部隊参戦
『ダダダダダッ』「脈動!」『シュタッ……ダッ』『ズゴッ』
障壁を回りこんで強烈な水流を避けながら駆けだし、脈動を使いジャンプ。一気に巨大象との間を詰め、その大木のような太い脚に銛をおもいきり突き刺す。剣では歯が立ちそうもないので、急遽持ち替えたのだ。
「ぱおーっ!」
『ズザッブンッ』『……ドーンッゴロゴロゴロッ』少しは効いたのか、巨大象が左足を跳ね上げ大きく振ると、突き刺した銛ごと持ち上げられ、そのまま十m位飛ばされ地面を転がされる……。
『ダダダダダッ』『ドゴンッ』今度は巨大象の右脚に、スースーが大きな槍を突き刺した。
「ぱおーんっ!」
『ザバアッ……ブンッ』『ピュー……ドンッゴロゴロゴロッ』巨大象は頭を大きく振り、その長い鼻を使ってスースーの体を跳ね除け、スースーも十m以上飛ばされ地面を転がった。
「大炎玉!」
『ズボワッ』直径6mを越える巨大な炎の玉が、巨大象の鼻先を狙う。『ブジュワーッ』しかし、その長い鼻から強烈な水流を吹き出し、巨大な炎さえも一瞬で鎮火させてしまう。
「超高圧水流!」
『ズバアッー』『シュタッ……ズゴッバゴッ』猛烈な水流の力を使って大ジャンプしたトオルは、巨大象の背中に飛び乗り、上から首のあたりを銛で突き刺し始めた。
「ぱおぉーんっ!」
『ダッゴンドッタンッ』攻撃が効いているのか、巨大象は苦しそうに両前足を何度も跳ね上げながら、トオルを振り落とそうと、もがき始めた。よしっいいぞ……。
『ニュルニュルッ……ブンッ』と思ったのもつかの間、すぐにトオルはその長い鼻に胴体をつかまれてしまい、そのまま体を高く掲げあげられた。まずい……放り投げられたら大怪我だ……。
「脈動!」
『シュタッ……ダッ』『ボゴッ』腹のほうが少しは皮膚が薄いかもしれないと考え、脈動でジャンプして左わき腹に銛を突き刺す。
「ぱぅおーっ!」
『ドッダァーンッ……バッシャンッ』効果てきめん、鼻でつかんでいたトオルを放すと、その鼻を振り回して俺を突き飛ばしにかかった。『ドーンッ……ゴロゴロゴロッ』またもや地面を転がされたが、トオルは落下しただけで軽傷で済んだだろう。
「炎の矢!」
『シュボワボワボワボワッ……グサグサグサグサッ』『シュシュシュシュッ……グザグザグザグザッ』ドームの向こう側では、ナーミたちが巨大キリンと戦っているようだ……巨大象だと皮膚が厚すぎて、矢が刺さらないだろうからな。まずは巨大キリンを倒そうとするのが賢明だ。
『シャキィーンッドガッ』『ガギッ』更にチーチーとセーサが加担しているようだが、長い足に弾かれて斬りつけられないでいる様子だ。どの道足の長さだけで4mくらいありそうだから、立った状態では体に剣が届きそうもないな。
巨大キリンはその長い首を武器として振り回しながら、斬りつけてくるセーサたちを吹き飛ばしている。
この状態では応援は期待できそうもない。4人で巨大象と戦うしかなさそうだ。
『ズッダァーンッ』「ぐぼっ!」
なんと地面に転がっていたトオルの体を、巨大象の巨大な足で踏みつけた……
「ちいっ……岩弾!岩弾!岩弾!」
『ビュビュビュッ』すぐにこぶし大の岩を、高速で巨大象の目のあたりを狙って飛ばすと、『ズゴッ……ドガッ』スースーが槍で右脚の膝の裏側辺りを突き刺しながら体当たりをしてくれた。『ダダダダッ……ズズズズズザザザザッ』すぐにトオルに駆け寄り、その体を引きずるようにして巨大象から引き離す事が出来た。
「大炎玉!大炎玉!」
『ボゴワゴワッ』『ボジュワーッ』すぐにショウが巨大な炎の玉を放ち、それに対抗して巨大象が猛烈な放水をはじめ、周囲が蒸気で白く変わる。
「はあはあはあ……トオル大丈夫か?」
『ダダダダダッ……ダダッ』トオルを背負って駆け出し、先ほどこしらえた障壁まで逃げ込む。やはり避難場所を作っておいてよかった。
「ケーケー……頼む……。」
「任せてくれ!」
ケーケーにトオルを預け、再び戦場へ……
「私たちも戦います……気をそらすことぐらいの役には立てるはずです。」
するとジュート王子以下、サーマと3名の兵士たちが立ち上がった。俺たちの戦いの様子を見ていたのだろう。確かに旗色は相当悪い……2頭の巨大ボス相手に戦力は分断されているし、どちらも強力だ。
「忍者装束と鎖帷子の防御力のおかげで、骨や内臓には異常はなさそうだ。気を失っているだけだからすぐに気が付くだろう。トオルを処置したら、俺も兵士たちと一緒に出て行って、出来るだけサポートするよ。」
トオルの様子を見ていたケーケーが、笑顔で振り返る。さすが国宝級の忍者装束だ。防御力が半端ない。
「わかりました……巨大象は皮膚が厚くなかなか攻撃が通りそうもありません。もし加担できるならば、巨大キリンの方をお願いいたします。といっても足も長いですからね……直接胴体への攻撃は不可能でしょう。脚を攻めていくしかありませんが、強烈なキックを食らわないよう十分な注意をしてください。
サーマさんは、もう大丈夫なのかい?」
とりあえず、戦うなら巨大キリンの方をお願いする。並の戦い方では、巨大象相手では傷一つつけられないだろう。それよりもサーマは大丈夫なのか?一昨日まで、ほぼ寝ていたというのに……。
「ああ……俺はもう大丈夫だ……いつまでも寝てはいられない……戦えるさ……。」
まだ包帯も完全には取れていない状態だというのに、サーマはじっとしているつもりはなさそうだ。
「では……お願いいたします。」
「目標は巨大キリン……少しでも早く倒して、巨大象へ向かいましょう!」
『おおっ!』
ジュート王子と兵士たちが、剣を抜いて巨大キリンの方へ駆けて行った。どの道俺たちが負けてしまえば、彼らだって戦わざるを得なくなるのだ。だったら少しでも戦力がある今のうちに一緒に戦ったほうがいい。後のほうが有利ということは決してないのだからな……。
『ダダダダダッ』「脈動!」『ズゴッ……ズダッ』『グザッ』
一目散に巨大象めがけて駆け出してジャンプ一番……象の背中へ飛び乗りその首筋に銛を突き立てる。
『シュルシュルッ……ブンッ』『ズッゴォーンッ……ゴロゴロゴロッ』『ズバッ』しかしすぐに長い鼻に体をつかまれ、放り投げられ地面を転がる。そうしてせっかく突き立てた銛も、鼻で掃われてしまった。
「かまいたち!かまいたち!」
『ブジュワッジュワッ』巨大象の首の後ろ側から血しぶきが舞い上がる……ショウのかまいたち攻撃が炸裂したようだ。
「ぱぉーんっ!」
『ズゴォーッ』『ビュッーッ』すかさず巨大象は猛烈な勢いの水流を鼻から放出し、ショウの体を吹き飛ばす。
『ダダダッ』「脈動!」『ズバッ……シュターンッ』
急いで駆け出し大ジャンプ……飛ばされたショウの体を何とかドーム壁面衝突前に受けとめた。
『ズゴッドゴッ』スースーが、またもや右脚の膝の裏側部分を狙って槍を突き刺す。表層の皮膚じゃあ、まともに攻撃が通りそうもないからな。この隙に回復水を飲んで、傷をいやしておく……。
「ぱおーっ!」
『ブンブンブンッ』苦しそうに巨大象が頭を振り、その長い鼻でスースーを威嚇する。
『ダダダダッ』「脈動!」『シュタッ……タッ』『ズゴッ』
飛ばされた銛を拾い上げ、巨大象の正面に向かって駆け出し大ジャンプ。頭上高く上がり背中に飛び乗ると、しつこく首筋に銛を突き刺す。
『シュルルルッ……ブンッ』『ズッダァーンッゴロゴロゴロッ』『バシュッ』すぐに長い鼻につかまれ、地面にたたきつけられた……せっかく突き立てた銛も掃われてしまう……。
「超高圧水流!」
『ジュボワッ……シュタッ』『ズゴッ』回復したトオルも参戦してきて巨大象の背に飛び乗ると、またも首筋めがけ銛を突き刺すが『ザバンッ……バシュッ』『ドーンッゴロゴロゴロッ』長い鼻がトオルを払いのけ、地面を何度も転がされる……。
背中に銛を深く突き立てて、そこにショウの雷魔法を炸裂させる予定なのだが、どうにもあの長い鼻が邪魔をして……これは長い戦いになりそうだな……。
「炎の矢!」
『シュボワボワボワボワッ……グサグサグサグサッ』ナーミが放つ炎を纏った矢が、巨大キリンの胸のあたりに突き刺さっていく……が、脂肪が厚いのかそれほど血も噴出せず効いている様子も見られない。矢を上向きに発射するため、威力が弱まっているのだろうな……。
『ブンッブンッブンッ』巨大キリンは、その長い首を振り子のように左右に振り回し、向かってくる剣士たちを突き飛ばし続けるため、一向に攻撃が続いていかないようだ。
「踏み台用意!」
突然ジュート王子が掛け声をかけると、3人の兵士たちが3角形の頂点に立ち腕を交差させ組み合った。
『ダダダダダッ』そこになんと一人の兵士を担いだ兵が駆けて行く。上の兵士は土台の兵士の両肩に足を乗せて、そのまま直立している。土台の兵士が上の兵士の両足首を両手で支えている以外は、掴まるところすらもない状態の、まさにアクロバット……というかチアリーディング……。
なんと土台はサーマで上に乗っているのはジュート王子ではないか……『ダンッ……バッ』サーマが踏み台の3人の力を借りながら高く舞い上がると、2段ロケットさながらジュート王子がサーマを踏み台に、さらに高く舞い上がり……『ザッバァーンッ』その長い首の、下あご付近を斬りつけた。
『ブシューッ』斬り口から滝のように血しぶきが、下に向かって流れ落ちる。
『ボゴワァッ』苦しそうにもがきながらも、巨大キリンは巨大な炎の玉をジュート王子に向かって吐き出す。まずい……着地して体勢が崩れているし、逃げ場がない!
『タタタッ』「障壁!」『プシュンッ』
すぐにケーケーがジュート王子のもとに駆け寄り、障壁を張り炎の玉を焼失させた。
「おりゃあっ!」
『ズダダダッ……ダンッ』『ジュバッ』勢いづいたのか、今度はサーマが一人だけで、踏み台の3人の手を借りてジャンプし、巨大キリンの胸元を斬りつけた。
「だりゃあっ!」
『ダダダダダッ……ダッ』『シュパンッ』更にセーサもジャンプし、胸元を斬りつけていく。ううむ……すごいな……ジュート王子たち、ちゃんと戦えている……。
「ショウっ、竜巻を起こせないか?つむじ風の強力な奴だ。大きな家でも巻き上げてしまうくらいの威力の奴……あいつにぶつけて、吹き飛ばしてやってくれ!」
「わかった……やってみる……でも、うまくいくかな……やったことはないから……。」
ショウが自信なさそうに、頭をかきながら巨大象と対峙する。雷一閃で倒せるとよかったのだが、仕方がない作戦変更だ。ショウの魔法力にかける。
「竜巻!」
『ビュゴワッゴォゥワー』ショウが唱えると、あたりの空気が一瞬で希薄となり、ものすごい風の渦が巨大象に向かって襲い掛かる。周りのこっちまで引き込まれて行きそうなくらい、猛烈な風量だ。
『ブワッ……ドォーォーンッ』『パラパラパラパラ』そうして出来た竜巻の力で、巨体が数mほど持ち上がると風が収まり、失速して右側に傾いたまま落ちた。その地響きは震度6はあっただろう……ドーム天井から細かな埃や石が落ちてきたほどだ。
「くぉーんっ!」
巨大象は体の右側を下にして横たわり、苦しそうにうめき声をあげる。恐らく右前脚と後ろ脚はダメージを負っているだろう。
その巨体さゆえに強力で堅固で一切の攻撃を跳ね飛ばすことができていたが、逆にその巨体が仇になる。なにせ、ちょっとでも跳ねると脚で巨体からくる重さを支えきることが難しくなる。巨体は武器にもなるが弱点にもなりうるのだ。
「今だ!一気に攻撃を仕掛けるぞ!」
『ダダダダダッ』『ザグッボゴッドガッ』ダッシュで駆け寄り、右前脚を折っている巨大象の左側に回り込み、その大きな腹に銛を突き刺しまくる。『タタタタタッ』『ドガッボンッドゴッ』トオルもかけてきて銛を突き立てはじめ、『ズッゴォーンドッガァーンッ』スースーは、大きな槍で口のあたりを突き刺している様子だ。
「ぱおーんっ!」
それでも巨大象は大きく嘶いた後、再び立ち上がった。