の中に納め、ミニドラゴンに番をするよう命じてから次のダンジョンへ向かう。


 2つ目のダンジョンも昨日同様B+級の火のダンジョンで、ボスはミノチャンだ。かなり苦戦が予想されるが、準備は万全だ、負ける要素はないはずだ……。



「ショウは……というか、エーミは冒険者を辞めた後はどうするつもりなんだい?」

 火のダンジョンを無事攻略して、夜も更けかけていたので、予定通りダンジョン手前のポイントで野営することになった。


 今日はショウと一緒に野営の見張り番だ。火のダンジョンは回復水も結構使ったが、何とか攻略できた。やはり一度攻略して日が浅いせいもあるのか、戦い方が頭に入っている分、何も言わなくてもみな動けたので、ボスのミノチャンもさほど苦労せずに倒すことができた。


 何より、ショウの2つの精霊球でダブルの魔法効果も大きかったし、技能が向上したというよりも、戦い慣れしてきたと言ったほうがいいのだろうがな。


「えっ?……エーミは……パパとずっと一緒にいる……。」


 エーミは質問の意味を誤解したのか、ほほを膨らませて不満げに答える。うーん、こんなになついてくれていると、本当にかわいくて仕方がない……。エーミと一緒にいると、気持ちがほんわかと温かくなる。


「ああっ……悪い悪い……パパはずっとエーミと一緒だよ……その先のことだ。パパだってずっと冒険者を続けてはいられないからな。エーミたちはパパが辞めた後も冒険者を続けていって、その先はどうするのかと思って聞いているんだ。」


 恐らくナーミと一緒に、冒険者を続けることになるのだろうな……腕のいい冒険者になれば、すぐにいいパートナーが見つかるさ。


「ええー……パパは……どうするの?」

 またこの質問か……


「パパは……どこか田舎町に土地を買って、剣術を教える道場を開こうかと思っている。だから、それまで冒険者として一生懸命稼がなくちゃならないけどな。」

 昨日トオルに話したことと同じ話をする。


「じゃあ、エーミも一緒にその道場で、魔法を教える。」


 ショウ……というかエーミが笑顔で答える。ありゃりゃ……そうか……まあそうだな、精霊球を持ちさえすれば、だれでも魔法を使えるようになるが、その魔法効果を最大限に発揮するには、それなりの使い方というものが存在する。ただひたすら、呪文を唱えれば相手を倒せるということではない。


 当たり前のことだが、戦う相手によって魔法耐性や動きの速さ、体の大きさや戦いの場なども考慮しながら、魔法の種類と魔法効果を選択しなければならない。ショウが今持っているのは、風と火の精霊球だけだが、少なくともこの2つの精霊球の魔法効果を、最大限に引き出して使用していると、ショウを見ていると常に感じている。


 この後、さらに地の精霊球と水の精霊球も持たせるつもりだが、一そろい揃えたら、ショウは本当に稀代の魔法使いになるのではないかと想像しているくらいだ。やはりカルネの娘ということなのか、冒険者としての素質をもって生まれたと感じている。


 そんなショウであればこそ、最大限の魔法効果を発揮する戦い方というのを、わかりやすく教えることができるだろうと、容易に想像できるのだ。


「わかった……じゃあ、エーミも一緒に道場を開こうな。精霊球も1揃いか2揃分を清算せずに持っていたほうがいいな。そうすりゃ、生徒も魔法効果を試せるわけだ。引退までにC+級のダンジョンで精霊球を集めておくとするか。」


「うん!そうだね……。」

 ショウもうれしそうだ。いずれ反抗期なんてものが来て、親離れしていくのだろうが、今はこう言っておいたほうがいいのだろうな。


 俺の本音としては、俺が将来開く道場にトオルがいてショウがいて、それぞれ生徒を抱えてくれれば道場は繁栄するし、俺も寂しくない。トオルは嫁さんもらうとして、ショウというかエーミは、できれば婿をもらって一緒に暮らせたらどれほど素晴らしいか。


 ついでに道場の隣に、ナーミが経営する花屋があったりしたら……それはもう俺にとって夢のような老後の生活だ。まあ、そんな俺だけの都合を言ってはいられないから、皆が一番幸せになれる道を一緒に考えていけたらいいな……。



『バサバサバサッ』『ズザザザザッ』『ダーン……ダーンッ』翌朝、騒々しい音で目が覚める。寝袋を使い外で寝ているために、音がもろに聞こえてくるのだ。


「うーん……一体どうした?」

 すぐに跳ね起きて、トオルに確認する。


「わかりません……つい今しがたからですね……どこかで誰かが戦っているような感じです。」


「ううむ……わかった……ナーミ……ショウを起こしてくれ。すぐに着替えて様子を見に行こう。

 道に迷った旅人が、魔物にでも襲われていたら大変だ。」


「わかったわ……。」

 すぐにナーミが装甲車の荷台に駆け寄っていく。


「ふえー……もう朝なの?」

 眠そうな目をこすり、パジャマ姿のエーミが荷台のドアから顔を出す。


「すぐにショウになって着替えて頂戴。出発するわよ!」

 ナーミがショウに大声で指示を出す。


「はっ……はい……。」

『バタンッ』すぐにドアがバタンと閉じた。


『ガチャッ』寝袋を片付けて焚火などの後始末をしていたらショウが出てきたので、急いで荷台をミニドラゴンの背に括り付け出発する。音がする方向は、どうやら北のようだ。


『ザッザッザッ』『ドーンッ……ドーンッ』『ズザザザザッ』『ボワーッ』ミニドラゴンを先頭に、腰の高さほどもある下草をかき分けながら進んでいくと、音がだんだんと大きくなってきた。


「ぐぅおーんっ!」


 ミニドラゴンがいななく。着いた先は切り立った崖になっていて、20mほど下から続く草原の先には魔物たちに囲まれた2人の人影が……。一人は剣を持ち、もう一人は大きな銃を構えて威嚇しているが、魔物の群れの数が多すぎて、すぐにもつぶされてしまいそうだ。


「ナーミっ、ショウっ、2人を囲んでいる魔物たちを攻撃してくれ。2人を保護するのが先決だ。このままミニドラゴンを突っ込ませて、草原で荷台を下ろしてその中に保護して、それから魔物たちを一掃する。

 トオルは一緒に来て、ミニドラゴンから荷台を下ろすのを手伝ってくれ。」


「わかったわ。」

「うんっ!」

「わかりました。」

『シュシュシュシュシュッ』すぐにナーミの放つ矢が、魔物たちの群れに向かって雨のように降り注ぎ始める。


「火弾!火弾!火弾!火弾!」

『ボワッボワッボワッボワッ』遅れまじと、ショウの放つ炎の玉も、魔物たちに向かって降り注いでいく。


「ようし行けっ!あの2人を守るんだ!」『ぺちっ』ミニドラゴンの尻を叩く。

「ぐおーんっ!」

『ズザザザザザッ』ミニドラゴンは、ものすごいスピードで崖を滑り降りると、そのまま草原を駆けて行った。


「よしっ……行くぞ!」

「はいっ!」


『ダダダダッ……・ズザザザザザッ……ダダダッ』トオルと一緒に駆け出し、崖を滑るように駆け下りていく。魔物は大量のホーン蝙蝠とチンパニーランスの群れと数体のヒグマンに加え、あれは……なんだ?青色の皮膚というか鱗をまとった……竜?竜族が一体どうして?


「ぐぅぉーんっ」

 ミニドラゴンがいななくと、体高3mほどの2頭の竜がこちらに振り返った。ミニドラゴンと同じく成獣ではなく子供のようだが、それにしても野生の竜がこんなところをうろついているのだろうか?


「よしっ、そこに停まれ……今荷を下ろす……トオルっ手伝ってくれ。」

 魔物たちの群れから数十m手前でミニドラゴンを停め、荷台を急いでほどいて下す。


「ぎゃぅおーすっ!」

「ぎゃわーっ!」

 自由になったミニドラゴンは、2頭の竜とともに争いながら草原を下っていった。


「こっちだ!こっちへ逃げてきてくれ!」

『ガチャッ』荷台のドアを開けながら2人に向かって叫ぶ……が、魔物たちが多すぎるようで動けそうもない。


「だりゃあっ!」

『ダダダッ』『シュッパパーンッ』すぐに魔物の群れに駆け寄っていき、剣を持った旅人に今にも襲い掛からんとしていたヒグマンめがけ、右側面から袈裟懸けに斬りつける。


『シュシュシュシュシュッ』トオルのクナイがさく裂し、取り囲んでいたチンパニーランスたちを蹴散らした。

『ボワッボワッボワッ』『シュシュシュシュッ』更にショウの火弾とナーミの矢がホーン蝙蝠たちを次々に撃ち落としていく。


「さっ……早くこっちへ。」

 2人を連れ、魔物たちの包囲を脱出する。


 一人はきらびやかな刺繍の入ったシャツとズボンに加え、真っ赤なマントをつけ、手には柄に宝飾を施された剣を握っている長身の男。もう一人も長身だが、丸眼鏡に口ひげを生やし、大きな外套と手には巨大な銃を構えている。


 およそ冒険者とは思えないが、旅人……というか一般人とも思えない格好だ。


「早く中へ入ってくれ……ここなら少しは安全だ。中にあるクーラーボックスの中に回復水と解毒薬が入っているから、必要なら使ってくれて構わない。」


 装甲車の荷台へ2人を導き入れようと促す。回復水の予備はまだ10本ほど余っていたし、解毒薬はあまり使わないと思ったから5本だけ予備として入れてある。


 俺たちはカルネに教えてもらった構造図があるから罠の毒池にもはまらないし、毒蛇に噛まれることもないから解毒薬の消費は非常に少ないうえ、最短ルートで進むからB+級ダンジョンですらも8時間ほどで攻略してしまうが、これは、あくまでも特例でしかないと、俺は思っている。


「おお有難い……さっ……早くこの中へ。」

 丸眼鏡の銃を持った男が剣を持った男に手を貸し、荷台へと乗りこませる。

『ガチャッ』そうしてドアを閉めロックをかけた。あれ?彼はいいのかな?


「助太刀かたじけない……私も微力ながら戦わせていただく。」

 丸眼鏡の方は、そう言いながら銃を構えた。


『バーンッバーンッ』『バサバサバサッバサバサッ』男が引き金を引くと乾いた音が鳴り響き、追ってきた数匹のホーン蝙蝠が一気に撃ち落とされて地上に落ちた。散弾銃のようだな……残り弾を気にしていたのか、あれだけの数の魔物相手では威嚇だけで、つかえなかったのだろうな。


 この世界でも銃は存在する。しかし前世の映画などで見るような破壊力の強いものではなく、恐らく西部劇に出てくる程度の威力だろう。拳銃もライフルも散弾銃も存在するが、非常に高価であり、またボス魔物のような頑丈な体に対しては効果が薄い。そのため、冒険者に銃を持つ者はいない。


 しかし、対人ということになると話は別だ。甲冑をつけた冒険者ではなく、常人であれば急所に当たりさえすれば十分相手を仕留めることが可能であり、人買い商人たちのように護衛が銃を持つことはよくある。


 恐らく高貴な方の警護のお付きであろう、弾1発だって非常に高価な散弾銃を持っているのだからな。あれなら、少数の雑魚魔物であれば十分対処できるだろう。


 散弾銃であれば口径は大きいからその分破壊力もあるし、何より小さな玉が広がって当たるので、甲冑の関節部や鎖帷子の鎖の間を突き抜けて、倒せないまでも動きを止めるくらいはできそうだから、対冒険者でも使えるかもしれないな……。


「だりゃあっ!」


『シュパッパァーンッ……シュッポッ……シュバッ……ザバッ』距離を詰めてきたチンパニーランスたちを、まとめて斬り捨てていく。平原では彼らの動きも制限される。樹上では素早い動きができても、地上を走るのはさほど早くはないようだ、簡単にとらえることができた。


「ぐぉーんっ!」

 ヒグマンが後ろ足で立ち、その巨体で威圧してきた。


『ダダダッ』『シュッパァーンッ……パンッ』すぐに駆けより懐へ入り込むと、奴の右わき腹から上へ突き上げる頭にして剣を振り上げ、左肩から抜けた剣を今度は右肩から袈裟斬りにする。

『ズッダァーンッ』ヒグマンは血しぶきを噴き上げながら、仰向けにそのまま倒れた。


「きぃきぃーっ!」

『シュ……シュッ……』息つく暇もなく、先を尖らせた木の棒を持ったチンパニーランスたちが、その槍のような木の棒で突きかけてくる。そう……魔物たちの群れは、まだまだ尽きる様子はなさそうだ。


『シュシュシュシュシュシュシュシュッ』後方から矢が雨のように射かけられ、『ボグワッ』『ボゴワッ』直径5mを越えそうな巨大な炎の玉が、ホーン蝙蝠とチンパニーランスの群れに襲い掛かっていくが、後から後から、どこにこれだけの魔物が潜んでいたのかと思えるぐらい、魔物たちが群れてきているようだ。


「ぐぎゃおーすっ」


「大変です、水竜が戻ってまいりました!」

 トオルが叫ぶ!『ズザザザザッ』3mほどの巨体の青色のうろこを持つ竜が、1頭装甲車の荷台に駆け寄ってきている。ううむ……ミニドラゴンは大丈夫か?


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