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発注

「そうですね……カンヌールは、ペン型と造花型の隠しカメラと親機のセットと、ボタンタイプの盗聴器をそれぞれ10個ずつ……それにカメラ搭載のドローンが5機に集音マイクが10セットでお願いします。


 仕込むのが簡単だからと、あまりに大量に仕掛けても、それを確認する要員に限りがありますからね。特に24時間近く監視するとなると、この辺りが限界です。


 それとは別に……このカタログの最後に掲載されている、テレビ無線なるものに興味があります。これは、カンアツとサーケヒヤー間で行われている無線通信に、映像が加わるのでしょうか?

 もしそうであれば、ぜひとも2セット購入して、カンヌール王宮とサーケヒヤー王宮間で通信を行いたいのです。そうすれば直接王様からご指示がいただけます。」


 サーケヒヤー王宮へ戻って、ジュート王子とホーリ王子に、南の大陸の最新機器を紹介して選んでいただく。

 カンヌールはセーサとサーマの飛竜隊2班が、調査に当たると言っていたからな。隊長副隊長含めても62名しかいないのでは、交代で張り付くとしても、これくらいが限界だな……。


 ジュート王子はスパイアイテムより、テレビ付きの無線機の方に興味がある様子だ……確かに現状は電信装置しかないからな……いちいち暗号化して一方通行の通信では、意志の伝達に時間がかかりすぎるからな。その点最新鋭の無線通信機はデジタルで、自動的に暗号化通信されるらしいから最適だ。


「カンアツはペン型と造花型とぬいぐるみ型の隠しカメラと親機のセットとボタンタイプの盗聴器を各30個ずつと、カメラ搭載のドローンが5機と集音マイクが10セットはカンヌールと同じですな……。


 カンアツでは不逞な輩が追いものですから、隠しカメラや盗聴器は大量に必要となります。

 それと……カンアツでもテレビ無線機のセットを購入したいです……。」


 ついでホーリ王子がカンアツとしての必要数を申し出る……ううむ……結構な数だな……さらにテレビ付き無線機までか……。


「了解いたしました……さっそく明日発注しておきます。納期は来週末です。

 テレビ付きの無線機に関しましては、申し込めば購入は可能と考えます。こちらの方はレンタルというわけにはいかないでしょうから、全額支払いとはなるでしょうがね……一緒に申し込んでおきますよ。


 では……軍艦に連れて行って操作手順を取得する工兵を選択しておいてください。4,5名いれば良いと思いますよ……。」


 今更デジタル無線機は、支給できないとは言わないだろう。こちらは短波ではなく衛星を使ってのデジタル通信だから、情報量も多いしよりクリアな通信が可能なはずだ。本国との情報伝達をスムーズに行うためにも、通信機器の整備は不可欠といえるから、南の大陸の奴らも理解してくれるだろう。


「では……本日も兵士たちと訓練をしてから帰るとします」

 そういって王宮中庭へと急ぐ。


 

 訓練を終え帰宅してからの夕食は、生ハムを使ったサラダと、フライパンで焼いた大きなフランクフルトにパンとスープだった。


 生ハムが食卓に加わってくるようになったのはありがたいが、このところ加工食品ばかりなのは、ダンジョンに行っていないので、新鮮な肉や魚が入ってこないからだ……王宮のグロッサリーで購入する食材だと、こういったメニューになってしまうと、トオルが申し訳なさそうに頭を下げる毎日だ。


 トオルのせいではない……ダンジョンへ行けないのが悪いのだ……。



「サートラの取り調べは一旦終了だ……預けておいて申し訳ないが、今週はここへ来るのは今日までとしてもいいか?そうして来週も途中で2日間休みをもらいたい……どうせサートラに面会したところで、これ以上聞きだすことは何もないからな……。


 もちろん……来週末になって君たちが南の大陸へ戻ってからは、毎日参上してサートラの相手をさせていただく。それまでの間……少しだけ休みをもらいたい……いい加減ここいらでダンジョンへ行きたいんだが……ダメかな……?」


 翌朝、空母へ乗り込み、開口一番お休みを頂く様願いでる。その理由がダンジョン挑戦というのだから、ふざけるなと言われたらどうしようか……。


「そういえば……あなたたちは軍人ではなく冒険者だったのですよね……毎日容疑者の取り調べでは、飽きますよね?いいですよ……取り調べがなければ、サートラのお世話はこちらでできますから……。」


 突然の要請に、サーラは少し戸惑いを見せたが、それでも笑顔を取り戻して、快諾してくれた。考えてみれば彼らだって冒険者なのだ……しかもサートラの件を調査するために何年もかけて、ようやく南の大陸へ到達して……その間ダンジョン攻略など全くしてはいないのだ……。


 対する俺たちは、2ヶ月間程度……サーケヒヤーとの戦争を止めようと飛び回ったり、実際戦争したり、占領したはいいが、その後始末で苦労したりと……色々と大変ではあったが、たったのそれだけの期間ダンジョンを離れているだけなのだ……。


 それでもセーレは優しく微笑んでくれた……申し訳ない……。


「そうか……ありがとう……じゃあ、本題に入ろう……供給いただく隠しカメラなどのアイテムに関してだが……カンヌールの必要なアイテムと要求数がこれで……カンアツがこれ……。


 さらにテレビ付きの無線システムを3ヶ国の王宮用にご用命だ。こちらは購入になるが、カタログ記載の金額はお支払いするから、構わないだろ?」


 重要事項をクリアーしてから本題に入る。艦橋へ入ってすぐわきの会議室でカタログを開きながら、既に発注票の形で、必要アイテムと数量を表にまとめて来たのを手渡し説明する。レンタル分も含めて、支払う合計金額も計算済みだ。


「えーと……いかがいたしましょうか……?はい……はい……テレビ電話機能付きの無線機に関しましては、通信回線ごとに周波数を設定しておき……最大4ヶ所まで同時中継できるシステムだそうです。


 ですのでカンヌール王宮とカンアツ王宮とサーケヒヤー王宮に1セットずつ配備すれば、3ヶ国で同時に会議も可能なようですよ……もちろん……連合国ともつながりますから、今後ともよろしくお願いいたしますと申しております。


 大陸間通信の拠点を確保するという名目で……無償にて提供させていただくようです。」


 少々無茶な要求かと危惧していたのだが、南の大陸側は寛大に対応してくれそうだ。彼らとしても、各王宮にホットラインが敷かれたほうが都合がいいはずだから、当然と言えば当然か……。


「じゃあ……本日は何をするかな……雑談……といっても……サートラは催眠の術を使うから、あまり普通過ぎる会話は避けたほうがいいのかもしれない……最初は普通に会話しているのだが、そのうちに催眠にかかっているのだろうからな……。


 尋問の最中でも、サートラに惹きこまれそうになってしまいそうなときもあるからな……。」

 折角来たのだから、サートラの営倉へ向かうつもりはやまやまなのだが……昨日は1日空いているしな……だが……これと言って予定もないし……。


「それでしたらちょうどいい機会ですから、サートラに運動をさせてあげましょう。


 禁固刑の囚人に対しても、週に2日は半日程度の運動をさせてあげることになっております。勿論、散歩やジョギング程度の軽い運動を、休み休み行うのですがね……気分転換と肥満予防と……何より重要なのは、関節などが固まるのを防ぐ目的です。


 特に彼女の場合、普段は拘束具をつけられていて、手足もまともに動かせないため、もっと頻繁に運動をさせてあげないと、関節が固まって動けなくなる恐れがあるのですが、ワタル殿が言っていた通りの手練れとすると、自由にさせるには相当厳重な警備が必要となります。


 そのための施設を準備していたのですが、ようやく整いましたので、本日辺りから使用しようと考えておりました。ワタル殿たちがいたほうが心強いですから、同席をお願いいたします。」


 まさかトランプをするわけにもいかないしな……ババ抜きや神経衰弱ならいい暇つぶしになるだろうが、こんなこと提案したら俺の素性がばれてしまいかねない……考えあぐねていたら、サートラを運動させると言い出した……確かに、四六時中ずっと拘束されたままなのだからな……背伸びもままならない……。


「ああそうだな……サーラと区別がつかないから拘束を解くわけにはいかないが、サートラ自身は捜査に協力的だし……関節が固まって動かないなんてことにでもなったら大変だ……。

 分った……今日はサートラが運動するところを監視するとしようか……。」


 人権侵害で訴えられる……なんてことにはならないだろうが……やはり動けなくなったらまずいので、定期的な軽い運動は仕方がないだろう……その間は俺たちが見張っていて、逃げられないようにするしかないわけだ……。


「では、参りましょう……。」

 会議室を後にして、甲板経由でセーレ達とはるか下まで続く長い長い階段を下りていく。


『ガチャッ』「本日は、運動させてあげます。」

「あらそうなの……それはありがたいわね……。」


「じゃあ……このまま運びますよ……途中で逃げられても困りますのでね……。」


 セーキと俺の2人がかりで、拘束具をつけたサートラを車いすに乗せ換える。サートラ自体はさほど重くはないのだが、動きの硬い拘束具なので、慣れていないせいかベッドから車いすへ乗せ換えるだけでも大変だ。


『ゴロゴロゴロゴロ』そのまま最下層の通路を車いすを押していき、遥か向こうまで達した先のドアをセーレが開けた。


「うん?ここは……?」


 扉の向こうは、広い体育館のようになっているのだが、その中央には動物用の檻のようなものが置かれている……どこかで見たような……と思っていたら……前の世界で1時期流行った、総合格闘技の檻の中のリングを彷彿とさせるのだ……。こんなもの……わざわざ軍艦の中に作ったのだ……ご苦労なことだ……。


『ガチャンッ……ギィッ』セーレが大きな鍵束の中からカギを選んで解錠し、檻のドアを開け、『ゴロゴロゴロ』車いすを押して、そのまま檻の中へと入る。


「では、私とナーミさんの二人で拘束具を外しますので、皆さんは外に出ていてください。」


『ギィッ……ガシャン』まさか若い女性の服を脱がせるところに居られないので、すぐに檻から出て扉を閉め施錠する。といっても所詮は鉄格子の檻……外に出たところで中は丸見えなのだがな……一応のエチケットだな……。


 セーレとナーミが、サートラの拘束具を外すところをじっと監視している……変な動きをしたらすぐに岩弾をお見舞いするよう、構えている……トオルもセーキも食い入るようにして、サートラの動きを観察しているようだ……。


 なにせ……初代冒険者ともいえるような相手なのだ……千年も生きてきて経験も豊富だし……トーマよりもはるかに腕が上だと感じたのも当たり前だ……今はサートラだからおとなしくしてくれるかもしれないが、サーラになったりでもしたら大変だ……一瞬でナーミやセーレが血祭りにあげられるだろう。


 そうならないように……少しでも変な動きをしたら……いや……変な感じがしたらすぐに攻撃するつもりでいる。


 サートラは下着姿にされた後、セーレに手渡されたスウェット上下に着替えた。俺たちがじっと注視していたからか、変なそぶりすらせずに、おとなしく拘束具が外されるのを待っていた。


「では……トレーニング器具は揃っていますから、ご自分でお願いします。」

『ガチャッ……ギイッ』セーキがカギを開けてやり、ナーミとセーレが檻から出てきた。


 大きな檻の中には、エアロバイクやランニングマシーンにバタフライなど……トレーニング用具が各種並べられていた。これだけあれば、一つずつこなしていくだけでも結構な時間がかかりそうだな……。

 さらには、バスケットボールとゴールまで片隅に作られている……。


「一人でトレーニングしろというわけね……わたしにはあまり近づきたくはないというわけか……まあいいでしょう……久々の自由を満喫しましょう……腹回りのぜい肉もとらなければならないしね……。」


 サートラは檻を取り囲むようにしている俺たちを順に見回した後、念入りに柔軟体操を行ってから、にこやかな笑顔でエアロバイクに乗り、ゆっくりと漕ぎ始めた……。


「後で、シャワー浴びられるのよね……?まさか、汗だくのまま拘束具をつけられるってことはないわよね?」

 バイクを漕ぎながら、サートラが大声で確認してきた。


「大丈夫です……中にシャワーブースも設けられております……もちろん囲いもなく素通しですけど、お湯が出るので快適ですよ……。」


 セーレが、トレーニングマシーンが置かれているのと反対側の檻の角を指さす。確かに、檻の天井からシャワーヘッドが見える……そうして床面は半畳ほどの大きさで10センチほど高く盛られているので、排水溝があることが想像される……だけど……あれだと丸見えだな……。


 この日は、途中昼休憩もはさんで、夕方までサートラを運動させるのに付き合わされた。1週間以上も全く運動させなかったので、その分多めに運動させるのだそうだ……午前中はまともに体が動かせなかったので、ほぼ柔軟体操とエアロバイクを軽く漕ぐくらいだったし……仕方がないか……。


 もちろんサートラがシャワーを浴びているときは、俺は背を向けて見ないよう紳士的に振るまっていた。


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